ジオメトリック データのコレクションは、MGeometry クラスによって表されます。
MGeometry のインスタンスは、非描画 API 固有の方法で、使用可能なデータ ストリームのセットおよびそれらのストリームのいずれかのインデックスを表します。1 つまたは複数の関連付けられたデータ ストリームとゼロ以上のインデックス セットが存在します。
データ ストリームの各項目は、頂点(ポイント)アトリビュートを表し、データ ストリームは頂点バッファと呼ばれるます。インデックス データ(適用可能な場合)は、ジオメトリック プリミティブを表すトポロジ(接続)情報を提供します。
MGeometry インスタンスで保持されるデータ セットの単純な例として、シェーダの要求に応じた、位置、法線、およびカラー データのデータ ストリームのセットがあります。インデックスの 1 セットは、接続された三角形プリミティブのセットを表します。
図 18: インデックス リスト内の各項目は、位置(P)、法線(N)、およびカラー(C)の頂点バッファへのデータ オフセットを定義します。三角形ごとに 3 つのインデックスが使用されます。
MGeometry には、多数のシェーダのレンダリングに必要なデータやインデックスを保持することができます。特定のシェーダの要件によっては、データとインデックスの複雑なセットが存在することがあります。
オブジェクト(トーラス)に、塗り潰したシェーディングのジオメトリ、ワイヤフレームの描画およびコントロール ポイントの描画が必要だった前の例では、必要なデータ ストリームの合計セットは、2 つの位置ストリーム、1 つの法線ストリーム、1 つの接線ストリーム、1 つの複接線ストリーム、および 1 つのカラー ストリームです。各レンダー項目に 1 つずつ、3 つのインデックス ストリームも必要です。
この例では、位置を表す P1 と P2、法線、接線、複接線を表す N、T、B、およびカラー ストリームを表す C を含む 1 つの MGeometry インスタンスが存在します。I1 は接続されているワイヤフレーム ライン セグメント、I2 は塗り潰された描画の三角メッシュ、および I3 はコントロール頂点ポイントのインデックスを表します。このシナリオでは、P1 がワイヤとシェーディング描画の両方に再利用されることに注意してください。
頂点バッファは、MVertexBuffer クラスにより API で表されます。頂点バッファは、論理的には単なるバイナリ データのブロックです。
このデータの形式は、頂点バッファ記述子で表され、この記述子は API では MVertexBufferDescriptor クラスによって表されます。バッファ記述子は、次のプロパティを表します。
一意の名前によって、同じセマンティックを使用する複数のデータ セットを使用できます。たとえば、名前が異なるテクスチャ座標を 2 セット使用することができます。
たとえば、トーラスの例では、それぞれ名前が異なる(たとえば、位置バッファの 1 つの名前を「P1」とする)頂点バッファのセットを使用できます。
前のシステムと異なり、レンダリング フレームワークでは、GPU 側(CPU側はありません)のデータのみリソース管理システムで維持されます。
頂点バッファ(および実際にはすべての GPU 側リソース)については、次のプロパティに該当します。
インデックス データは、MIndexBuffer クラスによって表されます。インデックス データは、論理的には単なるバイナリ データのブロックです。
インデックスの解釈と形式は、MIndexBufferDescriptor クラスによって提供されます。記述子には、一意に識別するための文字列名、プリミティブ タイプ、データ型など、基本のプロパティがあります。内部オブジェクト タイプから現在返される唯一のデータ型は、32 ビットの整数です。プリミティブ タイプには、ポイント、ライン、三角形などの基本のハードウェア タイプが含まれますが、カスタム インデックスによって作成可能な、より高度なプリミティブの列挙も含まれます。
記述子では、インデックスに対してセマンティックの意味を指定することもできます。このセマンティックの意味は、インデックス タイプと呼ばれます。一連の定義済みセマンティックを使用することができますが、インデックスを「カスタム」で生成されているものとしてマークすることもできます。
カスタム インデックスの詳細については、「高度なトピック」セクションを参照してください。
インデックスは、レンダリング可能なオブジェクトに対して特定のプリミティブ タイプのすべての要素を表す必要はありません。たとえば、フェース単位のシェーディングのメッシュ上のフェースのコンポーネント インデックスを表したり、NURBS サーフェス上の選択された CV を表すために使用できます。対応付けのため、Maya DAG オブジェクト コンポーネントをインデックス記述子に関連付ける場合があります。
MGeometry のすべての部分をまとめるために、以下の図 20 に、MGeometry、MIndexBuffer、MVertexBuffer、MRenderItem および内部リソース マネージャのインスタンスを示します。
図 21: MRenderItem は、MGeometry インスタンスを参照します。MGeometry インスタンスは 1 つまたは複数の MVertexBuffer インスタンス、およびゼロ以上の MIndexBuffer インスタンスを参照します。MRenderItem では、使用している特定の MVertexBuffers と MIndexBuffer に関する情報が保持されます。どの Maya DAG コンポーネントも、特定の MIndexBuffer に対応付けることができます。MVertexBuffer および MIndexBuffer のデータは、GPU データと直接対話する内部リソース マネージャによって管理されます。
この図には、接続ラインで表される一連の従属が示されています。矢印の方向は、従属の方向を示します。各従属は参照を表し、参照のコレクションは寿命管理の処理方法を示します。リソース マネージャは常に実際のジオメトリック データを参照します。MVertexBuffer および MIndexBuffer インスタンスは、対応する GPU データへの参照を保持します。MGeometry には、レンダリング可能なオブジェクトのすべての MVertexBuffer および MIndexBuffer インスタンスへの参照が保持されます。MRenderItem は、使用している特定の MVertexBuffer および MIndexBuffer インスタンスを参照します。
