並列冷却回路と直列冷却回路

一般的に、冷却回路は直列回路と並列回路に分類できます。どちらのタイプの回路も、冷媒の最終的な温度上昇は、プラスチックからのエネルギーと冷媒の体積流量のみで決まります。

効果的な熱伝達を維持するには、流量回路設計が最も重要な要素となります。下図は、直列冷却回路 (左) と並列冷却回路 (右) を示しています。



直列回路では各部分の流量が同じになるので、冷媒の流速は容易に制御できます。したがって、流量の条件を維持しやすく、効果的な熱伝達が得られます。

並列回路

並列回路では、供給側マニホールドから排出側マニホールドまで直線状に並列に冷却管を設けます。並列設計では、その流動特性上、各冷却管の流動抵抗によって冷却管ごとに流量が異なります。このように流量が異なることから、熱伝達効率も冷却管ごとに異なります。その結果、並列回路での冷却は均一ではありません。

通常、金型のキャビティ側とコア側では、それぞれ別の並列回路を利用します。回路ごとの冷却管の数は、金型の大きさと複雑さで変わります。

次の条件の 1 つ以上がモデルに当てはまる場合は、並列回路のみを使用します。

並列回路を使用する場合は、各分岐は周囲に熱負荷を除去できる冷却能力が必要です。冷媒流は各分岐の直径と長さを指定することで調整します。

効果的な熱伝達係数を得るために、各分岐に乱流が発生するようにします。分岐の表面積は、局所的な熱負荷を除去できる長さと直径で決まります。

バランスの良好な並列回路では均一な除熱が実現できますが、並列回路には次のような欠点もあります。
  • 分岐の数を増やすと各分岐の流量は低下するので、総流量を増加しない限り、冷却効率も低下する。
  • 分岐ごとに流量が異なることから、冷却が不均一になる。流量が異なる分岐の直径を調整し、冷媒の流動バランスを調整することで、この影響を最小限にすることができる。
  • 分岐での異物混入などによって流動が部分的に妨げられると、その分岐の流量は激減し、他の分岐の流量が増加する。この場合も冷却は不均一になる。

直列回路

冷媒の入口から出口までループが一本の冷却管を、直列回路と呼びます。これは最も一般的なタイプの冷却管です。冷却管の大きさが均一であれば、冷媒は回路全体において乱流の流量を維持できます。

冷媒は継続して冷却回路周囲の熱を抽出するため、冷媒入口から出口までの冷媒の温度上昇を最小とするように注意が必要です。冷媒の入口と出口での温度差を、一般用途の金型では 5℃ 以内、精密金型では 3℃ 以内とする必要があります。大規模な金型で冷媒温度および冷却効果を均一化するには、複数の直列冷却回路の設置が必要になる場合もあります。

並列回路で発生する問題のため、通常は直列回路の方が望ましいですが、直列回路を使用できない場合もあります。次のような状況では、直列回路は使用すべきではありません。
  • 回路の長さを考慮すると、利用可能なポンプの能力では直列回路内部の圧力降下が高くなる場合
  • 金型設計の物理的な制約上、直列回路では効果的な冷却が実現できない場合