線形応答の管理

材料の線形および非線形応答の時間積分をコントロールします。

進行性破損モデルの解析は、線形部分と非線形部分に分割できます。材料の非線形性の観点では、これらの 2 つの部分の違いは材料破損にあります。線形部分は材料破損が存在しないことで特徴付けられるのに対して、非線形部分は材料破損が存在することによって特徴付けられます。損傷の伝搬を正確に解析するため、理想的には、線形部分では単一の増分を使用し、非線形部分では多数の増分を使用するべきです。これを念頭に置くと、解析の大部分は線形になることが多くなります。増分スキームによっては、解析時間の多くが解の線形部分を解決するために費やされていることを意味します。たとえば、次の荷重-時間プロットは、固定増分サイズを持つモデルの解析の線形部分と非線形部分を色分けしています。明らかに、増分の大部分は線形部分にあり、材料破損が開始するまで、この問題は線形であるため、この時間は本質的に無駄となります。

この問題を緩和するために、オートデスクでは解析の線形部分で費やす増分数を減らす一方で、非線形部分での固定増分サイズを可能とするツールを開発しました。このツールをアクティブにするには、HIN ファイル内に次のキーワードとデータ行を追加します。

*DAMAGE TIME STEP
DTIME

実際には、解析中は破損の発生が予測されるまで、*STATIC キーワードで定義される増分スキーム(Abaqus 入力ファイル内)が使用されます。破損が予測されたら、Abaqus は以前に収束した増分に戻り、増分サイズとして DTIME で指定された値を使用します。損傷が発生するまで増分サイズは増加することができ、その後、増分サイズは DTIME の値で固定されます。このツールの使用方法の一例として、次の *STATIC および *DAMAGE TIME STEP カードを検討してください。

Abaqus 入力ファイル:

*STATIC
0.1, 1.0, 1.0e-05, 0.1

HIN ファイル:

*DAMAGE TIME STEP
0.005

初期増分サイズと最大増分サイズが 0.1 であるため、Helius PFA で破損が予測されるまで、増分サイズは 0.1 に固定されたままになります。破損が予測されると、解析は以前に収束した増分に縮小し、開始増分サイズ 0.005 を使用して進行します。破損が発生すると、解析の残り部分の増分サイズは 0.005 に固定されたままとなります。0.005 という固定増分サイズを解析全体で使用する代わりに、線形部分では比較的大きな増分サイズを使用し、非線形部分では 0.005 を使用します。線形部分で費やす増分数を減らすことにより、全体的な実行時間が大幅に削減されます。上記のシナリオを、次に示す .sta ファイル例に示します。

*DAMAGE TIME STEP キーワードは材料の非線形性は管理しますが、接触または形状の非線形性などのその他の形式の非線形性は管理しません。しかし、Abaqus は接触および形状の非線形性を管理するため、これら 3 つの非線形性の形式はすべて競合することなく、*DAMAGE TIME STEP キーワードを使用できます。