ヒートシンク材料を使用して、幾何学的に単純なモデルを使って実際のヒートシンク コンポーネントのパフォーマンスを近似させます。モデルに含まれるヒートシンクのアスペクト比(フィンの間隔に対するフィンの高さの比率)が大きい場合、そのようなコンポーネントのメッシュ生成に多くの要素が必要になってしまいます。そのような場合、要素の数によっては、解析が実行できたとしても、システム全体の解析に費用がかさみ、処理が遅くなる可能性があります。
モデリング上の考慮事項
ヒートシンク材料を使用するかどうかを決定する際は、次の点を考慮してください。
- ヒートシンク材料には、ヒートシンクの詳細なモデリングを近似するために相関式を使用しています。相関式は、完全にブラックボックス化したヒートシンクの実験結果を主な根拠としています。相関式を使うと、結果の出力がさらに速くなり、予測設計をする上での判断が可能になります。相関式と支配方程式に関する詳細をご確認ください。
- ヒートシンクの材料をブラックボックス化していないヒートシンクで使用できますが、慎重な結果(より高い部品温度)を必要とします。
- 相関式では、モデルの進入サーフェスに対して大部分が垂直ではない流れの影響を考慮しません。
- 多くのヒートシンクを搭載する場合やヒートシンクのアスペクト比が大きい場合は、すぐに要素数が大きくなるため、それだけヒートシンク材料を使用するほうが有利になります。
- ヒートシンクの相関式は、ヒートシンク内部が層流になるという想定に基づいています。
- ヒートシンクの形状は立方体で、全体が完全に流体の中に入っている必要があります。
- ヒートシンクは、複数のチップ部品と境界を形成することができ、接地面がチップと同じである必要はありません。
- ヒートシンク材料は自然対流をサポートしますが、そのような条件では進入サーフェスを推測する必要があります。
- ヒートシンク材料と境界を形成するチップ部品は、メッシュによる固体部品である必要があります。すなわち、コンパクト熱モデル(CTM)、ペルチェ素子(TEC)、熱交換器などといった材料をチップ部品に使用することはできません。
- ヒートシンクの進入サーフェスまたは流出口のサーフェスに境界条件を適用できません。境界条件は外側のサーフェスに適用することができます。
相関式の要件
確実にシートシンク材料が正しく使用されるようにするために、以下に示すように、使用するヒートシンクの物理的幾何形状と動作条件に関していくつかの要件があります。
マイクロ チャネル
チャネルに、流れがチャンル長の 95% まで完全に広がるための十分な長さがあること。
- L/Dhch> 0.05ReDhch で計算する。ここで、L はチャネル長、Dhch はチャネルの水力直径、および ReDhch はチャネルのレイノルド数。
- L/Dhch> 0.05PrReDhchで計算する。ここで、L はチャネル長、Dhch はチャネルの水力直径、Pr はプラントル数、および ReDhch はチャネルのレイノルド数。
チャネルの幅に対する高さの比率が 4 以上であること。
- Hch/wch > 4 で計算する。ここで、Hch はチャネルの高さ、wch はチャネルの幅。
流体での熱伝導率に対する固体での熱伝導率の比率が 20 以上であること。
- ks/kf > 20 で計算する。ここで、ks は固体での熱伝導率、kf は流体での熱伝導率。
ピン/フィン
プラントル数が 0.71 より大きいか等しくなること。
- Pr >= 0.71
レイノルズ数が 40 ~ 1000 の範囲にあること。
- 40 <= Redcp <= 1000 で計算する。ここで、Redcp はピンの直径に基づいたレイノルド数。
進入速度が 1 ~ 6 メートル/秒の範囲であること。
- 1 m/s <= U <= 6 m/s で計算する。ここで、U はヒートシンクへの流入口での速度(m/s)。
ピンの直径が 1 ~ 3 ミリメートルの範囲内であること。
