危険な状態になるローラ チェーンの振動数

励振源の振動数がローラ チェーンの固有振動数に近づくと、チェーンは見て分かるほどに振動します。状況によっては、激しい振動のためにチェーンあるいはチェーン ドライブが損傷します。主な励振源は、大きな循環荷重、弦運動、およびローラと歯の衝突です。

理解を助けるため、チェーンの固有振動数は駆動スプロケットの速度に置き換えられます。これを危険速度といいます。駆動スプロケットの速度が危険速度に近づくと振動が発生します。駆動スプロケットの危険速度の間隔は次の式で求めます。

ここで

 

n C

駆動スプロケットの危険速度[rpm]

 

n

駆動スプロケットの実際の速度[rpm]

 

Δ n

危険速度の制限値[-]

横振動

横振動では、チェーンは弾かれた弦のように上下に振動します(両軸を同一水平面に置いたレイアウトの場合)。これは最も分かりやすい、最も頻繁に発生する振動です。横振動の固有振動数は高くありません。多角形効果および大きな循環荷重による励振だけで、共振による破壊的な振動が発生する可能性が十分にあります。チェーン ドライブのすべてのスパンについて横振動が計算され、現在の駆動スプロケットの速度と比較されます。

チェーン ドライブの各スパンでの、横振動を発生させる駆動スプロケット危険速度は、次の計算式で求められます。

ここで

 

n cL

横振動の固有振動数に対応する駆動スプロケット危険速度[rpm]

  λ

振動の調和を表す整数[-]

 

L T

チェーン スパンの長さ[m]

 

F T

チェーン スパンの張力[N]

 

f TZ

歯数係数[-] (z 1 < 18 の場合は f TZ = 1.2、それ以外は f TZ = 1.1)

 

z 1

駆動スプロケットの歯数[-]

 

m

チェーンの固有質量[Kg/m]

波状振動

波状振動では、チェーンはゴムが伸縮するように、長手方向に振動します。通常、波状振動は目には見えません。波状振動はチェーンに非常に大きな張力をかけ、早期の破断を助長します。歯接触頻度がチェーンの 2 番目の緩和固有振動数と一致すると、破壊的な波状振動が発生することがあります。

チェーン ドライブの各スパンでの、波状振動を発生させる駆動スプロケット危険速度は、次の計算式で求められます。

ここで

 

n cW

波状振動の固有振動数に対応する駆動スプロケット危険速度[rpm]

  λ

振動の調和を表す整数[-]

 

L T

チェーン スパンの長さ[m]

 

z 1

駆動スプロケットの歯数[-]

 

c

チェーンの剛性[N/m]

 

m

チェーンの固有質量[Kg/m]

     

軸方向またはばね状の振動

軸方向の振動では、チェーンは 2 つのローターにはさまれたばねのように挙動します。この振動は目には見えませんが、共振によりノイズが発生するため、音で分かることがあります。大きな循環荷重の衝撃だけで、共振による破壊的な振動が発生する可能性が十分にあります。

多角形効果による駆動スプロケット危険速度

外周振れによる駆動スプロケット危険速度

不正確なチェーン リンク ピッチによる駆動スプロケット危険速度

ここで

 

n cAca

多角形効果による駆動スプロケット危険速度[rpm]

 

n cAcr

外周振れによる駆動スプロケット危険速度[rpm]

 

n cAip

不正確なチェーン リンク ピッチによる駆動スプロケット危険速度[rpm]

 

z 1

駆動スプロケットの歯数[-]

 

c

チェーンの剛性[N/m]

 

D 1

入力スプロケットのピッチ円直径[-]

 

D 2

出力スプロケットのピッチ円直径[-]

 

I 1

入力スプロケットに関連する回転慣性モーメント[kg m 2 ]

 

I 2

入力スプロケットに関連する回転慣性モーメント[kg m 2 ]