比較する目的で線形弾性解析を実行します。
Abaqus には、マルチレイヤ複合材料のレイアップを使用できる 3D 連続体要素(C3D8R など)が用意されています。6 つの応力成分(σ11、σ22、 σ33、σ12、σ13、 σ23)すべてを明示的に考慮する連続体要素を使用することで、従来または連続体シェル要素では無視される(または近似化のみ)横方向の応力成分(σ33、σ13、 σ23)を材料の破損基準で確実に使用できます。横方向の応力成分を明示的に考慮する重要性について説明するために、モデルの最も応力が高い領域の横方向の応力成分と面内の大きさを比較できるように、単純な線形弾性解析を実行します。
EP1_linear_elastic_solid.inp
下図では、複合材料の円錐形のアクセス ドアの左上コーナー近くの外側サーフェス層内の点における応力状態を示しています。繊維の構成破損基準は、3 つの応力成分(σ11、σ12、σ13)によって異なります。さらに詳しく確認すると、横方向せん断応力(σ13)は、面内応力と比較して無視できる程度であることが分かります(たとえば、σ13 がσ11 の 0.1% のみ)。このことは、横方向応力が繊維破損にあまり影響しないことを示します。一方、母材の構成破損は、6 つすべての応力成分によって促進されます。面外応力の大きさ(σ33、σ13、σ23)と面内応力の大きさ(σ22、σ12)を比較すると、面外応力が母材の破損基準に大きな影響を与えることが分かります。構造の破損を正確に予測するには、母材破損を適切に捉える必要があります。これは、母材破損イベント後、母材構成の剛性が低減し、応力の再分配により繊維内の応力が増加するためです。
大規模な複合材料構造の特定の領域にある横方向応力は無視できないため、可能な限りソリッド要素を使用することをお勧めします。この点については、ソリッド要素と連続体シェル要素を比較する後のセクションで説明します(「進行性破損応答の要素タイプの影響」を参照)。