アニメーションの軌道をリターゲットする

一部のアニメーションエンジンは、アニメーションの連続するフレーム間のトランスレーションと回転のデルタとして表される、キャラクタアニメーションの軌道情報を追跡します。この情報により、エンジンは複数の異なるアニメーションをその開始位置に関係なくブレンドすることができます。アニメーションのトランスレーション、回転、スケールのデルタを各フレームでブレンドすることで、ブレンドの結果が、前のフレームに対して適切な移動、回転、スケールになることが保証されます。

しかし、この軌道ブレンドは、プロポーションの異なるキャラクタにアニメーションをリターゲットする場合に問題を引き起こす可能性があります。たとえば、歩行のアニメーションを大きいキャラクタからはるかに小さいキャラクタにリターゲットする場合などです。

HIKForceActorSpaceId キャラクタプロパティがターゲットキャラクタの HIKPropertySetState でアクティブになっている場合、ターゲットキャラクタの動きは、ソースキャラクタのキャラクタスペースに制限されます。たとえば、小さいターゲットキャラクタは、大きいキャラクタの元のストライドに一致させるために、歩幅がきわめて大きくなります。この場合、元のアニメーションのキャラクタスペースが維持されるため、元のアニメーションの軌道をターゲットキャラクタにも使用することができます。
HIKForceActorSpaceId キャラクタプロパティがターゲットキャラクタの HIKPropertySetState でアクティブになっていない場合、ソースキャラクタの動きは、HumanIK リターゲットソルバにより、ターゲットキャラクタの相対的なサイズとジオメトリに合うように調整されます。たとえば、小さいキャラクタはソースキャラクタよりも小さい歩幅となり、そのサイズに合うようにストライドが短くなります。この場合、元のアニメーションの軌道は、ターゲットキャラクタによって実行される実際の動きを反映せず、はるかに大きいデルタトランスレーションを含むことになります。この軌道情報を他のアニメーションの軌道情報とブレンドすると、小さなターゲットキャラクタについて誤った動きが生じます。

この問題を解決するために、HumanIK では、ソースキャラクタのアニメーションに指定したトランスレーションと回転のデルタを、ターゲットキャラクタのキャラクタスペースに変換することができます。これらの調整されたデルタ値は、ターゲットキャラクタが追従している実際の軌道をアニメーションエンジンに提供します。そのため、リターゲットされたアニメーションの上に他のアニメーションをブレンドすることができます。

軌道のリターゲットを設定する

次の説明は、「HumanIK を使用する」で説明したリターゲットの設定と実行のための基本的な説明を踏まえたものです。

ターゲットキャラクタの HIKPropertySetState を設定するときは、次のことを行います。
- HIKHipsTranslationModeId プロパティの値を 2 に設定します。この値は、リターゲットを実行するときに HipsTranslationId ノードに含まれているデルタを調整するようにリターゲットソルバに指示します。
- HIKForceActorSpaceId のモードを 0(デフォルト)に設定します。
各フレームで、ソースキャラクタの HIKCharacterState を設定するときに、アニメーションの前のフレームからのデルタトランスレーション、回転、スケールの値を、ソースキャラクタの HipsTranslationId ノードによって維持される値に格納します。
各フレームで、リターゲットの結果をターゲットキャラクタの HIKCharacterState から取得するときに、調整されたデルタトランスレーションとデルタ回転をターゲットキャラクタの HipsTranslationId ノードから取得します。値はグローバルスペースで表現されます。
ソースキャラクタに HipsTranslationId ノードがない場合、ターゲットキャラクタの HipsTranslationId ノードには、ソースキャラクタの HipsNodeId ノードからリターゲットされた値が含まれます。