熱残留応力

解析でどのように熱残留応力を処理するかをコントロールします。

室温で荷重のない積層の複合材料構造では、複合材料の層レベルおよび構成材料レベル両方で非ゼロの自己平衡応力があります。これらの応力は、高い硬化温度から室温まで下がる、構造の初期冷却が原因で発生します。複合材料の層レベルでは、これらの熱残留応力は、隣接する層の線膨張特性の違いのみによって発生します。構成材料レベル(繊維/母材)において、熱残留応力は一部では上記の層レベルの熱残留応力によって発生し、一部では繊維と母材材料の線膨張特性の違いによって発生します。Simulation Composite Analysis は、外部から適用される荷重または温度変化の前に存在する、層レベルおよび構成レベルの熱残留応力を明示的に考慮できます。この場合、熱残留応力は複合材料全体の応力状態に影響し、材料が破損する機械的荷重レベルに影響します。解析で熱残留応力の影響を考慮するには、HIN ファイルに次のキーワードを追加する必要があります。

*CURE STRESS

HIN ファイルに *CURE STRESS キーワードが含まれている場合、一方向複合材料の応答で熱残留応力が明示的に考慮されます。これを実行するには、無応力時の温度(つまり、硬化温度)から環境温度まで低下する硬化後冷却により発生する層レベルおよび構成レベルの熱残留応力を計算します。この場合、無応力時の温度は材料データ ファイル(mdata ファイル)から読み取られ、環境温度は 72.5 °F、22.5 °C、または 295.65 °K に相当します。この機能がアクティブな場合、層レベルおよび構成レベルの熱残留応力は、実際のシミュレーション中に外部の機械的荷重また熱荷重が適用される前に、複合材料内に存在します。解析で熱残留応力を明示的に考慮することを選択した場合、材料データ ファイル(mdata ファイル)に定義済みの無応力時の温度が実際に含まれていることを確認する必要があります。存在しない場合は、無応力時の温度に既定の 0° が使用されるため、不適切な熱残留応力になることが予測されます。

HIN ファイルに *CURE STRESS キーワードが含まれていない場合、シミュレーション中の複合材料の応答に熱残留差応力が含まれません。この場合、複合材料の無応力時の温度は、既定で Tsf = 0° (使用する単位系に関係なく)が使用され、構成関係 [σ = C(ε - αΔT)] で使用される温度変化は、単に ΔT = T - Tsf = T として計算されます。ここで注意すべき点がいくつかあります。第 1 は、複合材料データ ファイル(mdata ファイル)で非ゼロの無応力時の温度を明示的に定義した場合でも、無応力時の温度 Tsf は既定で 0° となる点です。第 2 点は、有限要素モデルで使用する単位系に関係なく、構成関係で使用する温度変化 ΔT は、現在の温度 T によって完全に定義されます。第 3 は、複数の温度における特性を持つ複合材料では、現在の温度 T を使用して、構成関係に寄与するさまざまな材料特性が補間される点です。したがって、単一の温度特性(つまり、単一温度の mdata ファイル)を対象の複合材料に使用することをお勧めします。ここで要約すると、*CURE STRESS キーワードが HIN ファイルに含まれていない場合、現在の温度 T が 2 つの異なる方法で構成関係に影響を与えます: 1)構成関係で使用される温度変化が単純に ΔT =T になる、2)構成関係に寄与する温度依存材料特性が T を使用して補間される。

ANSYS では、既定の温度値は 0° であることに注意してください。この既定の温度は、9 番目のユーザ引数を 0 に指定したときに仮定される既定の無応力時の温度 0° と完全に互換性があります。この場合、0° 以外の温度を単に強制することで、モデルは温度変化を受けることができます。ただし、これらの熱応力は解析の開始時に存在するものとは対照的に、解析過程で生成されます。

熱残留応力の包括的な理論的説明については、「理論マニュアル」を参照してください。この機能のデモンストレーションについては、「問題例 2」を参照してください。