圧力結果は充填解析で生成されます。この結果では、結果が書き込まれた時点における、金型内部でのフローパス上の圧力分布が示されます。
「圧力結果の定義」では、この結果の色分布について説明しています。充填開始時には、金型内のどの部分でも圧力はゼロ(絶対圧力で 1 気圧)です。特定の位置の圧力は、メルト フロント(溶融先端)がその位置に到達した後から上昇し始めます。流動先端の通過後、指定の位置と流動先端間の流動長が長くなるため、圧力の上昇は続きます。
2 つの位置間の圧力差が、充填中に溶融樹脂を押し流す力となります。圧力勾配は、2 つの位置間の圧力差をその距離で割った値です。樹脂は必ず、負の圧力勾配の方向に、高圧部から低圧部へ移動します(これは、水が高い所から低い所へ流れることに似ています)。そのため、充填段階では、最大圧力は必ず射出位置で発生し、最小圧力はメルト フロントで発生します。
圧力 (または圧力勾配) の大きさは、金型内部での樹脂抵抗によって異なります。これは、粘度の高い樹脂では、キャビティへ充填するために、より高い圧力が必要となるためです。薄肉部分や小さいランナーなど、金型内部での流動が制限される領域や、流動長が長い領域でも、より大きい圧力勾配になり、高い充填圧力が必要です。
一般的に、射出成形機の加熱筒 (バレル) のノズル部で発生し得る最大射出圧力は、140 MPa (20,000 psi) 程度です。推奨最大圧力は、金型(成形品とフィード システム) では 100 MPa(14,500 psi)で、成形品では 70 MPa(10,000 psi)です。多くの成形機ではこの値より高い圧力能力があります。圧力能力が不明な場合は、140 MPa であると仮定します。
成形機の圧力能力が明らかな場合は、設計ガイドラインとして、金型全体に圧力の約 75% 以下を使用し、成形品のみに 50% を使用します。
シミュレーションにおけるデフォルトの成形機の圧力限界値は 180 MPa です。圧力限界値は次の 2 通りの方法で使用できます。成形品を作成する射出成形の圧力限界値は 140 MPa であると仮定します。デフォルトの圧力限界値、180 MPa で解析を実行して、金型の圧力要件を検討します。設計ガイドラインとしては、約 100 MPa を超えないようにします。解析圧力が 120 MP である場合は、圧力を低減します。または、成形機の限界値を 100 MPa に設定して、解析を実行することができます。この場合、圧力を制限したプロセスをシミュレーションすることになります。充填過程は圧力ではなく、速度で制御する必要があります。このため、プロセスを固定する必要があります。