熱硬化性材料

架橋結合は、熱硬化性樹脂の分子間に化学結合を形成し、分子を相互接続した網目構造とする化学プロセスです。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の大きな違いは、この架橋結合の有無にあります。

成形する前では、熱硬化性材料の鎖状構造は熱可塑性材料に似たものとなっています。成形過程で熱的作用または化学的作用(またはその両方)が働き、熱硬化性樹脂は架橋結合したミクロ構造に重合(反応または硬化)します。この反応が完了すると、分子鎖は相互に結合(架橋結合)し、3 次元の網目構造を形成します。分子間にこのような交差結合ができることで、個々の分子鎖の位置がずれることがなくなります。

この結果、熱硬化性樹脂は不融性で不溶性の固体となり、結合を部分的に劣化させずに加熱して再軟化や再処理を施すことは不可能です。固くゆでた卵は卵黄が液体から固体に変化しており、二度と液体に戻ることはありませんが、熱硬化性樹脂はこのようなゆで卵に似ています。

熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を構造と特性の面で比較した内容を次の表に示します。
材料 熱可塑性樹脂 熱硬化性樹脂
ミクロ構造 直鎖状または分岐状分子

分子間に化学結合なし

化学反応で形成される分子間化学結合による架橋結合の網目構造
熱に対する反応 再軟化可能(物理的な相変化) 架橋形成後は、劣化を伴わずに再軟化は不可能
一般的な特性

高衝撃強度

成形が容易

複雑な設計に対応可能

高機械的強度

高寸法安定性

良好な耐熱性と耐湿性