前提: 温度が 300 K に保たれた熱伝達率 h = 500 W/m
2
K の油槽に、初期温度 600 K のステレンス鋼(AISI 304)の円筒を沈めて冷却します。円筒の長さは 60 mm、直径は 80 mm とします。また、ステレンス鋼(AISI 304)の材料特性は、『Introduction to Heat Transfer』に従って、密度が 7900 kg/m
3
、熱伝達率が 17.4 W/m K、比熱が 526 J/kg K であるとします。
問題: 冷却過程の開始から 3 分が経過した時点における円筒中心の温度、円筒上面中心の温度、および円筒側面中央部の温度をそれぞれ特定してください。

図 1: 対象のジオメトリ
この例題では、解析の設定方法および実行方法のみ取り上げます。モデルの作成方法については、「熱伝達を伴う円筒」を参照してください。モデルをまだ作成していない場合は、Autodesk Simulation のインストール ディレクトリの Models サブフォルダにある cylconv_input.ach ファイルを開いてください。
方法 1: 2D 軸対称モデル
- ツリー表示内の[パーツ 1]配下にある[要素タイプ]を右クリックし、[2D]コマンドを選択します。
- [パーツ 1]配下にある[要素定義]を右クリックし、[要素定義を編集]コマンドを選択します。[ジオメトリ タイプ]ドロップダウン メニューで[軸対称]オプションを選択し、[OK]をクリックします。
- [パーツ 1]配下にある[材料]を右クリックし、[材料を編集]コマンドを選択します。[ユーザ定義]をハイライト表示した状態で、[プロパティを編集]をクリックします。[質量密度]フィールドに 7900、[熱伝導率]フィールドに 17.4、[比熱]フィールドに 526 と入力します。[OK]を 2 回クリックします。
- [パーツ 1]配下にある[サーフェス]の横の[+]をクリックし、このパーツ上に 2 つのサーフェスを表示します。[表面 2]を右クリックし、[追加]
[サーフェス熱伝達]コマンドを選択します。[温度に依存しない熱伝達係数]フィールドに 500、[環境温度]フィールドに 300 と入力します。荷重が時間とともに変化しないようにするため、荷重曲線は 0 に設定したままにします。(荷重は荷重曲線に従わないため、[荷重曲線の大きさ]の値はそれほど重要ではありません。)[開く]をクリックします。
- ツリー表示の[解析タイプ]を右クリックし、[解析パラメータを編集]コマンドを選択します。解析は、問題文の温度 1 つにつき 180 秒間(3 分間)実行する必要があります。計算に使用される各時間ステップが 1 秒の場合、180 ステップを計算する必要があります。出力は 10 ステップごとに行われます。[初期の時間]に入力されている値 0 はそのまま使用します。[イベント]スプレッドシートの先頭行で、[時間]に 180、[ステップ]に 180、[出力間隔]に 10 と入力します。
- [オプション]タブをクリックし、[既定の節点温度]フィールドに 600 と入力します。この値を変更しなければ、モデルは時刻 0 に 0 度で開始されます。
- [高度]タブをクリックします。モデル(直交異方性伝導または輻射)には非線形効果がありません。そのため、[マトリックス改正間の時間ステップ数]フィールドには 0 を入力します。
- [OK]をクリックして、[解析パラメーター]ダイアログ ボックスを閉じます。
- [解析]
[解析]
[シミュレーションを実行]を選択して、解析を実行します。解析中は、計算が実行されると同時にその結果が結果環境に表示されます。
- 180 秒経過した時点で結果を確認する場合は、[結果コンター]
[荷重ケース オプション]
[最後の結果]を使用します。
- 目的の節点における実際の値を確認する場合は、[結果の照会]
[照会]
[現在の結果]を使用します。左下の節点(円筒の中心)をクリックすると、値(403.4)を確認できます。左上の節点(円筒上面の中心)をクリックすると、値(371.0)を確認できます。右下の節点(円筒側面の中央部)をクリックすると、値(362.7)を確認できます。
- 任意の節点で、温度結果のグラフを作成できます。その場合は目的の節点を選択し、右クリックして[グラフの値]を選択します。
方法 2: 3D ブリック モデル
3D モデルは、2D モデルの設計シナリオのコピーを基に、異なる設計シナリオで作成します。対称性に着目して、パーツ全体(360 度)のうち 90 度分のセグメントのみをモデルとして作成します。
- [FEA エディタ]タブをクリックし、FEA エディタ環境に戻ります。
- [設計シナリオ 1]を右クリックし、[コピー]を選択します。生成する 3D メッシュの基となる 2D メッシュの複製が作成されます。
- [選択]
[選択]
[ライン]および[選択]
[選択]
[すべて]を使用して、モデル内にあるラインをすべて選択します。
- 2D メッシュを回転して、ブリック要素を作成します。[作成]
[パターン]
[回転]または[コピー]を選択します。[コピー]チェック ボックスをオンにし、その隣にあるフィールドに 10 と入力します。[連接]チェック ボックスをオンにします。
- [総角度]フィールドに 90 と入力し、[DZ]を選択します。回転中心点は(0,0,0)にします。[OK]をクリックしてメッシュを回転し、1/4 の円筒を作成します。作成した結果は、アイソメ ビュー([表示]
[ナビゲーション]
[方向]
[アイソメ ビュー])で確認できます。
- ツリー表示の[パーツ 1]配下にある[要素タイプ]を右クリックします。[ブリック]コマンドを選択します。その他の入力内容はすべて 2D モデルからコピーされたもので、変更の必要はありません。
- [解析]
[解析]
[シミュレーションを実行]を選択して、解析を実行します。解析中は、計算が実行されると同時にその結果が結果環境に表示されます。
- 180 秒経過した時点で結果を確認する場合は、[結果コンター]
[荷重ケース オプション]
[最後の結果]コマンドを使用します。
- 目的の節点における実際の値を確認する場合は、[結果の照会]
[照会]
[現在の結果]を選択します。下部の節点(円筒の中心)をクリックすると、値(403.0)を確認できます。上部の節点(円筒上面の中心)をクリックすると、値(370.7)を確認できます。右下の節点(円筒側面の中央部)をクリックすると、値(362.6)を確認できます。
注: 円筒上面の中心にある節点をアイソメ ビューから選択するのは若干の困難を伴います。この節点を選択するためには、ビューを切り替えることが必要になる場合があります。
結果の比較
次の表は、『Introduction to Heat Transfer』での解析、およびソフトウェアで実行した 2 つの解析で得られた結果を示したものです。
モデルのアーカイブ cylconv.ach は、Autodesk Simulation インストール ディレクトリの Models サブディレクトリに保存されます。
3 分経過後の温度(K)
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円筒の中心
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円筒上面の中心
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円筒側面の中央部
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[参照]
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405 |
372 |
366 |
2D 解析
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403.4 |
371.0 |
362.7 |
3D 解析
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403.0 |
370.0 |
362.6 |
[参照]
『Introduction to Heat Transfer』(Incropera, Frank and DeWitt, David, John Wiley & Sons, New York, 1990, pp266 - 270.