ラディアンス イメージ ファイル形式は、ハイ ダイナミック レンジ イメージ(HDRI)で使用されます。ほとんどのカメラには、現実世界に存在するダイナミック範囲(輝度の暗い領域から明るい領域までの全域)をキャプチャする機能はありません。けれども、さまざまな露出設定で被写体を繰り返し撮影し、撮影した写真を 1 つのイメージ ファイルにまとめることで、ダイナミック レンジを回復することができます。
ラディアンス イメージ ファイルは放射輝度マップ ファイルとも呼ばれ、拡張子は .hdr または .pic です(これらは同じ形式です)。ラディアンス形式の各ファイルには、すべての写真のすべてのデータが含まれるため、明るい白のハイライトから最も暗い黒まで、幅広い輝度が使用されます。
ラディアンス ファイルは合成のバックグラウンド、および合成オブジェクトの反射マップとして便利です。ラディアンス イメージをスカイライトとして使用する場合、シーンの輝度を制御するには、[露出](Exposure)領域のパラメータを使用します。
重要: シーンに HDR イメージを組み込む場合、ラディアンス形式ではなく、
OpenEXR 形式を使用することを強くお勧めします。その利点は次のとおりです。
- 他の形式ではサポートされていないアルファ(透明度)データのサポート。
- Autodesk Toxik との相互運用に最適なイメージ形式。
- Photoshop でも使用可能。
注: 浮動小数点 32 ビット出力でレンダリングすると、光源の自己照明または反射などの明るい領域にぎざぎざが発生する場合があります。詳細については、「
フレーム バッファ タイプ」を参照してください。
手順
ラディアンス イメージをバックグラウンド、あるいは拡散反射光マップまたは反射マップとして使用するには:
- マテリアル エディタで、マップの種類に[ビットマップ](Bitmap)を選択します。
- [ビットマップ イメージ ファイルの選択](Select Bitmap Image File)ダイアログ ボックスの[ファイルの種類](Files Of Type)で、[輝度イメージ ファイル (HDRI)](Radiance Image File (HDRI))を選択します。使用するラディアンス ファイルを開きます。
[HDRI ロード設定](HDRI Load Settings)ダイアログ ボックスが表示されます。ダイアログ ボックスのプレビュー ウィンドウには、選択したイメージが表示されます。
- [HDRI ロード設定](HDRI Load Settings)ダイアログ ボックスの[計測最小値/最大値](Measured Min/Max)の値でイメージの輝度の範囲を確認します。
- [黒のポイント](Black Point)にチェックマークを付けます。
- ヒストグラムの赤の線がグラフの大部分を囲み、プレビューのイメージが満足できるものになるまで、[黒のポイント](Black Point)と[白のポイント](White Point)の値を調整します。
ヒント: [内部ストレージ](Internal Storage)のオプションは、特別な理由がない限り、[16 ビット/チャネル線形(48 bpp)](16 bit/chan Linear (48bpp))にします。
- 値の調整が済んだら、[線形](Linear)の[白のポイント](White Point)の値をメモし、[OK]をクリックして設定を確定します。
- マテリアル エディタで、[出力](Output)ロールアウトを展開します。[RGB レベル](RGB Level)を[HDRI ロード設定](HDRI Load Settings)ダイアログ ボックスの[線形](Linear)の[白のポイント](White Point)の値と同じに設定します。
結果として、濃い黒と非常に白いハイライトの幅広い範囲からなるマップができます。このようなイメージをレンダリングのバックグラウンドとオブジェクトの反射マップとして使用すると、オブジェクトは非常に明るく光を反射して表示されます。
インタフェース
[HDRI ロード設定](HDRI Load Settings)ダイアログ ボックス
ラディアンス ファイルをビットマップとして開くと、[HDRI ロード設定](HDRI Load Settings)ダイアログ ボックスが表示されます。このダイアログ ボックスでは、イメージで使用する輝度の範囲とデータの保存方法を指定できます。
- ヒストグラム
- このグラフは、イメージの輝度値を対数スケールで表示します。赤の線は[黒のポイント](Black Point)と[白のポイント](White Point)の現在の値を示します。
グラフは、イメージに実質的に表れる輝度レベルについてだけ表示されます。つまり、輝度のレベルがイメージ内のピクセルの 1 つや 2 つだけにしか適用されない場合は、それに対応するグラフはヒストグラムには表示されません。イメージの輝度レベルのすべての範囲を示す[計測最小値/最大値](Measured Min/Max)と比べてみてください。
一般的に、ヒストグラムを使用して[黒のポイント](Black Point)と[白のポイント](White Point)の範囲値を設定した方が、[計測最小値/最大値](Measured Min/Max)の全範囲を使用するより、結果としてできるイメージに劇的な効果を上げることができます。
[露出](Exposure)領域
- 黒のポイント