- 1 mm <= d <= 3 mm で計算する。ここで、d はピンの直径。
ピンの直径に対する長手方向(流れの方向)のピンの間隔の比率が 1.25 ~ 3 の範囲内であること。
- 1.25 <= SL/d <= 3 で計算する。ここで、SL は長手方向のピン間隔で、d はピンの直径。
ピンの直径に対する横断方向(流れに垂直の方向)のピンの間隔の比率が 1.25 ~ 3 の範囲内であること。
- 1.25 <= ST/d <= 3 で計算する。ここで、ST は横断方向のピンの間隔、d = ピンの直径。
オフセット領域
適度なプラントル数のガスや液体です。
モデル タイプを選択する
2 つのモデル タイプ(単一部品か 2 部品構成)のうち 1 つを使用して物理ヒートシンクを表現します。実際に使用するコンポーネントのフィンが薄いベース材料に取り付けられている場合は単一部品のモデルを使用し、ベース材料が薄くなければ 2 部品構成のモデルが適切です。ベースが薄いか薄くないかは、2 つの要因に基づいて判断します。すなわち、コンポーネント全体の高さに対するベースの厚さの割合が小さい場合で、そのベースが流れに対してほとんど影響を及ぼさない場合、ベースは薄いとみなします。
単一部品のモデルの特性:
- 実際のコンポーネントと同じ輪郭寸法の単純な 1 ブロックでジオメトリが構成されています。
- ベース プレートは薄く、流れの特性にはほとんど影響を及ぼしません。
- ブロックの接地面のサイズは、関連するチップと同じになります。
- 関連付けられたチップは、材料タイプが固体である必要があります。たとえば、コンパクト熱モデルは使用できません。
- チップとヒートシンクは直接接触します。
2 部品構成のモデルの特性:
- ベース プレートとフィンを合わせた領域と同じ輪郭寸法の単純なブロックでジオメトリが構成されています。
- ベース プレートは厚く、流れの特性に影響を与えます。
- ベース プレートのブロックのサイズは、関連付けられているチップよりも大きくなります。
- 関連付けられているチップのタイプには、コンパクト熱モデルを使用します。
- ヒートシンクは複数のチップと境界を形成します。
モデルのセットアップ
モデル タイプ(単一部品または 2 部品構成)を選択したら、モデルのジオメトリを作成し、実際のコンポーネントを適切にシミュレーションできるように材料プロパティを定義します。
ジオメトリ
ヒートシンクを CAD モデル内で単純な立方体の固体に置き換えます。この固体の輪郭寸法は、ヒートシンクと同じです。2 部品構成のモデルを選択した場合、2 つの固体で各ヒートシンクを表現します(ベース領域用に 1 つ、フィン領域用に 1 つ)。
ベースの厚さ
ヒートシンク材料のモデル相関式には、ベースの厚さを使用して、ベース プレートを通過する熱伝達を決定します。
- 単一部品構成のモデルの場合、実際のベースの厚さを指定します。
- 2 部品構成のモデルの場合、単純なブロック状の固体をモデル化してベース プレートの表現しているため、ゼロを指定します。ゼロ以外の値を指定すると、ベース プレートの厚さが実際のブロックの厚さ以上になってシミュレーションが行われます。
ベースの伝導率
ベース プレートの材料の熱伝導率を入力します。
フィンの伝導率
フィンの材料の熱伝導率を入力します。
タイプ
実際のヒートシンクの構成に一番近い変化方法を選択します。それから、関連付けられているフィンのパラメータを入力します。
モデルの使用状況を検証する
解析の後に、使用するシートシンク コンポーネントに関連した結果を表示して、ヒートシンク材料のジオメトリと流れの条件が有効であるか確認します。「ステータス = 正常動作」と表示されたら、そのヒートシンク材料の使用は有効です。そうでなければ、ステータス行に、その材料が動作条件に対して無効である理由を示す情報が表示されます。
ヒートシンク材料のステータスをチェックするには、2 つの方法があります。
ヒートシンク材料の割り当てと作成に関する詳細をご確認ください。