金型設計での熱可塑性材料

熱可塑性プラスティック材料のグレードを選択する際には、次の材料プロパティを検討することが重要です。

材料の結晶化度

材料の結晶化度とは、処理温度における樹脂の状態を示す特性で、非晶状態から結晶状態まで変動します。非晶性樹脂は成層がまったくなく、この状態を通常環境で維持します。結晶性樹脂では、樹脂の分子が一定の順序で並んでいるので、分子どうしが安定して結合しています。

結晶化度は、温度と時間で決まります。冷却速度が速いほど、内部の結晶含有レベルが低くなります。内部の結晶含有レベルが低いほど、冷却速度が速くなります。射出成形品の厚肉部は、薄肉部と比較して冷却に時間がかかるので、内部の結晶含有量と体積収縮度が高くなります。

金型温度と樹脂温度

金型温度は、樹脂に接触している金型表面の温度です。金型温度は樹脂の冷却速度に影響し、材料によっては突出可能温度より高くできません。

溶融樹脂の温度が樹脂温度です。樹脂温度を上昇させると、材料の粘度は低下します。さらに、樹脂温度が高いと、固化層の厚さが薄くなります。固化層が薄くなるということは、収縮流が減少するので、せん断応力も低下することを意味します。この結果、流動中の材料配向も低下します。

材料の熱特性

比熱(Cp) とは、単位質量の材料の温度を 1℃上げるために必要な熱量です。本質的には、受け取った熱を材料が実際の温度上昇に変換する能力の指標です。比熱は、大気圧下で、特定の温度範囲にわたって、材料の最高処理温度までの範囲で測定します。

[熱可塑性樹脂] ダイアログ ボックスの [熱特性] タブには、比熱データが次のように表形式で表示されます。

材料の熱伝導率(k)とは、単位長当たり 1℃の温度差がある場合に伝導により移動する熱量です。熱伝導率は、材料の熱放散率の指標です。この率は、加圧状態で一定の温度範囲にわたって測定されます。単位は W/m-C (長さ 1 m、温度 1℃当たりの仕事率)です。

[熱可塑性樹脂]ダイアログ ボックスの[熱特性]タブには、材料の熱伝導率データが次のように表形式で表示されます。

材料の粘度

材料の粘度とは、加圧下での材料の流動性を示す指標です。樹脂の粘度は、温度とせん断速度に依存します。一般的に、樹脂の温度が上がり、せん断速度が速くなるほど、粘度は低下し、加圧状態で材料は高い流動性を示すようになります。[流動プロパティ]タブには、材料データベースから取得した各材料の粘度指標が表示され、これを使用して材料の流動性を比較できます。粘度指標では、せん断速度 1,000 1/S での、カッコ内に指定された温度における粘度を示しています。

材料の pvT データ

充填解析や充填+保圧解析時の材料の圧縮性を説明するために、オートデスクは pvT モデルを用意しています。pvT モデルは材料ごとに異なる係数を使用した数学モデルで、体積と温度に対する圧力の特性曲線を提供します。

pvT データに基づく解析では高精度な結果が得られますが、モデルのポイントごとに温度と圧力の計算を繰り返すことから、処理上の負荷も高くなります。しかし、肉厚変化の激しい複雑なモデルには適した手法です。

射出成形用の複合材料

複合材料は、射出成形の際に樹脂に添加されるフィラーを含有しています。フィラーにより高い樹脂強度が得られ、高品質な成形品の製造が実現します。ほとんどの市販複合材料には、重量比で 10 ~ 50 パーセントのファイバーが添加されています。これらの条件は、機械的特性と流体力学的特性の両面で、繊維の相互作用が働く高濃度の懸濁であると見なされます。射出成形された複合材料では、繊維配向の分布は層状の性質を示します。この繊維配向の分布は、充填速度、成形条件、および材料挙動の影響を受けます。

プラスチックの収縮

プラスチックが冷却すると、体積収縮によってその寸法が大きく変化します。収縮に影響を及ぼす主な要因として、冷却配向、結晶化度、および熱の集中があります。

金型設計の材料の環境影響

材料によって環境に与える影響が異なります。材料が属している樹脂ファミリーによって、その材料の成形加工性と潜在的なリサイクル性の概要が分かります。選択した材料の樹脂識別コードにより、樹脂ファミリーを特定できます。

射出成形プロセスのエネルギー消費を最小化することにより、コスト削減や環境保全上の利点があります。熱可塑性樹脂データベースの各材料に対して、エネルギー使用量インジケータを提供します。 このインジケータは、特定の成形品形状と肉厚の組合せに対する、予測射出圧力と冷却時間に基づきます。

樹脂識別コードおよびエネルギー使用量インジケータはどちらも熱可塑性樹脂データベースに格納されます。