平衡法

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このページの情報は、特に記載がない限り、次の解析タイプに適用されます。

メカニカル イベント シミュレーション(MES)

非線形材料による静解析

非線形有限要素解析では、反復解法の多くは既知のニュートン ラプソン反復アルゴリズムに何らかの形で基づきます。ニュートン ラプソン法の詳細に関しては、Hinton、Oden、Stricklin などの多くの参照資料で取り上げられています。この他、反復解法の詳細については、『Linear and Nonlinear Finite Element Analysis in Engineering Practice』(C. Spyrakos、John Raftoyiannis 著)のセクション 11.5(449~452 ぺージ)もご覧ください。

さまざまな非線形反復解法を利用できます(Riks 解析の実行では反復解法が定められます)。すべての解法はニュートン ラプソン反復法に基づきます。[非線形反復解析法]ドロップダウン ボックスに表示される次の解法の中から選択します。

これらの解法の詳細は次のとおりです。

結合ニュートン法(完全/修正結合ニュートン ラプソン法)

完全/修正結合ニュートン ラプソン法は、完全ニュートン ラプソン法と修正ニュートン ラプソン法の中間に相当する解法です。構造についての十分な予備知識があるか、または非線形構造解析の挙動についての高度な知識があるユーザ向けの解法です。問題に最適な特定の反復法を指定できます。完全ニュートン ラプソン法と修正ニュートン ラプソン法は、この解法の特別なケースです。既定の完全/修正結合ニュートン ラプソン法では、各有効剛性マトリックスの再構築について、右辺の有効荷重ベクトルの更新が 2 回行われます。

この解法によって、動作に関与する問題について収束解を得ることができます。高周波数などの一般的な収束問題は解析中のノイズにすぎないため、この解法によって沈静化します。

完全ニュートン法 1 (完全ニュートン ラプソン法)

完全ニュートン ラプソン反復解法(または接線剛性マトリックス法)は、すべての解法の中でも基本的な形式です。この解法では、時間/荷重ステップ全体にわたり、有効剛性マトリックスと、システムの右辺の有効荷重ベクトルが、各平衡反復について再構築または更新されます。この解法の利点は、非線形性が高い問題の多くに対して有効であるということと、反復数に対して二次方程式的に収束するということです。一般的には、平衡反復あたりの負荷の多くは有効接線剛性マトリックスの構築と因数分解で発生します。そのため完全ニュートン ラプソン法では、特に大規模な問題の場合に、より長い解析時間を要する場合があります。

完全ニュートン法 2

完全ニュートン法 2 は、完全ニュートン 1 と BFGS 法を組み合わせたものです。

BFGS 法は準ニュートン法の 1 種で、下の出典の一覧を参照してください。

[完全ニュートン法 2]オプションを選択した場合、通常、BFGS 法が使用されます。次の 2 つの場合は、代わりに完全ニュートン法 1 が使用される例外です。

  • Updated Lagrangian 法の定式化が 2D、ブリック、および 4 面体要素に対して指定された弾塑性材料モデル
  • 互換性のないモードがブリック要素に対して適用された弾塑性材料モデル

出典:

  • Matthies, H. and Strang, G. – The Solution of Nonlinear Finite Element Equations

    International Journal for Numerical Methods in Engineering

    Vol. 14, 1613-1626 (1979)

  • Lee, S. – Rudimentary Considerations for Effective Quasi-Newton Updates in Nonlinear Finite Element Analysis

    Computers & Structures

    Vol. 33, n2, 463-476 (1989)

  • Lee, S. – Rudimentary Considerations for Effective Line Search Method in Nonlinear Finite Element Analysis

    Computers & Structures

    Vol. 32, n6, 1287-1301 (1989)

修正ニュートン法 (修正ニュートン ラプソン法)

修正ニュートン ラプソン反復解法は、時間/荷重ステップ全体にわたり各平衡反復について有効剛性マトリックスを再構築する接線剛性マトリックス法(完全ニュートン ラプソン法)と、1 度だけ有効剛性マトリックスの構築と因数分解を行う初期剛性マトリックス法(初期応力法)の間に位置する解析です。修正ニュートン ラプソン法では、各時間ステップの中で、最初の平衡反復についてのみ有効剛性マトリックスの再構築が実行されます。残りの反復は、右辺の有効荷重ケースの更新のみに関与します。

