このセクションでは、いくつかの概念や手順の質問について取り上げます。この情報は、ダイナミック シミュレーションをツールの 1 つとして利用することに関心のある設計者を支援するためのものです。
ダイナミック シミュレーションは設計プロセス全体にわたり役に立ちます。これは以下のように設計の向上に寄与します。
シミュレーションと解析により、機構のタイプに最適な形状を決定する。
役立つ事前知識を次に示します:
拘束がジョイントの作成でどのような役割を担っているか調べる場合は、[ダイナミック シミュレーション]環境に入り、自動的に作成されたジョイントのリストで確認してください。次に、[ダイナミック シミュレーション設定]ダイアログ ボックスで、自動拘束変換オプションをオフにし(これにより、自動作成されたジョイントを除去)、手動でジョイントを作成します。手動で作成したジョイントを削除し、自動拘束変換オプションをオンに戻すことができます。
拘束は、アセンブリ内でコンポーネント同士を相対的に配置するために使用されます。Inventor では基本的な拘束が提供されています。一部の拘束には、次の修飾子が付いています:
アセンブリ環境では、パーツをドラッグしたり拘束を駆動してモーションを確認することができます。ジオメトリのみが考慮され、速度、加速度、および荷重のような情報は使用できません。
[ダイナミック シミュレーション]環境では、結果を得るためにジョイントを使用します。ジョイント内に摩擦、ダンピング、剛性のような動的パラメータを定義することが可能です。標準ジョイント(回転、角柱状、球状など)と高度なジョイント(接触、回転、スライドなど)があります。
標準ジョイントは次の 3 つの方法のいずれかを使用して作成されます。
高度なジョイントは、選択や入力操作を行い手動で作成します。
シミュレーション ブラウザでは、特定ジョイントの作成に関与している拘束を確認できるようにするため、アセンブリ拘束が子ノードとして一覧表示されます。拘束の右クリック メニューに表示されるほとんどのコマンドを使用できます。
拘束を編集すると何が起こりますか? 関与している拘束を修正すると、ジョイントや自由度が変わる可能性があります。
たとえば回転ジョイントは、軸はめあいと面またはフラッシュ メイト(位置決め用)という 2 つの拘束を備えています。いずれかの拘束を省略すると何が起こるか注意してください。
編集対象のジョイント | アクション | 編集後のジョイント |
---|---|---|
面メイトまたはフラッシュ メイトが省略される。 | ||
軸はめあいが省略される。 |
ブラウザでは、省略された拘束はコンポーネント ノードで表示され、ジョイント ノードからは削除されます。
[拘束を標準ジョイントに自動変換]の設定をオフにすると、すべてのジョイントが削除されるため、適切なジョイントを手動で作成できます。手動でジョイントを作成するには、[ジョイントを挿入]または[アセンブリ拘束を変換]コマンドを使用します。
設定をオンに戻すと、[OK]をクリックしたときに標準ジョイントが計算されて作成されます。
拘束操作によって作成されたジョイントの一覧表は、ヘルプ コンテンツにあります。変換テーブルについては「アセンブリ拘束を変換」を参照してください。
サブアセンブリを使用できます。既定では、サブアセンブリは剛体として扱われます。サブアセンブリ コンポーネント間にジョイントを作成するには、アセンブリを[フレキシブル]に設定する必要があります。
アセンブリを右クリックして、[フレキシブル]をクリックします。
コンポーネントは、ジョイントの自由度や、強制するモーションに応じて動きます。モーションを強制するには、次の手順を実行します。
Inventor 2008 以降、ダイナミック シミュレーションを開始すると、すべてのコンポーネントが固定されるようになりました。これは、ジョイントが定義されていない場合です。
このように考えることができます。アセンブリ環境では、最初のコンポーネントが既定で固定されます。それ以降、すべてのコンポーネントは、拘束を加えない限り、拘束されません。
