誘導加熱シミュレーションのガイドライン

誘導加熱シミュレーションから得られる結果は、解析を設定する際の注意に大きく依存します。

• 誘導加熱をAutodesk Moldflow Insightでシミュレーションする場合、金型全体の金型材料を指定する必要があります。誘導ソリューションの精度は、金型の相対的な透磁率と電気抵抗に完全に依存しているためです。また、熱伝導率、密度、および比熱も指定する必要があります。テクノロジの利点をフルに得るには、誘導加熱に対して特定の金型材料のみを使用します。通常の金型材料は磁気が高くなく、誘導加熱の用途であまり効果を発揮しません。
• 成形品の表面で最適な誘導加熱を得られるように、誘導コイルを含めた金型全体の正確な形状を正確にモデリングします。誘導加熱は、金型全体の形状、およびさまざまな磁気特性の金型内に適切に配置したインサートに依存します。通常、誘導加熱金型には、表皮効果を高めるために、成形品に接触するニッケルベースのインサートがあります。金型形状と材料の選択を正確に行うことができれば、金型の誘導加熱を大きく効率化できます。

• 誘導加熱は、表皮効果のみに依存します。表皮効果は、金型の材料特性と交流電流の周波数によって左右されます。メッシュ生成前に、金型内のすべてのボディの表皮効果の厚さを計算する必要があります。メッシュ サイズは、メッシュ生成する各インサートまたはボディの厚さサイズまたはそれ以上のサイズに設定する必要があります。要素の高さが少なくとも表皮厚さの 1/3 になるように、強化レイヤーをインサートに配置します。これらのルールに従えば、表皮厚さで生じる熱を完全にキャプチャでき、非常に正確なソリューションが実現します。

• 表皮効果のため、誘導加熱シミュレーションはメッシュ サイズに非常に敏感です。選択した周波数とメッシュ サイズは相互に依存しています。周波数がメッシュ サイズに対して大きすぎる場合、連立方程式は対角優位ではなくなり、マトリックスが不適切になります。不適切なマトリックスは解決せず、解析はエラーで終了します。このような場合、メッシュをより細かくする必要があります。周波数を下げると、マトリックスは対角優位になります。ただし、これは、金型設計仕様に適合しない可能性があります。
• シミュレーション環境で、誘導コイル CAD ボディのプロパティを[誘導コイル(3D)]に設定します。 このコイルの低および高電位端子は、境界条件として設定されます。高電位端子で、端子に適用するソース電流または端子に適用する電圧を指定します。誘導コイル (3D)ボディ自体のコイルに適用する交流電流の周波数を設定します。
• 誘導加熱では、電流の強さは金型が加熱される電力量を決定付けます。周波数が高いほど、表皮厚さが薄くなります。つまり、周波数が高いと、表皮厚さはボディの残りの部分より速く、高温に加熱されます。周波数が低い場合、周波数が高いときに比べて、表皮厚さがより厚い領域はゆっくり加熱され、温度もより低いです。設計段階で適切に適用すれば、急速に加熱および冷却する用途でこの現象を大いに役立てることができます。成形品に接触する金型の薄い領域は、加熱の対象にすることができ、その結果、金型の残りの大部分が射出成形サイクル全体にわたって非常に冷たい状態のままであり、プロセスの冷却段階が軽減されます。
• コイルを定義し、境界条件と周波数を設定し、金型を適切なメッシュ サイズにメッシュ生成したら、解析を開始できます。ソルバーは、冷却解析の開始時にマクスウェル方程式を解いて、ジュール熱を計算してメモリに保存します。マクスウェル方程式を解いたあと、通常の冷却(FEM)解析が実行されます。ヒーターがシミュレーションでオンになっている場合、以前計算されたジュール熱はソース項として適用されます。ヒーターをオフにすると、ソース項は解析で無視されます。