ダイナミック シミュレーション設定を選択するには

これらのオプションは、設定後、変更されるまでダイナミック シミュレーションの動作に影響を及ぼします。オプションの設定は、[ダイナミック シミュレーション]を開いた直後に行います。

  1. リボンで[環境]タブ [開始]パネル [ダイナミック シミュレーション]の順にクリックして、[ダイナミック シミュレーション]パネルを表示します。
  2. 次に、[ダイナミック シミュレーション]タブ [管理]パネル [シミュレーション設定] の順にクリックします。
  3. 自動ダイナミック シミュレーション コンバータ(拘束削減エンジン、CRE)をオンに設定するには、[拘束を標準ジョイントに自動変換]をクリックします。

    既定はオンです。

    [OK]をクリックすると、CRE は自動的に アセンブリ拘束 を標準ジョイントに変換し、次回この機構を開いたときに、変換されたジョイントを更新します。

  4. 機構が過剰に拘束されているときに警告を受け取るようにするには、[機構が過剰に拘束されたときに警告]をクリックします。

    これは新しい機構では既定ですが、バージョン 2008 以前に作成された機構では既定でオンにはなりません。このオプションをオンにすると、機構が過剰に拘束されている場合、[OK]をクリックしたときに、標準ジョイントの自動作成前にメッセージが表示されます。

  5. さまざまな可動グループに含まれるコンポーネントを視覚的に示したい場合、[カラー可動グループ]チェック ボックスをオンにします。あらかじめ定義されたカラー オーバーライドが、同じ可動グループ内のコンポーネントに割り当てられます。このオプションはコンポーネントの関係を解析するのに役立ちます。コンポーネントを標準で割り当てられた色に戻すには、[設定]ダイアログ ボックスのチェック ボックスをオフするか、または[可動グループ]のノードを右クリックして、[カラー可動グループ]を選択します。
  6. 機構の実際の位置を変更せずにすべての自由度の初期位置を 0 に設定する場合は、[すべての初期位置を 0.0 へ]をクリックします。

    これは、出力グラフに 0 から始まる可変プロットを表示するのに便利です。

  7. すべての座標系を、 ジョイント座標系 を構成する際に所定の初期位置にリセットするには、[すべてリセット]をクリックします。

    この設定は既定です。

  8. AIP 構造解析で解析するすべての FEA 情報を準備するには、 [AIP 構造解析] をクリックします。

    この機能により、FEA に関連するデータが、選択したパーツのパーツ ファイルに保存されます。

  9. 代わりに、ANSYS にエクスポートするすべての FEA 情報を含むファイルを準備するために、 [ANSYS シミュレーション] をクリックします。

    この機能により、FEA に関連するデータが、ANSYS で読み取り可能なファイルに保存されます。

    • テキスト入力ボックスに、ANSYS にエクスポートする FEA 情報を格納するファイルの名前を入力します。
    • または、テキスト入力ボックスの横のボタンをクリックして、既存のファイルを指定するか、ファイルを作成します。

      既存のファイルを選択した場合は、ファイル内の現在のデータがすべて上書きされます。

      注: Ansys Workbench バージョン 10 または 11 を使用する場合は、さらにファイルを修正する必要があります。テキストファイルを開き、「慣性状態」と表示されたセクションを検索します。このセクションには、削除する線分が 2 本あります。線分は「固定された」ものと関連コード 0 または 1 で、線分の後に表示されます。
  10. 他のプロパティを表示するには、 [詳細]をクリックします。
  11. AVI の著作権情報を入力して表示するには、[AVI の著作権を表示:]チェック ボックスをオンにし、テキスト入力ボックスに著作権情報を入力します。
  12. 角速度(rpm)を入力する場合は、[角速度を毎分回転数(rpm)で入力]チェック ボックスをオンにします。

    ただし、出力の単位は、空のアセンブリ ファイルを選択したときに指定した単位になります。

  13. グラフィックス ウィンドウでアセンブリ座標系の 3D フレームの Z 軸の長さを設定する場合は、そのパーセンテージ値を[Z 軸のサイズ:]テキスト ボックスに入力します。

    既定では、Z 軸のサイズは境界領域の対角線の 20 % になります。

  14. [OK]または[適用]をクリックします。

    どちらでも設定は保存されますが、[OK]をクリックした場合は同時にこのダイアログ ボックスが閉じます。

マイクロ メカニズム モデル

このオプションは、小質量プロパティを持つ機構で使えるように設計されています。

標準モードでは、質量または慣性が 1e-10kg 未満または 1e-16 kg.m2 未満の場合、計算に失敗します。その場合、動的方程式はガウス プロシージャで解が求められ、精度が 1e-10 に設定されます(この値未満では、ピボットが 0 に設定されます)。