[ダイナミック シミュレーション]では、すべてのコンポーネントは、ジョイントが定義されるまで固定されています。ジョイントは自由度を定義します。固定されていないコンポーネントがあると、シミュレーションの計算に膨大な時間がかかり、信頼性の低い結果を生じる可能性があるからです。
アセンブリ内で固定されているコンポーネントは、シミュレーション環境でも固定されます。Inventor の既定値を使用してアセンブリを作成する場合、アセンブリ内に最初に配置されるのは固定コンポーネントです。
[ダイナミック シミュレーション]環境で、自動拘束変換オプションがオフのときは、すべてのコンポーネントは固定フォルダ内に配置されます。ジョイントを追加し、自由度を定義すると、コンポーネントは可動グループに移動します。
[拘束を標準ジョイントに自動変換]オプションがオン(既定)の場合、コンポーネントはそれぞれの可動グループに分散されます。コンポーネントは、自動拘束変換エンジンによって割り当てられたジョイントに基づいて、固定フォルダに配置されたままにすることができます。
未知の荷重のシミュレーションはどの位置でもスタティックな計算だからです。ジョイントには、速度が存在しません。ジョイントの摩擦モデルは、自由度での速度に依存する規則的な法則(速度が null のとき摩擦力は 0.0)に従います。未知の荷重のシミュレーションでは摩擦は発生しません同様の理由から、ジョイントのダンピングは無視されます(速度に依存します)。時間に基づく法則で定義された外部荷重は、入力グラフでは時間 = 0.0 の場合、常に同じ値となります。
[コンポーネントを作成]コマンドによって作成されたアセンブリやコンポーネントは解析することができます。そのようなモデルのダイナミック シミュレーションを実行するときは、以下の事項を考慮してください。
機構のパーツはすべてスケッチから作成することができます。この場合、ダイナミック シミュレーションでは可動グループの質量は 1 kg に設定され、慣性マトリクスの対角項は 0.01 kg.m² に設定されます。そのため、シミュレーションを実行して運動学的な計算結果を得ることができます。運動学的な計算結果の基準となるのは、自動質量と慣性です。
1C 回転ジョイントでは、2 つのボディ間で、拘束は 1 つだけ適用されます。つまり、スライドのない回転が適用されます。2C 回転ジョイントでは、1C 回転ジョイントと同じ回転拘束と、1 つの正接拘束が適用されます。1C 回転ジョイントは、ジオメトリが原因で 2 つのボディが既に接している場合に使用します。それらのボディは、機構の構築のため、シミュレーションの間は接したままになります。機構構築によって 2 つのボディが切り離される可能性があり、正接を意図的に維持したい場合は、2C 回転ジョイントを使用します。
動的計算処理のため、DS エンジンでは自動的にタイム ステップを変えるアルゴリズムを使用しているためです。機構の質量(M)および剛性(K)を調節すれば、必要なタイム ステップ数を少なく抑えることが可能です。高精度な解像度を保証するには、タイム ステップを に等しくします。剛性(K)が高いときや質量(M)が低いときは、タイム ステップが小刻みになるため、計算時間が長くなります。質量と剛性の値を確認してください。よくある間違いは単位を混同することです。たとえば、かなり高い剛性をもつ 3D 接触を使う場合は通常シミュレーション時間は長くなります。
過剰拘束された機構は動くことはできますが、ダイナミック シミュレーションで使われる仮定を用いてジョイント内で計算を行うにはあまりにも多くの荷重(力とモーメント)が存在します。これはジョイントとリジッド パーツにギャップがないために生じます。位置、速度、および加速の結果が正しくても、ジョイントの荷重の解は一意にはなりません。たとえば、回転ジョイントしか含まない 4 バーの座標系は、過剰拘束になります。回転軸がモデル内で完全に並行であるため、この座標系は動きます。ただし、ジョイントのすべての荷重に対して一意の解を与えることはできません。2 つの回転ジョイントを円柱状および球状に変更すると、機構は過剰拘束されません。ジョイントの荷重に関するソリューションは一意になります。
