現場での構成特性

バルク構成特性と現場の構成特性の相違点、および MCT の材料特性指定プロセスにおいてなぜ現場の構成特性が必要なのかを考えてみましょう。

バルク構成特性とは、単一の構成材料で構成される均質の試験片を使用して測定された特性ことです。一般に、バルク構成特性を使用するミクロメカニカル有限要素モデルは、複合材料の正確な均質特性を示しません。ミクロメカニカル有限要素モデルでは複合材料に対する正確な均質特性を予測できないのには、以下に示すようないくつかの原因があります。

  1. ミクロメカニカル有限要素モデルは実際のミクロ構造ではなく理想化されたミクロ構造を表しています。
    • 繊維体積分率が φf の実際の複合材料においては、繊維はある程度のランダム分布を示し、ローカル領域では繊維が実際に相互に接触し、他の領域では繊維間の距離が比較的大きくなります。 ランダムな繊維間隔でミクロメカニカル有限要素モデルを使用しようとしても、モデルが実際の複合材料に示されるのと同程度ランダム性を正確に反映するとは限りません。
    • 実際の複合材料では通常、ミクロ構造レベルにおいて様々な不具合が特徴的に分布しています。実際は、ミクロメカニカル有限要素モデルにはこのようなミクロの欠陥がまったく存在しないものと想定されています。
  2. 繊維と母材のインタフェース領域の機械的特性および熱特性についての情報がまったく欠けていることが頻繁に発生します。したがって、インタフェースの強度および剛性は、ミクロメカニカル有限要素モデルでは明示的に説明されません。
  3. バルク母材特性がバルク母材材料上で実行された正確な測定に基づいていても、バルク母材材料が同一の硬化条件(たとえば温度、圧力、変形、化学環境)の下に置かれていたとは限らないことは、繊維強化された複合積層での母材材料の場合と同じです。したがって、硬化条件におけるこれらの相違によって、複合材料に含まれる樹脂の動きはバルクの樹脂材料と多少異なることが予測できます。
  4. 繊維と母材構成のバルクの機械的特性および熱特性についての知識は、通常は不完全なものです。実際、バルク構成特性には、実際に測定されたもの、類似の材料からの測定に基づいて予測されたもの、そして単純に推測されたものがあります。
  5. 繊維けん引は織物複合材料に波状に作用するので、全体座標系における材料の特性は、ローカルの材料座標の特性とは同じになりません。

上記の項目 1~4 にリストされたすべての不一致と不確実性をまとめて説明する方法の 1 つは、(測定されたバルク構成特性ではなく)変更された構成特性を使用することです。これらの変更された構成特性によって、ミクロメカニカル有限要素モデルは、合成材料に対して実際に測定された弾性特性(たとえば、剛性、ポアソン効果、および熱膨張)を生成します。これらの変更された構成特性は、現場の構成特性と呼ばれ、特定の複合材料の特定のミクロメカニカル有限要素モデル内で正しく機能するよう意図的に選択されたものであることを示します。これにより、有限要素モデルは、測定された剛性特性を生成するようになります。つまり、現場の構成特性の開発コンセプトとは、ミクロメカニカル有限要素モデルの 1 つの側面(すなわち材料特性)を意図的に調整して、ミクロメカニカル有限要素モデルのその他すべての誤差と不明要素を補足することだと考えることができます。現場の構成特性を決定するプロセスは、最適化についての数学的な問題です。バルク構成特性を繰り返し調整することで、ミクロメカニカル有限要素モデルの測定された複合要素特性と予測された複合要素特性間の誤差を最小化します。そのため、標準の最適化ルーチンを使用して現場の構成特性を決定します。現在、この最適化は最急降下法を使用して実行されています。