[マイクロ メカニズム モデル]がアクティブになっているときは、質量または慣性が 1e-20 kg および 1e-32 kg.m2 より大きい値である必要があります。ガウス精度は 1e-32 に設定されます。

このオプションをどのような場合に使用したらよいかを判断するには、ジョイント座標系にある質量プロパティをチェックします。

例 1

 
最小パーツの質量 m = 6.5e-9 kg、主慣性 Ixx = 1e-20 kg/m2、Iyy = 1e-20 kg.m2 (ただし、Izz >慣性限度 = 1e-10 kg.m2)である機構があるとします。
 
  • このパーツが Z 軸に沿った回転 DOF のみを持つ場合、Izz > 慣性限度 = 1.0e-10 kg.m2 となるため MM モードは必要ありません。
  • このパーツが移動 DOF のみを持つ場合
重要: [マイクロ メカニズム モデル]は、小さな機構をシミュレートするときにしかアクティブにしないでください。同時に、アセンブリ精度を小さなパーツ用に最適化されるように変更する必要があります。詳細については、「アセンブリ精度」を参照してください。

アセンブリ精度

閉じたループと 2D 接触の場合にのみ適用可能です。

2D 接触: 接触点間でオーソライズされた最大距離を定義します。既定値は 1e-6m = 1μm です。

閉じたループ: 2D 接触と同じですが、ジョイント タイプに応じた角度拘束(表記単位: ラジアン)も含めることができます。

アセンブリ精度の修正

アセンブリ精度パラメータの修正が推奨されるのは、次の場合です。

重要: 1e-12 未満のアセンブリ精度は適用しないでください。この場合、値が追加されず、シミュレーションに問題が生じる可能性があります。

ソルバ精度

動的方程式は、5 次のルンゲ クッタ積分スキームを使用して積分されます。積分誤差とタイム ステップは、確実に受け入れられるように、次のように管理されています。

積分誤差は、ルンゲ クッタ公式の特定のプロパティを使用して推定されます。これにより、位置 p と速度 v を 5 次(各べクトル表記は p5 および v5)、および 4 次(べクトル表記は p4 および v4)まで簡単に計算できます。さらに、位置と速度に対しては、積分誤差を次式のように定義します。

 

Integ_error_position = norm(p5 - p4)

Integ_error_velocity = norm(v5 - v4)

ここで、norm は特別なノルムを示します。

 

手順が受け入れられた場合、次の関係が存在します(メートル単位)。

 

Integ_error_position = norm(p5 - p4) < Atol + | p5 | Rtol

Integ_error_velocity = norm(v5 - v4) < Atol + | v5 | Rtol

 

ここで

  Atol Rtol

移動自由度

ソルバ精度

既定 = 1e-6

最大値なし

ソルバ精度

既定 = 1e-6

最大値なし

回転自由度

ソルバ精度1e3

既定 = 1e-3

最大値 = 1e-2

ソルバ精度1e3

既定 = 1e-3

最大値 = 1e-2

このプロセスを例証するために、次の例を考察しましょう。

例 1: 相対誤差 Rtol の例証

ジョイント タイプ: 位置と速度を持つスライダ ジョイント 1

 

p[1] = 4529.289768 m

v[1] = 18.45687455 m/s

ソルバ精度が 1e-6(既定)に設定されている場合、計算結果は 6 桁まで保証されます。

 

p[1] = 4529.28 m

v[1] = 18.4568 m/s

ソルバ精度が 1e-8 に設定されている場合、8 桁が保証されます。

 

p[1] = 4529.2897 m

v[1] = 18.456874 m/s

例 2: Atol の相対誤差の例証

ジョイント タイプ: 位置と速度を持つスライダ ジョイント 1

 

p[1] = 0.000024557 m

v[1] = 0.005896476 m/s

ソルバ精度が 1e-6 (既定)に設定されている場合、計算結果は小数点以下 6 桁まで保証されます。

 

p[1] = 0.000024 m

v[1] = 0.005896 m/s

ソルバ精度が 1e-8 に設定されている場合、小数点以下 8 桁が保証されます。

 

p[1] = 0.00002455 m

v[1] = 0.00589647 m/s

同じ推論はピン ジョイントに対しても有効です。ただし、Atol および Rtol には、1e3 を掛けた同等なソルバ精度が適用されます。

例 3: Rtol の相対誤差の例証

ジョイント タイプ: 位置と速度を持つピン ジョイント 2

 

