線形弾性解析における破損の開始の予測を比較します。
Abaqus Standard では、線形弾性解析で 5 つの破損基準を使用できます。4 つの応力に基づいた基準と 1 つのひずみに基づく基準があります。これらの線形弾性の破損基準は、ローカルの破損により生じる結果ではなく、ローカルの破損の開始のみを予測するため、実用的に使用することはかなり制限されます。言い換えると、Abaqus 破損基準の 1 つが破損の発生を予測した場合、それに付随する剛性低減がありません。したがって、荷重再分布および進行性破損のプロセスが存在しません。対照的に、Helius PFA はローカルの破損を予測するだけではなく、ローカルの剛性低減も予測します。さらに対照的なのは、Abaqus 線形弾性の破損基準は、均質化された複合材料の破損を予測するために、均質化された複合材料の応力またはひずみ状態を使用しますが、Helius PFA では各構成材料の破損を個別に予測するために、構成の平均応力を使用します。
この例題では、複合材料の円錐がグローバルな破損の前に、線形弾性があると仮定できます。この点において、Helius PFA で予測される破損の開始を、Abaqus の異なる破損基準で予測される破損の開始と比較できます。Abaqus の破損基準は通常、直交異方性材料に適用できますが、この例題のために、横等方性材料モデルを、Abaqus 破損基準および Helius PFA に使用します。Abaqus の線形弾性の破損基準の短所の 1 つは、平面応力の仮定条件に完全に基づいていることです。そのため、これらは平面応力 2D 連続体要素またはシェル要素でのみ使用できます。Helius PFA では該当する破損基準内で一般的な 3D 応力状態を使用しますが、ここでは、Abaqus 線形弾性の破損基準の制限に対応するため、連続体シェル要素(SC8R)を比較に使用します。
複合材料の積層の場合、積層の破損は最初の層の破損と見なされます。簡潔化するために、Abaqus 最大応力と Tsai-Wu の破損基準(応力に基づく破損基準)を、Helius PFA のMCT 破損基準と比較します。最大応力と Tsai-Wu の破損基準定式化の詳細については、『Abaqus 解析ユーザ マニュアル』の 18.2.3 セクションを参照してください。
EP1_SC8R.inp
EP1_stressBasedFailure.inp
下のプロットは、0° の荷重適用点に対する、荷重-垂直変位曲線を示しています。グローバルな破損(72%)に到達する前に、どちらの方法も全体的な構造剛性に関して類似した予測をしています。Abaqus で利用可能な線形弾性材料の破損基準を使用した場合、材料の剛性劣化は考慮されません。したがって、破損解析は、ローカルの破損の開始が予測される時点までしか続行できません。Helius PFA の破損(母材または繊維の破損)した積分点での材料の剛性劣化機能により、ローカルの破損開始が最終的なグローバルな破損に進展するのを正確に捉える独自の機能を提供します。ここで重要な概念とは、複合材料構造では、ローカルの破損開始後も大部分の構造剛性が保持されるということです。最初の層を使用して破損を予測する設計では、往々にして大幅に控えめな予測となり、複合構造のフル機能が評価されません。これに加えて、Helius PFA では構造の破損後の動作も正確に説明できます。このような機能は Abaqus 破損基準では利用できません。