Autodesk Moldflow では、射出成形プロセスのシミュレーション用の操作性に優れたツールが用意されています。ユーザは製造を開始する前に部品、金型、金型設計を最適化できます。デジタル プロトタイプを使用して射出成形処理をシミュレートすることで、物理的プロトタイプの数を削減できるため、設計の完成度を高め、製品を迅速に市場に送り出すことができます。
射出成形では、本質的に異方性であり(異なる方向において異なる特性)、部品全体で繊維配向が変化する材料が結果として生じるため、Moldflow 解析を実行して、その結果を Simulation Mechanical 応力解析で利用することで、より高精度なシミュレーションが実現します。
ヒント: Simulation Mechanical には、8000 を超える複合材料のライブラリが用意されています(適用可能な場合は、マトリックスおよびフィラー材料)。そのため、均質化された等方性材料特性(すべての方向において同一の特性)を使用して、室温における応力解析を実行できます。このタイプの解析では、Moldflow ソフトウェアおよび次に示す手順は必要ありません。しかし、ライブラリの複合材料の材料特性は平均化されているため、その結果は、Moldflow からの結果を使用する場合ほど精度が高くありません。
制限事項
Moldflow からの結果を使用する場合、次の項目は Simulation Mechanical 解析では考慮されません。
- Moldflow Adviser 解析からの残留応力パーツは 0 初期応力から開始すると想定されます。Moldflow Insight の結果は、残留応力を提示します。
- 非線形材料特性。材料は弾性であると想定されます。
- メカニカル イベント シミュレーションでは、小さなひずみが想定されます。すなわち、要素の変形(ひずみ)による材料軸の方向の更新は、解析全体を通して実行されません。材料の方向は、剛体モーションに基づき更新されます。
Simulation Mechanical での Moldflow 結果の使用方法
ここで説明する 2 つのワークフローは、Simulation Mechanical モデルの作成開始時に、Moldflow 解析が設定され実行済みであるかどうかに応じて異なります。どちらのワークフローを選択するかに関係なく、次の制限事項が適用されます。
- Moldflow モデル内の各部品は、単一の連続ボリュームで構成されている必要があります。個別の部品が単一のボリュームで構成されている限り、複数の部品(アセンブリ)は許容されます。Simulation Mechanical をはじめとした多くの CAD アプリケーションでは、部品を複数のボリュームで構成することができます。ただし、Moldflow との相互運用性を確保するには、この方法は避ける必要があります。
- 対称モデルは使用しないようにします。この方法は応力解析で一般的に採用されていますが、射出成形プロセスが実際に対称であることはまずありません。
- Simulation Mechanical の塑性部品に対して、次のサポートされている要素タイプのいずれかを使用する必要があります(つまり、Moldflow の材料モデルおよび Moldflow 結果が適用可能な部品)。
解析タイプ |
ブリック要素 |
4 辺形要素 |
線形解析 |
はい |
いいえ |
MES/非線形 |
はい |
はい |
手順 1: Simulation Mechanical モデルを開始する前に、Moldflow 結果が使用可能な場合。
前提条件:
Simulation Mechanical で次の操作を実行します。
- Moldflow モデルがベースにしたものと同じ CAD ソリッド モデルを開きます。
- モデルをメッシュ化します。要素タイプは、すべてのソリッド部品に対してブリック要素が自動的に設定されます。
- アセンブリ内の各射出成形塑性部品に対して、次を実行します。
- アプリケーション メニュー(
)から、[Moldflow スタディ マネージャ]をクリックします。 注: [Moldflow スタディ マネージャ]コマンドは、材料モデルで少なくとも 1 つの部品が[Moldflow]に設定されるまで、アプリケーション メニューでは使用できません。
- 一覧表示されている塑性部品のいずれかの[関連する Moldflow スタディ ファイル]列をクリックします。[...]ボタンがデータ フィールドの右端に表示されます。
- [...]ボタンをクリックします。[Moldflow スタディ ファイルを表示]ダイアログ ボックスが表示されます。
- 関連する Moldflow スタディ ファイル(*.sdy)にナビゲートして選択します。
- [開く]をクリックします。
- アセンブリ内のその他の射出成形塑性部品に対して手順 5 を繰り返します。次に、Autodesk Moldflow スタディ マネージャを閉じるには、[OK]をクリックします。
- モデルの設定(荷重、拘束、解析パラメータなど)を完了し、シミュレーションを実行します。結果には、Moldflow の異方性材料特性の効果が反映されます。
ヒント
- Moldflow では、Autodesk Simulation Mechanical の部品からの外側サーフェス メッシュに基づいて、Moldflow 自体のメッシュが生成されます。したがって、すべての曲線サーフェスは、切り子面として近似化されます。より細かいメッシュほど、曲線サーフェスの近似化の精度が向上します。この近似化は、射出モデルの必要事項を満たすために設定するメッシュ密度の細かさに影響を及ぼす場合があります。
- Moldflow 結果の計算が終了すると、Simulation Mechanical モデルを複数回解析して、異なる境界条件や荷重などをテストできます。理論上、メッシュは、変更したモデルを Moldflow にエクスポートせずに Simulation Mechanical で変更可能です。塑性パーツの形状を変更した場合のみ、モデルを Moldflow にエクスポートする必要があります。
- Moldflow は、Simulation Mechanical と同じコンピュータにインストールする必要はありません。モデルをローカル コンピュータにエクスポートし、エクスポートしたプロジェクト ファイルを Moldflow がインストールされたコンピュータにコピーし、Moldflow 解析を実行した後、そのプロジェクト ファイル(および結果)を Simulation Mechanical のコンピュータにコピーすることができます。
- 各パーツの材料や特性をレポートで選択または修正するときに Autodesk Simulation に表示される材料特性は、等方性特性に一般化されることに注意してください。これらは、参照の目的のみで使用します。実際の材料特性は、各要素において異なる場合があり、Moldflow から派生します。
応力モデルをアーカイブする場合(「モデル ファイルを開くか書き出す」: 「 アーカイブ」ページを参照)、Moldflow 結果は別のモデル内にあるため、応力モデル アーカイブには含まれないことに注意してください。Moldflow 結果は、ZIP アーカイブとして別途にエクスポートする必要があります。