p[2] = 12.53214221 rad

v[2] = 21.36589547 rad/s

ソルバ精度が 1e-6 (既定)に設定されている場合、計算結果は 3 桁まで保証されます。

 

p[2] = 12.5 rad

v[2] = 21.3 rad/s

ソルバ精度が 1e-8 に設定されている場合、5 桁が保証されます。

 

p[2] = 12.532 rad

v[2] = 21.365 rad/s

ソルバ精度パラメータの修正が推奨されるのは、次の場合です。

重要: ソルバ精度はタイム ステップ サイズに直接リンクされています。ソルバ精度は、過度(たとえば、1e-12 未満)に減分しないでください。過度に減分すると、シミュレーション時間に著しく影響します。

キャプチャ速度

このパラメータは、オブジェクト間の衝撃シミュレーションに使用されます。このパラメータは、接触が一定になる前に発生する小さな跳ね返りの数を、ソルバが制限する上で役立ちます。衝撃モデルでは反発係数 e が使用されます。値はユーザが指定します。値の範囲は、0 ~ 1 です。計算結果の条件における値の取り扱いは、次のとおりです。

キャプチャ速度パラメータは、接触がアクティブつまり一定になる前に発生する小さな跳ね返りの数を、ソルバが制限する上で役立ちます。キャプチャ プロセスは、次のとおりです。

重要: 接触ステータス(e = 1)は、プログラムでは適用されません。接触ステータスは、アクティブなすべての接触で一貫性が維持されるように、ソルバ側で管理されます。一貫性の実現には、非線形 2 次方程式が使用されます。

パラメータの修正が推奨されるケース

このパラメータの修正が推奨されるのは、次の場合です。

調整速度

2D 接触には、実際の非線形クーロン摩擦則が使用されています。ジョイントおよび 3D 接触において、簡略化を図るとともに超弾性条件を回避する目的から使用されているのが正則化クーロン摩擦則であり、次のように例証できます。

正則化は、速度正則化パラメータによって駆動されます。

固定接触(または回転接触)のケースでは、このモデルを使用した場合、相対接線速度がゼロに等しいと接線荷重が null になります。

回転自由度におけるジョイント摩擦のケースでは、接線力が接線方向のトルク(単位: nm)で置換され、接線方向の相対速度は回転速度(単位: rad/s)になります。両方とも、接線力を乗算し、移動速度をジョイント半径で除算して、計算されます。

例 1

半径 10 mm のピン ジョイントを、10 rad/s と等価な一定速度 w で操縦します。20 N と等価な力(Fn)をジョイントの回転軸に垂直に適用し、摩擦係数(μ)を 0.1 に設定します。

この場合、ジョイントにおける摩擦トルク(Uf)の計算は、次式のようになります。

 

? = r * w = 0.01 * 10 = 0.1 m/s

? > 調整速度 = 0.001 m/s => Uf = -mu * r * Fn = -0.1 * 0.01 * 20 = -0.02 Nm

正則化クーロン グラフの tag 1 を参照してください。

例 2

ここでも同じ例を使用しますが、速度(w)が 0.05rad/s の場合、摩擦トルク(Uf)は次式で求められます。

 

? = r * w = 0.01 * 0.05 = 0.0005 m/sm

? > 調整速度 = 0.001 m/s => Uf ≈ -mu * r * Fn/2 = -0.1 * 0.01 * 20/2 = -0.01 Nm

正則化クーロン グラフの tag 2 を参照してください。

調整速度パラメータの修正が推奨されるのは、次の場合です。

数値検証

シミュレーション結果を解析する前に、シミュレーションが数値的に有効(数値パラメータへの感度が低い)かどうかを確認することが大切です。数値検証手順を実施するには、次の作業を行います。

  1. 一連の数値パラメータ(ソルバ精度、アセンブリ精度、キャプチャ速度、調整速度、およびタイム ステップ)を使用してシミュレーションを実行し、保存します。
  2. パラメータごとに、パラメータを 10 で除算し、シミュレーションを実行して保存します。
  3. 結果をすべて同じグラフに出力します。すべての結果が近似していれば、数値パラメータに対するシミュレーションの感度は低い状態です。それ以外の場合は、感度に問題があります。
  4. シミュレーションの感度が低い場合は、結果を解析することができます。
  5. 数値パラメータに対するシミュレーションの感度が高い場合は、結果曲線を使用して、問題のある数値パラメータを特定します。パラメータを 10 で除算し、その結果値を数値パラメータの名目上の値として適用します。検証を最初から再開します。時間を節約するためには、1 つのパラメータに対してのみ感度を検証するとよいでしょう。