複合材料を定義するには、HELIUS コマンドを使用します。
ANSYS 入力ファイルには、Helius PFA ユーザ定義の複合材料をまとめて定義する 1 つのコマンドがあります。そのコマンドは HELIUSPFA です。ユーザ定義の複合材料を完全に指定する、ANSYS 入力ファイルからの次の行を検討してください。
HELIUSPFA, MATID, NSTATV, UNITS, PFIB_DIR, PFA, PREFAIL, unused, PRESS, TEMP,FAIL_CRITERION,AUX_1,AUX_2,unused, MDEG, FDEG, MOISTURE
HELIUSPFA コマンドの例は次のようになります。
HELIUSPFA,9007,7,1,1,1,0,,,650,0,,,,0.01,0.01,2
HELIUSPFA コマンドは、Helius PFA マクロを呼び出し、HELIUSPFA コマンドの一部として提供される引数がそのマクロに渡されます。どの Helius PFA 材料でも、引数の数は 5 ~ 16 の範囲内である必要があります。最初の 5 つの引数は、Helius PFA のすべての材料で必要です。引数 7 および 13 は未使用で、空白にしておくか、0 (ゼロ)に設定する必要があります。「付録 A」には各引数の詳細な説明があり、各引数の許容値の範囲、各材料を表すために使用するマルチスケール構成関係に各引数が与える影響などを参照できます。次の表に各引数と簡単な説明を示します。特定の引数の詳細な説明については、「付録 A」の該当セクションを参照してください。
MATID: この 1 番目の引数では、Helius PFA 材料に関連付けられた材料参照番号を指定できます。この製品を ANSYS 向けにインストールしている場合は、HPFAMatDB.xml ファイルが %AUTODESK_DIR%\Materials フォルダ(C:\Program Files\Autodesk\Helius PFA 2018\Materials など)に作成されます。このファイルの目的は、材料参照番号(MATID)を %AUTODESK_DIR%\Materials フォルダに格納されている材料名にリンクすることです。Helius PFA とともにインストールされる複合材料の材料参照番号は、このファイル内に既に含まれています。
Composite Material Manager を使用して新しい材料ファイルを作成すると、HPFAMatDB.xml ファイルは新しい材料を追加するように自動的に更新され、材料 ID 番号が割り当てられます。ただし、材料ファイルを手動でコピーして編集した場合は、材料参照番号(MATID)と新しく作成された複合材料名間に新しいリンクを追加するように、HPFAMatDB.xml ファイルを更新する必要があります。HPFAMatDB.xml ファイルをテキスト エディタまたはインターネット ブラウザを使用して開くと、次の内容が示されます。
<?xml version="1.0"?>
< HPFAMatDB>
<Material id="9001" name="AS4-3501-6"/>
<Material id="9002" name="AS4_3502"/>
<Material id="9003" name="AS4_8552"/>
<Material id="9004" name="AS_Epoxy1"/>
<Material id="9005" name="Eglass21xK43Gevetex-LY556"/>
<Material id="9006" name="HTS150_TC250"/>
<Material id="9007" name="IM7-977-2"/>
<Material id="9008" name="IM7_5250-4"/>
<Material id="9009" name="IM7_8551"/>
<Material id="9010" name="IM7_8552"/>
<Material id="9011" name="IM7_977-3"/>
<Material id="9012" name="S2\_Glass\_Epoxy2"/>
<Material id="9013" name="SilEglass1200tex-MY750"/>
<Material id="9014" name="T300-BSL914C"/>
<Material id="9015" name="T300_976"/>
<Material id="9016" name="T300_PR319"/>
<Material id="9017" name="T800H_3900-2"/>
</ HPFAMatDB>
新しく作成した材料ファイルと ANSYS 材料参照番号間にリンクを追加するには、この 2 つの項目をリンクする行を追加するために、既存のファイルの形式をコピーします。たとえば、新しく作成された材料ファイルを example_composite_material として保存した場合は、ファイルを次のように変更します。