拘束削減エンジン(CRE)が Inventor 2008 に導入されて以降、その後のリリースでも CRE が組み込まれています。CRE はアセンブリ拘束に基づいて標準ジョイントを自動的に作成します。これによりクラッタが低減し、作成したジョイントがブラウザの標準ジョイント フォルダに配置されます。
標準ジョイントを自動的に作成する必要がない場合は、[ダイナミック シミュレーション設定]をアクティブにして、[拘束を標準ジョイントに自動変換]の選択を解除します。これによってすべてのジョイントは除去されます。その後、必要なジョイントを手動で追加できます。
現在、ダイナミック シミュレーションを駆動するために API を使用することはできません。そのようなユーザ リクエストがあることは認識しており、今後のリリースで検討する予定です。
モーションがないときでさえも、ダイナミック シミュレーションはジョイントでの荷重とモーメントを計算することができます。このような場合、ダイナミックな効果は存在せず、ダイナミック シミュレーションはスタティックな結果を提供します。
たとえば、振り子を作成して、回転ジョイントでの自由度をブロックして、外部荷重を自由端に付加します。[ダイナミック シミュレーション]では、外部荷重に釣り合うようジョイントに荷重とモーメントを与えます。
振り子の 2 番目の端に[点 - 面]ジョイントを作成してロックした後で、外部荷重を適用することもできます。[ダイナミック シミュレーション]は、2 つのジョイントで荷重とモーメントを発生させることもできます。
役立つ情報
FEA へのエクスポート用として識別された荷重が随時更新されるのは、次のいずれかの操作を実行した場合です。
タイム ステップとイメージは、シミュレーションから別々に出力されるものです。
タイム ステップは、ソフトウェアがシミュレーションを正常に駆動するのに使用するステップの数です。ソフトウェアによって複雑なシミュレーションの数が最適化されるため、出力グラフでは適切なデータを使用できます。タイム ステップ数は常に指定したイメージ数以上です。出力グラフに進み、出力グラフのグラフ ウィンドウ内でクリックすることで、指定した増分または任意の増分タイム ステップを調べることができます。
「イメージ」とはシミュレーションを再生するときに表示されるイメージ数を意味します。任意の数を指定することができます。既定値は 100 イメージ/秒です。
既定値の設定を使用して 1 秒間のシミュレーションを実行すると(最終時間: 1 秒、イメージ: 100)、再生用に 100 イメージが生成されます。0.01 秒ごとに 1 つのイメージが生成されます。タイム ステップはシミュレーションに対しては 100 イメージ/秒です。複雑さに応じて、タイム ステップ数は増えていきます。
正接点が記述されたテキスト ファイルを使用する場合は、次のようにファイルを構成します。
// コメント |
1 行または複数行のコメントをファイルに挿入できます。コメント行はそれぞれ「//」で開始する必要があります。コメント行は任意です。提供される値は、スプラインの目的をメモできることです。 |
[接線] T1 T2 | セクタの始点(T1)と終点(T2)の正接値を指定します。これらの値は、ユーザ インタフェースでは「最初の」勾配および「最後の」勾配と表示されています。値を指定しなければ、正接値は 0.0 (水平正接)とみなされます。コメント行と同様に、この行も省略可能です。ただし、上で述べたように、正接値を指定しない場合は想定値が適用されます。 |
X 1 Y 1 | 点座標のリスト。点は必要な数だけリストすることができます。1 行につき 1 つの点を指定します。 |
例 |
// // シミュレーションの入力スプライン点 // 値: ジョイント トルク(N mm) // 参照: 時間 s [接線] -3.40775 -5.27803 +0.000 +0.000 +4.313 +1.510 +7.954 -9.756 +1.000 +0.000 |
旧形式の平歯車は最近の改善点を反映していないため、歯車セットを更新して、それらの改善点を反映させる必要があります。以下に、旧形式の平歯車を操作する際にチェックおよび実行すべき内容の一覧を示します。