図面は、デザインを効果的に伝達するために必要なジオメトリと、寸法、マルチ引出線、マルチ テキストなどの注釈で煩雑になることがあります。ジオメトリと注釈を追加すると、オブジェクトが互いに重なる可能性が高くなります。オブジェクトと注釈が重なると、見やすさが低下するとともに、デザインが混乱する可能性が大きくなります。図面の煩雑さを軽減し、注釈オブジェクトやブロック周りのジオメトリをトリムする必要から開放してくれる機能があります。
以下を実行することで、図面内の注釈やブロック周りの作業を軽減することができます。
- ワイプアウトを作成する
- マルチ テキスト オブジェクトに背景マスクの色を追加する
- 寸法線およびマルチ引出線をマスクする
注: ビデオに音声または字幕はありません。
注: 手順、イメージ、ビデオは、お使いのバージョンの製品と若干異なる場合があります。
ワイプアウトを作成する
ワイプアウトを使用すると、図面ウィンドウの背景色と一致する塗り潰し領域を定義することにより、その下にあるすべてのオブジェクトをマスクすることができます。ワイプアウトを作成するときは、閉じた領域を形成する点を指定するか、既存の閉じたポリラインを選択して、その境界を定義します。
ワイプアウト オブジェクトは、図面内に直接作成することも、ブロックの一部として作成することもできます。ブロックで使用すると、ブロックを通り抜ける可能性のあるジオメトリをトリムしたり削除したりする必要がなくなるため、時間の節約になります。たとえば、左側の図ではゲートバルブ記号を水平線が通り抜けています。右側の図ではワイプアウト オブジェクトを使用して水平線をマスクしています。トリムを実行したわけではありません。
次の手順では、ワイプアウト オブジェクトを作成する方法を示します。
- C:¥Program Files¥Autodesk¥AutoCAD <リリース>¥Sample¥Mechanical Sample フォルダから、サンプル図面 Mechanical - Data Links.dwg を開きます。
注: サンプル図面は読み込み専用として開かれます。サンプル図面ファイルに対する変更を保存する場合は、ファイルを開く前にドキュメント フォルダにコピーします。
- 次に示すように、空圧ゲート バルブ記号が表示されている領域の 1 つをズームします。
- バルブ記号の上下の線分を選択します。
線分がバルブ記号を通り抜けないように、既に線分がトリムされています。
- 2 本の線分を選択した状態で、[ホーム]タブ > [修正]パネル(展開) > [結合]をクリックします。 検索
2 本の線分が結合され、バルブ記号を通り抜ける単一の線分が形成されます。
- [注釈]タブ > [マークアップ]パネル > [ワイプアウト]をクリックします。 検索
- ステータス バーで[オブジェクト スナップ]をクリックするか[F3]を押して、[オブジェクト スナップ モード]をオンにします。
オンにすると、[オブジェクト スナップ]ボタンの背景色が青になります。
- [オブジェクト スナップ]ボタンを右クリックし、[端点]と[交点]の両方をオンにします(オフの場合)。
- 次の図に示す順序で、バルブ上の点にスナップして、ワイプアウト オブジェクトの点を指定します。4 点目を指定したら、[Enter]を押します。
注: ワイプアウトを作成する場合、点の指定順序は、ワイプアウトのフレームの外辺と、ワイプアウトがオブジェクトをマスクする領域に影響します。たとえば、前図の 1、4、2、3 の順序で点を指定すると、目的の蝶ネクタイまたは砂時計ではなく長方形になります。
ワイプアウトが作成された後、バルブ記号の下の線分がトリムされたように見えることに注目してください。
- ワイプアウトを作成した後、バルブ記号とワイプアウト オブジェクトを一緒に選択し、選択したオブジェクトを線分に沿って移動すると、ワイプアウトによって下の線分がどのようにマスクされるかを確認します。
注: バルブ記号とワイプアウト オブジェクトをグループ化したり、ワイプアウト オブジェクトをバルブ ブロックに追加したりして、オブジェクトの操作を容易にすることもできます。オブジェクトをグループ化する方法については、「
お試しください: グループ」を参照してください。
- [Ctrl]を押しながら上矢印キーまたは下矢印キーを数回押して、オブジェクトをその方向に少しずつ移動します。[Esc]を押して選択したオブジェクトを選択解除します。
ワイプアウト オブジェクトが原因で、記号の新しい位置に基づいて線分がトリムされたように見えます。
ヒント: ワイプアウト オブジェクトは、その下にあるオブジェクトを隠すだけです。目的の外観を得るために、ワイプアウト オブジェクトの重なる順序を調整する必要がある場合があります。これは、オブジェクトの表示順序の調整とも呼ばれます。DRAWORDER[表示順序]コマンドを使用して、ワイプアウト オブジェクトの表示順序を調整することができます。
不規則な形状のワイプアウト オブジェクトを作成する