修正ニュートン ラプソン法が関与する有効剛性マトリックスの再構築および因数分解は少数なため、多くの場合、この解法における反復あたりのコンピュータ上の負荷は、完全ニュートン ラプソン法と比べると非常に小さくなります。非線形性が中程度または弱い問題(材料特性または荷重条件の変化が緩やかな場合など)に関しては、多くの場合、修正ニュートン ラプソン法が有効です。ただし、非線形性が高い問題(材料特性または荷重条件の変化が急激な場合など)に関しては、この解法は収束にかなりの時間を要するか、場合によっては発散することもあります。

ラインサーチ

すべての解法スキームには、ラインサーチ(線探索)を含めるオプションがあります。[完全ニュートン法 2]を除いて、ラインサーチは利用可能な解法から除外することができます。

通常、ラインサーチは反復解法を安定化させるのに役立ちます。特に、材料特性やジオメトリ設定の急激な変化によって構造剛性に大きな変化が生じる問題に対して有効です。このような場合では、ラインサーチによって反復プロセスを高速化し、ラインサーチを行わないと何も得られないような状況で収束が得られることもあります。ラインサーチの基本的な概念は次のようになります。各平衡反復中にニュートン ラプソン法によって新たな解の探索方向が生成され、その一方でラインサーチは、非平衡力エラーを最小化するその方向の解を求めるために使用されます。ラインサーチの収束許容誤差は、[線探査の収束の許容誤差]フィールドで指定できます。この値は 0.4~0.6 の間で指定する必要があります。

反復解法の選択

線形問題とは異なり、非線形解析ではすべての問題に適した解法はありません。反復解法は問題の非線形性の程度に基づいて、個々の問題に対してより適切なものを選択します。通常、材料とジオメトリの非線形レスポンスが強い問題では、マトリックスの再構築をより頻繁に行う必要があります。通常、材料特性やジオメトリ設定の変化が緩やかな問題では、修正ニュートン ラプソン法が適しています。完全ニュートン ラプソン法は反復あたりの数値的な負荷が大きくなりますが、修正ニュートン ラプソン法よりも非線形性が高い問題に適しています。線形探索は、細かい時間/荷重レベルでの反復プロセスの収束に役立ちますが、反復あたりのコンピュータ上の負荷は大きくなります。構造の挙動に関しての予備知識が得られない非線形解析では、次の方法が有効です。

  1. 非線形材料に限った解析タイプと、一定材料特性などの線形材料モデルによって解析を開始します。解析に利用する材料モデルが非線形の場合は、材料モデルと曲線から得られる初期値を一定材料特性として使用します。線形解析結果は、システムのジオメトリ、荷重、境界条件が適切に設定または適用されているかを確認する際に役立ちます。また、変位が小さい場合はすべての構造が直線的に動作するため、線形構造の初期レスポンスまたは動作に関する有用な情報源ともなります。線形解析からの変位の結果も、進行中の非線形解析で適切な時間/荷重ステップ増分を選択する基準となります。
  2. 元の材料モデルが非線形の場合は、非線形材料に限った解析タイプを用いて解析を実行します。この解析からの結果は、構造のレスポンスの動作をより深く理解し、いくつかの細かい時間/荷重ステップを確認する上で役立ちます。さらに、この解析結果と変位が大きい解析結果を比較することで、オブジェクトが大きな変位状態に入っているかどうかを確認できます。小さな変位状態の構造に関しては、3 つの解析タイプすべての結果がほぼ同一のものとなります。3 つの解析タイプの結果に大きな違いが出始める時間/荷重レベルが、構造が大きな変位状態に入ったことを示す指標となります。
  3. (1)と(2)から得られた情報を使用して、Total Lagrangian 法または Updated Lagrangian 法による解析を実行できます。自動時間ステップ オプションを使用する場合は、荷重プロセス中のオブジェクトの材料特性やジオメトリ設定の変化を示すため、時間/荷重ステップ増分を十分に小さくする必要があります。複数の時間ステップ オプションを使用する場合は、さまざまな時間/荷重ゾーンについて、さまざまな時間/荷重ステップや他のパラメータを割り当てることができます。通常、材料特性とジオメトリが急激に変化する時間/荷重ゾーンでは、より頻繁にマトリックスの再構築とラインサーチを行うことが必要です。分岐や崩壊など、重要度の高い時間/荷重レベルでは、オブジェクトの座屈前、座屈後/崩壊動作を観察するため、このレベル付近でのマトリックスの再構築や平衡反復の実行を避けるか、またはエラーの許容誤差を緩和する必要があります。