複合材料特性は、厚肉または薄肉複合材要素についてのみ使用します。この材料特性を正しく入力するには、材料軸を[要素定義]ダイアログで定義する必要があります。詳細は「厚肉複合材要素」ページと「薄肉複合材要素」ページを参照してください。
複合材料特性のリストを以下で示します。要素タイプ、解析タイプ、および荷重によっては、一部の材料特性が必要でない場合があります。これらの材料特性のほか、一部の「等方性材料特性」を定義する必要がある場合もあります。
このセクションで挙げられている記号の意味は次のとおりです。
Ef 繊維材料のヤング率です。
Em マトリックス材料のヤング率です。
Gf 繊維材料のせん断弾性係数です。
Gf マトリックス材料のせん断弾性係数です。
μf 繊維材料のポアソン比です。
μm マトリックス材料のポアソン比です。
Vf 体積全体に占める繊維材料の割合です。
Vm 体積全体に占めるマトリックス材料の割合です(=1-Vf)。
弾性特性
- 局部座標軸 1 のヤング率(E1): 局部座標軸 1 のヤング率は、材料の局部座標軸 1 における比例限界までの応力対ひずみ曲線の勾配です。これは、局部座標軸 1 のヤング率とも呼ばれます。また、繊維複合材料について使用できる方程式は E1 = Vf*Ef + Vm*Em(材料特性の方向は局部座標軸 1)となります。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部座標軸 2 のヤング率(E2): 局部座標軸 2 のヤング率は、材料の局部座標軸 2 における比例限界までの応力対ひずみ曲線の勾配です。これは、局部座標軸 2 のヤング率とも呼ばれます。また、繊維複合材料について使用できる方程式は E2 = Vf*Ef + Vm*Em(材料特性の方向は局部座標軸 2)となります。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部平面 12(メジャー)のポアソン比(μ12): 局部平面 12 のポアソン比は、軸方向に荷重が加えられた部材について、局部平面 12 に垂直な軸ひずみで、局部平面 12 における側部の負のひずみを割ることで導かれます。(μ12 = - 方向 2 へのひずみ / 方向 1 へのひずみ)。通常、ポアソン比の値は 0.0~ 0.5 となります。繊維複合材料について使用できる方程式は μ12 = Vf * μ f + Vm * μm(材料特性は平面 12 で測定)となります。局部平面 12 のポアソン比は、メジャー ポアソン比とも言われます。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部平面 21(マイナー)のポアソン比(μ21): 繊維複合材料(直交異方性材料)について使用できる方程式は μ21 =μ12 * (E2/E1)となります。局部平面 21 のポアソン比は、マイナー ポアソン比とも言われます。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部座標軸 1 の線膨張係数: 局部座標軸 1 の線膨張係数は、材料の収縮および膨張に基づく材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、熱荷重にかかわるすべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部座標軸 2 の線膨張係数: 局部座標軸 2 の線膨張係数は、材料の収縮および膨張に基づく材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、熱荷重にかかわるすべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部平面 12 のせん断弾性係数(G12): 局部平面 12(要素の平面)のせん断弾性係数は、平面 12 における比例限界までのせん断応力対せん断ひずみの勾配です。弾性率と呼ばれることもあります。繊維複合材料について使用できる方程式は G12 = (Gf*Gm) / (Vm*Gf + Gm*Vf) となります。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部平面 13 のせん断弾性係数(G 13): 局部平面 13(要素に垂直)のせん断弾性係数は、平面における比例限界までのせん断応力対せん断ひずみの勾配です。弾性率と呼ばれることもあります。この材料特性は厚肉複合材要素のみに適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
- 局部平面 23 のせん断弾性係数(G 23): 局部平面 23(要素に垂直)のせん断弾性係数は、平面における比例限界までのせん断応力対せん断ひずみの勾配です。弾性率と呼ばれることもあります。この材料特性は厚肉複合材要素のみに適用可能で、すべての構造解析タイプに必要となります。
許容応力
Tsai-Wu または最大破壊判定基準が指定されている場合は、許容応力を適用する必要があります。破壊判定基準と破壊を定める方程式を選択する際の詳細については、「厚肉複合材要素」と「薄肉複合材要素」を参照してください。
- 局部座標軸 1 の圧縮応力(Xc): 局部座標軸 1 の許容圧縮応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。正の値を入力する必要があります。
- 局部座標軸 1 の引張応力(Xt): 局部座標軸 1 の許容引張応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部座標軸 2 の圧縮応力(Yc): 局部座標軸 2 の許容圧縮応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。正の値を入力します。
- 局部座標軸 2 の引張応力(Yt): 局部座標軸 2 の許容引張応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部平面 1-2 のせん断応力: 局部平面 12 の許容せん断応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 応力の相互作用 F12 (Tsai-Wu): 応力の相互作用 F12 は、Tsai-Wu 理論にのみ使用する破壊判定基準の特性です。等二軸テストによって決定されます。数値安定性に関しては、条件
を満たす必要があります。
- コア破壊(Zc): 薄板が曲がっていると 1 つのサーフェスが引張側、他方が圧縮側となり、この 2 つの応力(上部と底部)の垂直成分によってコア層(薄層)の破壊が生じます。コア破壊の許容幅は、コア材料が破壊される前に生じ得る許容応力となります。最大応力破壊理論と厚肉複合材要素にのみ適用されます。正の値を入力します。
- 平面 13 の許容横せん断応力(S13): 平面 13(要素に垂直)の許容横せん断応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。最大応力破壊理論と厚肉複合材要素にのみ適用されます。
- 平面 23 の許容横せん断応力(S23): 平面 23(要素に垂直)の許容横せん断応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。最大応力破壊理論と厚肉複合材要素にのみ適用されます。
許容ひずみ
最大ひずみ破壊判定基準が指定されている場合は、許容ひずみが必要です。破壊判定基準と破壊を定める方程式を選択する際の詳細については、「厚肉複合材要素」と「薄肉複合材要素」を参照してください。
- 局部座標軸 1 の圧縮ひずみ(T1c): 局部座標軸 1 の許容圧縮ひずみは、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。正の値を入力します。
- 局部座標軸 1 の引張ひずみ(T1t): 局部座標軸 1 の許容引張ひずみは、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部座標軸 2 の圧縮ひずみ(T2c): 局部座標軸 2 の許容圧縮ひずみは、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。正の値を入力します。
- 局部座標軸 2 の引張ひずみ(T2t): 局部座標軸 2 の許容引張ひずみは、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部平面 1-2 のせん断ひずみ: 局部平面 12 の許容せん断応力は、複合材要素解析のさまざまな破壊判定基準に使用する材料特性です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
曲げコントロール
既定では、曲げ特性は弾性特性によって計算されます。曲げ特性に特定の値を使用する場合は、[曲げヤング率]チェック ボックスを有効化し、次の材料特性を入力します。
- 局部座標軸 1 の曲げヤング率: 局部座標軸 1 の曲げヤング率は、局部座標軸 1 方向における比例限界までのモーメント曲率曲線の勾配です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部座標軸 2 の曲げヤング率: 局部座標軸 2 の曲げヤング率は、局部座標軸 2 方向における比例限界までのモーメント曲率曲線の勾配です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部平面 12 の曲げポアソン比: 曲げポアソン比は、局部座標軸 1 方向の曲率対局部座標軸 2 方向の曲率の比率です。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。
- 局部平面 12 のねじり剛性: 局部平面 12 のねじり剛性は、せん断ヤング率に相当します。値を入力しない場合、曲げヤング率と曲げポアソン比によって値が計算されます。この材料特性は厚肉、薄肉双方の複合材要素に適用できます。