前のセクションでは、静的ジオメトリ データの構造とそれらの関係について説明しました。更新フェーズ中に、これらの構造のインスタンスをインスタンス化し、塗り潰す必要があります。
API 内で実現する内容を指定する対応クラスは MGeometryRequirements です。
このクラスのインスタンスは、シェーダと、データが塗り潰される場所の間のハンドシェイク メカニズムを表します。レンダー項目の各シェーダは、その要件を提案します。要件の累積セットは、MGeometryRequirements の 1 つのインスタンスで収集および表されます。
要件は、頂点バッファ記述子(MVertexBufferDescriptor)のセットとインデックス バッファ記述子(MIndexBufferDescriptor)のセットで指定されます。
ジオメトリック データのラウンドトリップ更新を、次の図に示します。一部のジオメトリは、シェーダのセットに対して更新する必要があります。要件が収集されて、満たされると、シェーディングに必要なジオメトリが更新されます。
図 22: この例では、いくつかのレンダー項目が表示されています。それぞれのレンダー項目のシェーダで、記述子(インデックスまたはデータ)のセットを指定し、記述子は 1 つの MGeometryRequirements インスタンスに累積されます。更新が必要な場合は、これらの要件が満たされると、結果のデータが MGeometry インスタンスによってキャッシュおよび参照されます。このような特定のケースでは、すべてのレンダー項目がこの MGeometry インスタンスを参照し、このデータをレンダリング フェーズ中に使用します。
レンダー項目の更新のコンテキスト外またはレンダリング パイプライン自体のコンテキスト外でリソース マネージャからジオメトリを抽出できると便利な場合があります。
これを実行するには、MGeometryExtractor インタフェースを使用します。このインタフェースは、Maya DAG オブジェクトから非レンダー固有のジオメトリ データを提供するために使用されます。
これは、(MGeometryManager と呼ばれる)古いインタフェースに代わる優先メカニズムです。古いまたは新しいインタフェースのいずれかを使用したり、オブジェクトの機能インタフェース(MFn *)を使用することもできますが、既存のインタフェースでは、次のような新しいインタフェースのすべてのプロパティは利用されません。
現在は、ポリゴン オブジェクト タイプのみがサポートされています。
図 23: 指定した DAG パスで、ジオメトリ要件のセットが抽出機能に渡されます。関連付けられた DAG オブジェクトから、インデックスまたは頂点データ ブロックのセットを抽出することができます。
プラグイン作成者が既存のジオメトリ クラスを使用している場合、古いインタフェースと新しいインタフェースの間で混乱が生じる可能性があります。この混乱は特にいくつかの名前が再利用されている場合に生じます。注意すべき重要事項の 1 つは、新しいすべてのインタフェースは同じネームスペース(MHWRender)内にあるということです。
ここでは、古いクラスと新しいクラスの主な相違点を表で比較して説明します。2 つのインタフェースは、互いに互換するように設計されていないため、クラスの使用を試したり、組み合わせることはお勧めできません。
既に説明したように、大きな違いの 1 つは、すべての古いインタフェースは CPU 側のデータを管理し、新しいインタフェースは GPU 側のデータを管理するという点です。
構成/インタフェース |
古いクラス(主な違い) |
対応する新しいクラス |
データ ストリーム(頂点バッファ) |
MGeometryData: データ型にセマンティックがあります(新しいインタフェースの場合はインデックス タイプ)。たとえば、プリミティブの中心とコンポーネントの識別子はデータ型です。どちらも内部データおよび頂点ブラインド データから提供されます。サポートされる形式とパッキングの固定セットが定義されています。 |
MHWRender::MVertexBuffer: 巻上げ方向を処理するためのパッキング接線 + 記号など項目用の追加形式があります。フレキシブルな形式とカスタム パッキングをサポートします。セマンティックはインデックス レベルで指定されます。 |
データストリームのインデックス |
MGeometryPrimitive: 旧式のクワッドとクワッド ストリップ プリミティブ タイプ、および N 多角形が含まれています。 |
MHWRender::MIndexBuffer: カスタム インデックスとインデックス セマンティックを使用できます。旧式のクワッド タイプと N 多角形はサポートしていません。 |
ストリーム コレクション |
MGeometry: データおよびインデックス(MGeometryData と MGeometryPrimitive)のコレクション。 |
MHWRender::MVertexBufferList: 頂点バッファのリスト(インデックスなし)です。 |
ストリーム コレクションのリスト |
MGeometryList: ストリーム、パス、行列のリストです。 |
MHWRender::MGeometry: データとインデックスのコレクションです。 |
ジオメトリ要件 |
MGeometryRequirements: 要件と許可されるデータ形式の固定セットです。展開できません。 |
MHWRender::MGeometryRequirements: 記述子クラスを使用してカスタマイズできる要件です。(MHWRender ::MVertexBufferDescriptor、MHWRender ::MIndexBufferDescriptor) |
ジオメトリ マネージャ |
MGeometryManager: 指定された Maya DAG オブジェクトのデフォルト ジオメトリと MGeometry の抽出にアクセスできます。 |
MHWRender::MGeometryExtractor: 説明に基づくジオメトリ データの抽出です。カスタム データ ストリームとカスタム インデックスをサポートすることができます。 |