<?xml version="1.0"?>
<HPFAMatDB>
<Material id="9001" name="AS4-3501-6"/>
<Material id="9002" name="AS4_3502"/>
<Material id="9003" name="AS4_8552"/>
<Material id="9004" name="AS_Epoxy1"/>
<Material id="9005" name="Eglass21xK43Gevetex-LY556"/>
<Material id="9006" name="HTS150_TC250"/>
<Material id="9007" name="IM7-977-2"/>
<Material id="9008" name="IM7_5250-4"/>
<Material id="9009" name="IM7_8551"/>
<Material id="9010" name="IM7_8552"/>
<Material id="9011" name="IM7_977-3"/>
<Material id="9012" name="S2\_Glass\_Epoxy2"/>
<Material id="9013" name="SilEglass1200tex-MY750"/>
<Material id="9014" name="T300-BSL914C"/>
<Material id="9015" name="T300_976"/>
<Material id="9016" name="T300_PR319"/>
<Material id="9017" name="T800H_3900-2"/>
<Material id="9018" name="example\_composite\_material"/>
</HPFAMatDB>
値 9018 は HELIUSPFA コマンドの最初の引数として使用され、材料「example_composite_material」を使用するように Helius PFA に指示します。
NSTATV: この 2 番目の引数は、有限要素モデルの各積分点で追跡する必要のある、解に依存する MCT 状態変数(SVAR)の数を指定するために使用されます。解に依存する MCT 状態変数の数は、構成の平均応力とひずみ、および複合材料(一方向または織物)のミクロ構造にアクセスを希望するかしないかよって異なります。この引数の許容値は、一方向材料では 7 または 35 で、織物材料では 7 または 91 です。構成の平均応力とひずみにアクセスを希望しない限り、7 個の状態変数を要求する必要があります。この場合は、一方向材料では 35 個の状態変数、織物材料では 91 個の状態変数を要求する必要があります。
単位系: この 3 番目の引数は、構成関係と応力の計算に使用するべき単位系を指定します。上記の例では、3 番目の引数の値は 1 で、構成関係と応力を既定の単位系(N/m/K)で計算する必要があることを示します。この他に 3 つの単位系があり(2 -> N/mm/K、3 -> lb/in/°R、4 -> lb/ft/°R)、最初の引数に特定の値を指定して要求することができます。また、5 の値を使用して指定するカスタム(ユーザ定義)の単位系もあります。カスタム単位系セットの作成手順については、「HIN ファイル」セクションを参照してください。
PFIB_DIR: Helius PFA では、複合材料の主要材料座標系で構成関係を示し、応力を計算します。この 4 番目の引数は、ソフトウェアによって使用される主要材料座標系の特定の方向を指定します。
PFA: この 5 番目の引数は、進行性破損解析機能をアクティブまたは非アクティブにします。進行性破損機能をアクティブにした場合、Helius PFA は定期的に母材と繊維の破損基準の両方を評価し、これらの構成材料が破損していないかを判断します。各構成の破損基準は、対応する構成の平均応力状態に基づいています。構成の一方または両方が破損した場合、破損した構成の剛性および複合材料の剛性は、それぞれの破損後の剛性にまで適切に低減されます。
PREFAIL (オプション): 6 番目の引数は、破損前非線形性機能をアクティブまたは非アクティブにします。1 の値で破損前非線形性機能がアクティブになり、既定値の 0 (ゼロ)では破損前非線形性機能が非アクティブになります。破損前非線形性機能をアクティブにした場合、Helius PFA では通常、一方向繊維強化複合材料に発生する非線形の縦方向せん断応力/ひずみ応答を明示的に考慮します。破損前非線形性機能は、母材構成材料の縦方向せん断剛性で一連の個別の低減を引き起こし、複合材料の非線形縦方向のせん断応答が実験測定データとよく一致するようになります。破損前非線形性機能は、複合材料の縦方向せん断弾性率にのみ影響を与えます(つまり 対 、および 対 )。他の 4 つの複合材料の応力とひずみ成分の応答は、この機能によって影響は受けないことに留意してください。また、破損前非線形性機能によって、複合材料破損時のせん断応力レベルは変更されませんが、破損前の複合材料の縦方向せん断変形が全体的に増加する結果となります。
