さまざまな原因により、大変形解析では収束の問題が発生することがあります。
この問題が発生すると、大変形解析のジョブ進捗テーブルに次のメッセージが表示されます。
* 収束エラー *
または
* 発散の発生 *
これらのメッセージが表示された場合は、このテーブルの左の列を確認します。この列には、解析の際に使用された手法(KSTRA)が表示されます。この手法については、解法に関するセクションで説明します。
このテーブルに表示された KSTRA の最後の値が 0~4 の範囲にあれば、解析に問題はありません。この値が 5 である場合、構造解析プログラムまたは反り解析プログラムで平衡反復が得られなかったことを示しているので、解析結果には信頼性がありません。
荷重-変形グラフをプロットすることで、解析の精度を評価できます(解析結果を読み込むときに、荷重-変形の履歴を要求します)。手法 5 では、数ステップでこのグラフが不自然になることが普通なので、解析が不正確であることがわかります。手法 5が使用されるのは、一部の非線形問題で、手法 5 で数ステップを実行した後、プログラムが回復して、下位の手法に戻ることができるからです。
「荷重制御」荷重増加手法を使用する場合は、解析では極限点を超過することはできません。""極限点に近づくにつれ、解析で実行するステップが小さくなり、解析は上位の非線形手法をとろうとします。極限点に到達した後、解析は最も上位の手法(KSTRA=5)に留まります。
多くの場合、「最大ステップ サイズを制御するファクター」を大きくして解析の実行速度を速くすることはできますが、荷重経路に実際に極限点が存在する場合は、ステップを 5% 程度に制限することをお勧めします。制限しないと、解析の動作点が極限点を超えることがあります。""関連するノードの履歴を追跡することで、容易に極限点の位置を捉えることができます。極限点では、荷重 - 変形グラフの傾きがゼロに近づきます。
このような状況(手法 5 に長時間留まっている状態)が発生しても、極限点に達していることを示しているとは限りません。解析そのものに問題が発生したことを示している可能性もあります。この確認のためには、以下の手順に従います。
1. 微小変形解析を実行していない場合は、実行します。その応答が妥当であることを確認します。モデリング エラー(反り解析の場合は不自然な収縮)によって、非線形解析の問題が発生することがあります。
2. 拘束を確認します。反り解析では、収縮歪と競合するような過剰な拘束をモデルに設定すると、線形の解析結果が妥当でも、大変形解析で問題が発生しやすくなります。
3. 関連するノードのいくつかで、荷重-変形グラフを確認します。実際の極限点が存在する領域、または単に高い非線形性のある領域では、このグラフの傾きが次第に小さくなり、最後に水平になります。または、収束の問題が発生する直前の数ステップで見られる変形形状を確認します(解析結果をいくつか読み込む必要があります)。高い非線形性を持つ領域(樹脂成形品に座屈が発生する領域)が荷重経路上にあると、通常、荷重のわずかな変化でも形状が大きく変化する現象として現れます。
4. 荷重ステップが大きすぎると、荷重-変形グラフの傾きが少しずつ減少していても、(特に、極限点を通過している場合に)それを把握しにくいことがあります 。詳しく調べるには、以下のように解析を再度実行します。
解析ログを確認し、ジョブ進捗テーブルを調べます。手法(KSTRA)が 5 になる前のステップでの荷重レベル(RFAC)に注目します。この荷重レベルを RFAC* とします。
RFAC* の領域でとるステップが小さくなるようにして、構造解析または反り解析を再度実行します。たとえば、RFAC*=0.55 で問題が発生している場合は、荷重係数の増分を指定するステップの数列を次のように入力します。
0.1 , 0.1 , 0.1 , 0.1 , 0.1 .
"[ステップあたり最大荷重係数増加]"を約 0.005 に設定します。RFAC が 0.5 になった後は、この荷重ステップ設定が適用され、すべてのステップは最大 0.005 に制限されます。次に上記の手順 3 を繰り返すと、RFAC* 周辺の応答を詳しく確認できます。
この調査によって、荷重経路上にある非線形性の高い領域のために解析に問題が発生していることが判明した場合は、対象の樹脂成形品に高い確率で座屈の問題が発生しています。事実、座屈解析で得られるどのような解析結果よりも、ここで説明した結果のほうが問題の存在を確実に示しています。ただし、設計上の目的では、解析実行時間が相当に短いことから、座屈解析を使用することが普通です。