曲線を使用してワイプアウトを作成することはできません。しかし、外観が曲線や円に見える多数の辺を持つポリゴンを作成し、WIPEOUT[ワイプアウト]コマンドの[ポリライン]オプションを使用してワイプアウトに変換することができます。
ポリラインをワイプアウトに変換する場合、元のポリラインを保持するオプションがあります。システム変数 WIPEOUTFRAME または FRAME によってワイプアウトが非表示になる場合に備えて、元のポリライン オブジェクトを保持しておくと便利です。
次に、ワイプアウトに変換したポリゴンの例を示します。ワイプアウトによって、椅子のシンボルの一部がテーブルの下に押し込まれているかのようにマスクされています。
次に、閉じたポリゴンから上記のテーブルを作成する手順を示します。
- [ホーム]タブ > [作成]パネル > [長方形]ドロップダウン メニュー > [ポリゴン]をクリックします。 検索
- プロンプト エッジの数を入力 <4>: に対して、32 と入力します。
- プロンプト ポリゴンの中心を指定 または [エッジ(E)]: に対して、[Enter]を押します。
- プロンプト オプションを入力 [内接(I)/外接(C)] <I>: に対して、[Enter]を押します。
- プロンプト 円の半径を指定: に対して、18 と入力します。
幅 36 単位の円形に見えるポリゴンが作成されます。
- ポリゴンと重なるように、いくつかのオブジェクトを作成します。
- [注釈]タブ > [マークアップ]パネル > [ワイプアウト]をクリックします。 検索
- プロンプト 1 点目を指定 または [フレーム(F)/ポリライン(P)] <ポリライン>: に対して、[Enter]を押します。
- プロンプト 閉じたポリラインを選択: に対して、手順 1~ 5 で作成したポリゴンを選択し、[Enter]を押します。
- プロンプト ポリラインを削除しますか?[はい(Y)/いいえ(N)] <いいえ>: に対して、Y と入力します。
ワイプアウトに変換されたポリゴンは、その下にあるすべてのオブジェクトをマスクします。
ヒント: AutoCAD LT ではなく AutoCAD を使用している場合は、[Superhatch]Express Tool (SUPERHATCH コマンド)の[Wipeout]オプションを使用して、不規則な形状の閉じた領域に基づいてワイプアウト オブジェクトを作成することもできます。
マルチ テキストに背景マスクを追加する
マルチ テキストは一般的に、通常の注記、仕様、引き出し線の付いた吹き出しに使用されます。背景マスクを使用すると、マルチ テキスト オブジェクトの下にあるオブジェクトを非表示にしたり、文字に視覚的に注意を引くことができます。
注: 寸法は背景マスクをサポートしていません。
上の図では、左上のマルチ引出線は背景マスクを使用して注意を引いており、表の上のマルチ テキスト オブジェクトは部品表が現在「レビュー中」であることをデザインの閲覧者に通知しています。
ヒント: 背景マスクはマルチ テキスト オブジェクトにのみ適用できますが、Express Tools の TEXTMASK コマンドおよび TEXTUNMASK コマンドを使用すると、ワイプアウト オブジェクトを単一行の文字オブジェクトに追加することができます。Express Tools は、AutoCAD LT では使用できません。
次の手順では、マルチ テキスト オブジェクトに背景マスクを適用する方法を示します。
- C:¥Program Files¥Autodesk¥AutoCAD <リリース>¥Sample¥Sheet Sets¥Manufacturing フォルダから、サンプル図面 VW252-02-0500.dwg を開きます。
注: サンプル図面は読み込み専用として開かれます。サンプル図面ファイルに対する変更を保存する場合は、ファイルを開く前にドキュメント フォルダにコピーします。
- 図面の左下の領域で、吹き出し「Detail C」を見つけます。
マルチ テキスト オブジェクトの下のジオメトリが原因で、見分けにくいです。
- 文字「Detail C」または文字に隣接する円をダブルクリックして、[ブロック定義を編集]ダイアログ ボックスを表示します。
吹き出し「Detail C」は、背景マスクを追加するマルチ テキストを含むブロックです。
- [OK]をクリックして、選択したブロックを受け入れます。
- ブロック エディタでブロックを開き、マルチ テキスト オブジェクト Detail C をダブルクリックして、マルチ テキスト エディタで編集します。
- リボンの[テキスト エディタ]コンテキスト タブ > [文字スタイル]パネル > [マスク]をクリックするか、インプレイス テキスト エディタ内を右クリックして[背景マスク]を選択します。
- [背景マスク]ダイアログ ボックスで[背景マスクを使用]をオンにします(オフの場合)。
- [境界のオフセット係数]ボックスに 1.10 と入力します。
- [塗り潰し色]領域の[図面の背景色を使用]をオンにします(オフの場合)。