- このチェック ボックスにチェックマークが付いている場合、最も暗い色、つまり「黒」として扱う輝度値を設定できます。値は対数([ログ](Log))または線形値([線形](Linear))で設定できます。この値以下の値は、まとめて黒として扱われます。チェックマークが付いていない場合、最も低い値がブラック ポイントとして使用されます。
- 計測最小値/最大値
- イメージの輝度値の実際の最大値と最小値を、対数と線形値の両方で示します。これらの値を[黒のポイント](Black Point)と[白のポイント](White Point)で使用すると、イメージの輝度の範囲がすべて使用されることになります。ただし、ヒストグラムでは、輝度レベルの大部分がこれよりかなり小さな範囲に収まることが示されるかもしれません。
- 白のポイント
- 最も明るい色、つまり「白」とみなす輝度値を、対数([ログ](Log))または線形値([線形](Linear))で設定します。イメージでこの値以上の輝度値はすべて、まとめて白として扱われます。HDR ファイル内の白のピクセル値は、1 という線形値よりかなり大きくできます。
イメージの拡張輝度範囲は、[白のポイント](White Point)の[線形](Linear)の値が 1.0 より大きい場合にだけ使用されます。つまり、[白のポイント](White Point)の線形値を 1.0 以下に設定した場合、HDR イメージの特別な輝度プロパティは使用されず、TIF や JPG などの他のビットマップ形式と似たような結果になります。
- ログ
- [黒のポイント](Black Point)または[白のポイント](White Point)を、-128 から 127 までの範囲の対数値に設定します。この値を変更すると、[線形](Linear)パラメータも対応する値に変更されます。
- 線形
- [黒のポイント](Black Point)または[白のポイント](White Point)を、0 から 1 兆を超える範囲の線形値に設定します。この値を変更すると、[ログ](Log)パラメータも対応する値に変更されます。
- プレビュー ウィンドウ
- HDR イメージを表示します。
[内部ストレージ](Internal Storage)領域
- スケール カラーを表示
- このチェック ボックスにチェックマークが付いている場合、指定した値でプレビュー イメージの輝度値をスケールします。
[L]ボタンプレビューの輝度のスケールを[白のポイント]の線形値にロックします。 このオプションがオフになっていると、スケールの値を変更できます。既定値ではチェックマークが付いています。
- 白のクランプをマーク
- 白でまとめられた値を、カラー見本で示された色でプレビュー ウィンドウに表示します。カラー見本をクリックすると、カラーを変更できます。
- 黒のクランプをマーク
- [黒のポイント](Black Point)にチェックマークを付けると、黒でまとめられた値を、カラー見本で示された色でプレビュー ウィンドウに表示します。カラー見本をクリックすると、カラーを変更できます。
[HDRI 保存設定](HDRI Save Settings)ダイアログ ボックス
3ds Max では、32 ビット浮動小数点チャネルのイメージをレンダリングして保存することができます。このタイプのイメージは、次のように利用できます。
- 合成: 合成パイプラインで 16 ビット イメージを使用すると、カラーを設定するときにバンディングなどの問題が起きることがあります。
- HDR イメージは、特定の範囲(たとえば、0 ~ 255 または 0 ~ 65535)に固定されるのではなく、範囲がダイナミックに変化します。このように、高コントラストの物理的に正確な値は、32 ビット浮動小数点ピクセル形式で保存できます。
- 値の範囲が広いため、HDR イメージは簡単に修正できます。また、レンダリングしてからかなり時間が経った後でも、イメージの品質を変えることなく効果を再適用することができます。たとえば、16 ビット イメージのコントラスト、輝度、および露出を変更すると、バンディングが発生することがあり、その場合はイメージをもう一度レンダリングする必要があります。一方、HDR イメージの場合は、同じ操作を行っても品質に影響はありません。
[レンダリング出力ファイル](Render Output File)ダイアログ ボックスの[保存](Save)または[設定](Settings)をクリックすると、[HDRI 保存設定](HDRI Save Settings)ダイアログ ボックスが表示されます。
このダイアログ ボックスでは、出力に使用する値のソースを選択できます。
- 既存の 8 ビットおよび 10 ビット イメージ ファイル形式に比べて、ダイナミック範囲と色精度が向上。
- 16 ビット浮動小数点ピクセルのサポート。「Half Float」と呼ばれるこのピクセル形式は、NVIDIA 社の Cg グラフィック言語の half データ型と互換性があり、NVIDIA 社の新しい GeForce FX および Quadro FX 3D グラフィックス ソリューションでネイティブでサポートされています。
- 複数のロスレス イメージ圧縮アルゴリズム。OpenEXR に組み込まれている一部のコーデックでは、フィルム グレインの含まれるイメージで、2:1 のロスレス圧縮比率を実現できます。
- 拡張性。OpenEXR ソフトウェア ディストリビューションに組み込まれている C++ クラスを拡張することで、新しい圧縮コーデックとイメージ タイプを簡単に追加できます。新しいイメージ アトリビュート(文字列、ベクトル、整数など)を OpenEXR イメージ ヘッダに追加することもできます。既存の OpenEXR アプリケーションとの後方互換性も確保されています。