引数 7 は未使用です。
PRESS (一方向複合材料のみのオプション): この 8 番目の引数は、静水圧による強化機能をアクティブまたは非アクティブにします。1 の値で静水圧による強化機能がアクティブになり、0 (ゼロ)の値で静水圧による強化機能が非アクティブになります。静水圧による強化機能をアクティブにした場合、Helius PFA では、実験で観察される静水圧縮応力の存在による複合材料の強化を明示的に考慮します。母材構成の静水圧縮応力がしきい値を超えている場合は、母材構成と繊維構成両方の強度は、母材構成内の静水圧縮応力レベルに等しいレベルまで増加されます。
TEMP: この 9 番目の引数は、解析で使用する材料データ ファイル(mdata ファイル)の環境に対応する温度値を指定するために使用されます。 たとえば、mdata ファイルに 600、650、700 R という特性の環境がある場合、9 番目の引数値は 650 となり、650 R に格納されている特性が解析に使用されます。温度値を含水率フラグ(引数 16)と一緒に使用して、解析に使用する環境を完全に指定します。mdata ファイルに 1 組の特性が含まれている場合、9 番目の引数を空白にしておくことができます。
9 番目の引数値を -1.0 に設定すると、温度依存機能がアクティブになります。温度依存をアクティブにした場合、Helius PFA では材料ファイルに保存している最低/最高温度点の境界内にある任意の温度に対して、複合材料と構成の特性を線形補間します。保存している最低温度データムより低い温度には、最低温度データムで保存されている材料特性を使用します(保存している温度データ点の境界を超えて特性を外挿することはありません)。保存されている最高温度データムより高い温度も同様に処理されます。温度依存材料特性の使用の詳細については、「理論マニュアル」を参照してください。
FAIL_CRITERION: この 10 番目の引数は、複合材料の破損開始の評価に使用する基準を指定します。一方向複合材料に有効な値は次のとおりです。
-1. ユーザ
0. MCT
1. 最大応力
2. 最大ひずみ
3. Tsai-Hill
4. Tsai-Wu
5. Christensen
6. Hashin
7. Puck
8. LaRC02
織物複合材料の基準フラグに使用できる値は次のとおりです。
-1. ユーザ
0. MCT
1. 最大応力
2. 最大ひずみ
AUX1: この 11 番目の引数は、一部の補助破損基準パラメータを指定します。Tsai-Wu を選択した場合、この定数はクロス積項、f* を表します。Hashin を選択した場合、この定数は縦方向せん断応力の繊維破損基準、α への寄与を表します。
AUX2: この 12 番目の引数は、一部の補助破損基準パラメータを指定します。Tsai-Wu を選択した場合、この定数は破損時のオプションの等二軸応力(σ11 と σ22 の組み合わせ)を表します。 この値が不明の場合は、ゼロのままにしておくことができます。
引数 13 は未使用です。
MDEG: この 14 番目の引数は、母材構成の破損が発生した後の、母材構成の損傷したヤング率の定義に使用される割合です。具体的には、この値は破損した母材構成係数と破損していない母材構成係数との比率です。0.1 の値は、積分点で母材破損が発生した後、6 つの母材構成係数(、、、、、)がすべて元の損傷していない母材構成係数の 10% にまで低減することを指定します。母材破損後剛性値は 0 (ゼロ)より大きく、1 以下である必要があります。14 番目の引数が指定されていない場合は、0.1 の既定値が仮定されます。
FDEG: この 15 番目の引数は、繊維構成の破損が発生後の、繊維構成の損傷したヤング率の定義に使用される割合です。具体的には、この値は破損した繊維構成係数と破損していない繊維構成係数との比率です。0.01 の値は、積分点で繊維破損が発生した後、6 つの繊維構成係数(、、、、、)がすべて元の損傷していない繊維構成係数の 1% にまで低減することを指定します。繊維破損後剛性値は 0 (ゼロ)より大きく、1 以下である必要があります。15 番目の引数が指定されていない場合は、1E-06 の既定値が仮定されます。
MOISTURE: この 16 番目の引数は、解析で使用する材料データ ファイル(mdata ファイル)の環境に対応する含水率フラグを指定するために使用されます。 この引数の値は、、[環境]には 0 (ゼロ)、[乾性]条件には 1、[湿潤]条件には 2 を設定する必要があります。たとえば、mdata ファイルに[環境]、[乾性]、[湿潤]という特性の環境があり、16 番目の引数値を 1 に設定した場合、[乾性]含水率特性が解析に使用されます。含水率フラグを温度値(引数 9)と一緒に使用して、解析に使用する環境を完全に指定します。mdata ファイルに 1 組の特性が含まれている場合、16 番目の引数を空白にしておくことができます。