コンパクト熱モデル

コンパクト熱モデルという材料の種類では、2 箇所の熱抵抗を模擬したコンパクト熱モデルを使用して集積回路のシミュレーションを行うことができます。コンパクトモデルは、熱抵抗ネットワークを使用して電子部品の性能をシミュレートするための幾何学的にシンプルな方法を提供します。

このモデル化方法では、非常に複雑な装置を表現するために非常にシンプルなジオメトリを使用します。装置の全体ジオメトリを使用するより厳密な方法は、しばしば「詳細モデル」と呼ばれる。詳細モデルでは一般的に最高の精度を得られるが、その複雑性のために大規模なメッシュを必要とし、その結果、長時間の解析が必要となります。

この種類のモデル化では、以下のチップ構成がサポートされている。

TO200などの縦方向チップが本モデルでサポートされていない点に注意してください。それらのチップは詳細モデルを使用してモデル化することが推奨されます。

一般的に2つの熱抵抗で構成されるコンパクト熱モデルは、ジャンクション、ケースおよび基板の 3 節点のみで構成されています。ジャンクションはダイまたはチップとも呼ばれます。ケースはパッケージの上面であり、パッケージにヒートシンクを取り付ける部分です。基板節点は、基板とパッケージの間における節点の1ポイントです。各節点は、ケースとジャンクションの間の熱抵抗 (θJc)、および接合部と基板の間の熱抵抗 (θJb) により接続されています。抵抗ネットワークを以下に示します。

2つの熱抵抗で構成されるコンパクト熱モデルにおいて、伝熱は3つの節点(ケース、ジャンクションおよび基板)のみで計算されます。コンパクト熱モデルの両側面は断熱と仮定されます。ケース側と基板側のみで周囲への伝熱が可能です。装置のケース側と基板側は、等温であり、面内方向に高い熱伝導率でモデル化されます。

コンパクト熱モデルは実際の装置を簡略化して表現したものであり、文献では一般的な精度が約 10~30%であると指摘されている点に注意しなければならない。このモデルは簡略化したものであるが、設計段階で実施される多くの「ケーススタディ」解析においては許容可能なモデルである。

2箇所の熱抵抗コンパクトモデル解析の結果、温度、接合部、およびケースにおける各温度を得ることができる。さらに、ケースおよび基板への熱流束も提供されます。

詳細構成部品モデルとは異なり、2抵抗コンパクトモデルは単純な立方体としてモデル化されます。装置は1個のPCB部品と接触している必要があり、ヒートシンクが構成部品のケース側に取り付けられる場合があります。

この例では、チップはPCB上に直接配置されています:

コンパクト熱モデルに設定される熱荷重は、一般的に発熱境界条件として与えられます。過渡的な発熱境界条件を与えることも可能であるが、構成部品の比熱および密度が材料定義に含まれていないため、時間的に正確な解を得られない点に注意しなければならなりません。

伝熱計算がネットワークの3節点上のみで行われるため、その部品内には有限要素メッシュは構成されません。一方、その外表面は、2箇所の熱抵抗部品と隣接ジオメトリの間の接続性を確保するためにメッシュ分割される。

モデル化ガイドライン

CTM材料は流体材料が適用されている部品と接触する必要があります。Autodesk Simulation CFD は、固体オブジェクトに完全に埋め込まれた CTM モジュールをサポートしていません。

コンパクト熱モデルが接することの出来るPCB材料(もしくはPCBという名前を含んだ固体材料)は1つだけである。一般的に考えられるのはコンパクト熱モデルが2つのPCB材料に挟まれているモデルや隣接する複数のPCBにまたがって配置された場合等です。このような構成はサポートされていません。従ってコンパクト熱モデルはPCB 1つにしか接することは出来ません。

これを修正する1つの方法として、元のCADツールによるモデル構成の変更が挙げられます。コンパクト熱モデルに相当する部品を一つのPCB材料に接するように移動させます。もう 1 つの方法は、Autodesk Simulation CFD 内でいずれか 1 つの PCB 部品の材料定義を変更する方法です。この場合、一方の部品定義を固体に変更するか、あるいは一方の部品に対して名前に"PCB"を含まない他の固体材料を割り当てます。

コンパクト熱モデルは抑制されたPCB材料に接することは出来ません。抑制された部品は基板やコンパクト熱モデルのケース表面に接することは出来ません。

材料ツリー(デザインスタディバー内の)にてPCB部品が抑制されていないかを確認します。抑制された部品は部品名の上にラインが引かれています。部品の抑制を解除するには、部品選択後、右クリックし、抑制解除をクリックします。注意点として抑制解除した部品に対してメッシュ設定は再び行う必要があります。

データの抽出および可視化

部品は、可視化のためにジャンクションとケースの2領域に分割されています。構成部品の各領域には、抵抗値および周囲条件によって決定されるそれぞれの温度があります。各層は図のように 1 個の長方形要素で構成されます:

コンパクト熱モデル部品に対しては、以下のデータが使用可能です。

結果は次??方法で表示します:

関連トピック

コンパクト熱モデルの使用

コンパクト熱モデルの数学的説明