- [OK]をクリックして、マルチ テキスト オブジェクトに背景マスクを適用します。
- リボンの[閉じる]パネル > [テキスト エディタを閉じる]をクリックします。
- [ブロック - 変更は保存されませんでした]メッセージ ボックスで、[変更を 2DDetail1 に保存]をクリックします。
ブロック エディタを終了すると、文字 Detail C の下のジオメトリが表示されなくなっていることに気付くことでしょう。
ヒント: マルチ テキスト オブジェクトの背景マスクは、その下のオブジェクトを隠すだけです。目的の外観を得るには、マルチ テキスト オブジェクトの表示順序を調整する必要があることがあります。DRAWORDER[表示順序]コマンドまたは TEXTTOFRONT[文字と寸法を前面へ移動]コマンドを使用して、マルチ テキスト オブジェクトの表示順序を調整することができます。次の図は、グレーの背景マスクが適用されたマルチ テキスト オブジェクトを示していますが、マルチ テキスト オブジェクトはジオメトリの前面ではなく、背面に描画されています。
寸法線およびマルチ引出線をマスクする
ジオメトリや他の注釈オブジェクトと交差する寸法線やマルチ引出線によって、図面が見にくくなり、現場や製造現場で間違いが生じる可能性があります。DIMBREAK[寸法マスク]コマンドを使用すると、寸法線またはマルチ引出線にマスクまたはギャップを適用して、交差するジオメトリまたは他の寸法線やマルチ引出線と区別しやすくすることができます。
次の手順では、他の寸法オブジェクトおよびマルチ引出線オブジェクトと交差する寸法にマスクを適用する方法を示します。
- C:¥Program Files¥Autodesk¥AutoCAD <リリース>¥Sample¥Mechanical Sample フォルダから、サンプル図面 Mechanical - Multileaders.dwg を開きます。
注: サンプル図面は読み込み専用として開かれます。サンプル図面ファイルに対する変更を保存する場合は、ファイルを開く前にドキュメント フォルダにコピーします。
- サンプル図面で、次の図のオレンジ色で示された領域にズームします。
- リボンの[注釈]タブ > [寸法記入]パネル > [寸法マスク]をクリックします。 検索
- 次のイメージに示されているオブジェクトを選択します。
- プロンプト 寸法をマスクするオブジェクトを選択 または [自動(A)/手動(M)/除去(R)] <自動>: プロンプトに対し、[Enter]を押して既定の[自動]オプションを受け入れます。
寸法補助線は、寸法および 2 本のマルチ引出線付近の 3 ヵ所でマスクされます。
次の手順では、DIMBREAK[寸法マスク]コマンドの[手動]オプションを使用して、寸法線と交差するマルチ引出線をマスクする方法を示します。
- DIMBREAK[寸法マスク]コマンドを再度開始します。
- オブジェクトを選択するようプロンプトが表示されたら、マスクしない寸法補助線を通過するマルチ引出線オブジェクトを選択し、[Enter]を押します。
- ステータス バーで[オブジェクト スナップ]をクリックするか[F3]を押して、[オブジェクト スナップ モード]をオフにします。
- プロンプト 寸法をマスクするオブジェクトを選択 または [自動(A)/手動(M)/除去(R)] <自動>: プロンプトに対して m と入力して、[手動]オプションを使用します。
- 部分削除の最初の点として、次の図の 1 の横に示されている X 付近の点(寸法補助線の左側)を指定します。
- 部分削除の次の点として、上図の 2 の横に示されている X 付近(寸法補助線の右側)の点を指定します。
マルチ引出線が、指定した点の近くでマスクされます。
注: DIMBREAK[寸法マスク]コマンドの[除去]オプションを使用すると、寸法やマルチ引出線に適用されたマスクを除去することができます。
まとめ
注釈はデザインに価値をもたらしますが、オブジェクトが重なると混乱が生じ、エラーが発生する可能性があります。ワイプアウト、背景マスク、寸法マスクを使用してオブジェクトをマスクすると、図面の見やすさが向上し、デザインに要する時間を節約できます。
オブジェクト マスクに関するコマンドとシステム変数
オブジェクトのマスクに関して頻繁に使用されるコマンドとシステム変数を次に示します。
システム変数
| 説 明
| 既定値
| 保存場所
|
---|
FRAME
| すべてのイメージ、マップ イメージ、アンダーレイ、クリップされている外部参照、およびワイプアウト オブジェクトのフレームの表示をコントロールします。
| 3
| 図面
|
FRAMESELECTION
| イメージ、アンダーレイ、クリップされた外部参照、ワイプアウトの非表示のフレームを選択できるようにするかどうかをコントロールします。
| 1
| 図面
|
WIPEOUTFRAME
| ワイプアウト オブジェクトのフレームの表示をコントロールします。
| 1
| 図面
|