ローラ チェーン ジェネレータは、次の理論に基づいて、チェーンが特定の作動条件下で適切に動作するかどうかをチェックし、必要に応じて適切な条件値を提案します。
一定荷重におけるチェーン破断防止の静的安全率は、次のように求められます。
ここで
S Smin | 最小静的安全率[-] | |
F U | チェーンの最大引張強さ[N] | |
F Tmax | チェーン スパン最大張力[N] |
ピーク荷重におけるチェーン破断防止の動的安全率は、次のように求められます。
ここで
S Dmin | 最小動的安全率[-] | |
F U | チェーンの最大引張強さ[N] | |
F Tmax | チェーン スパン最大張力[N] | |
Y | 衝撃係数[-] |
設計動力とチェーン動力定格
チェーン動力定格 P R は設計動力 P D と比較されます。チェーン動力定格は設計動力より大きくなければなりません。
P D < P R
ここで
| ||
| ||
P | 伝達する動力[W] | |
P RN | 標準的な使用条件下での単一ストランド チェーンの動力定格[W] | |
f 1 | 稼働係数[-] | |
f 2 | スプロケットの寸法係数[-] | |
f 3 | チェーン ストランドの係数[-] | |
f 4 | 潤滑係数[-] | |
f 5 | 中心距離の係数[-] | |
f 6 | 比率係数[-] | |
f 7 | 稼働寿命係数[-] | |
Φ | チェーン構築係数[-] |
チェーン動力定格は、経験から導かれた計算式によって算出されます。これらの計算式はチェーンに独特のものです。これらの計算式は、鋼製チェーンに関する他国の規格に言及されています。また、ACA (American Chain Association) による調査研究に基づいています。これらの計算式によって算出される動力は、チェーンの製造元が公表している値とは異なる場合があります。
一般に、動力定格計算式を使用すれば、チェーン ドライブが一定の標準使用条件下で適切に動作するための、有効な動力定格が得られます。チェック対象のチェーン ドライブの稼働環境が、標準的な使用条件とまったく同じではない場合、動力定格係数がジェネレータによって自動的に調節されます。
動力定格係数の詳細については、「計算の基本」を参照してください。これらは、業界における慣行および標準的な使用条件に基づいて計算されます。
標準条件下でのチェーンドライブの動力は、次によって制限されます。
チェーン動力定格計算式の例
P RN = min (P R1 ; P R2 ; P R3)
ここで
P R1 | リンク プレート疲労により制限されたチェーンドライブ動力[hp] | |
P R2 | ローラとブシュの衝撃疲労により制限されたチェーンドライブ動力[hp] | |
P R3 | ピンとブシュの摩耗により制限されたチェーンドライブ動力[hp] | |
z S | 小スプロケットの歯数[-] | |
n S | 小スプロケットの速度[rpm] | |
p | チェーン ピッチ[インチ] |
P D = P f 1 f 2 f 5 f 6 f 7
P RN = min (P R1 ; P R2 ; P R3)
チェーン軸受面圧
チェーン ドライブの稼働中は常に、変動する引張荷重がピンとブシュの接触面に作用して、特定の大きさのチェーン軸受面圧が発生します。この圧力が、チェーン軸受面圧の許容値を超えると、チェーンの稼働寿命が短くなり、強度チェックは不合格となります。強度チェック合格のため、次の計算式がチェックされます。
実際のチェーン軸受面圧が、チェーン スパンの最大張力から次のように算出されます。
チェーン軸受の許容圧力は次のように計算されます。
p 0 = p B0 . ϕ
ここで
p B | 実際のチェーン軸受面圧[Pa] | |
p B0 | 標準使用条件における、許容チェーン軸受面圧の指定値[Pa] | |
p 0 | 標準使用条件における、許容チェーン軸受面圧[Pa] | |
F Tmax | チェーン スパン最大張力[N] | |
A | チェーン軸受面積[m2] | |
ϕ | チェーン構築係数[-] | |
λ | 固有摩擦係数[-] |
予測稼働寿命分析
次の条件を考慮に入れて稼働寿命を予測します。
必要稼働寿命の長さが予測稼働寿命以下であれば、強度チェックは合格です。
一定のチェーン伸びと予測稼働寿命
チェーンは稼働寿命中、摩耗のため常に伸び続けます。3% の伸びをもって寿命が尽きるとした場合の予測稼働寿命の長さは、経験から導かれた次の計算式によって求められます。
ここで
t h3% | 3% の伸びを寿命とした場合の予測稼働寿命[hr] | |
f C | 摩耗係数[-] | |
f m | 固有のチェーン サイズ係数[-] | |
f k | チェーン速度係数[-] | |
X | チェーン リンク数[-] | |
v | チェーン速度[m/s] | |
z 1 | 小スプロケットの歯数[-] | |
z 2 | 小スプロケットの歯数[-] | |
p | チェーン ピッチ[m] | |
d 2 | チェーン ピン直径[m] | |
p B | チェーン軸受面圧[N/cm 2] |
3 個以上のスプロケットを持つチェーン ドライブの場合、代わりに 2 個のスプロケットを持つ仮想チェーン ドライブが使用されます。結果として稼働寿命は次のように求められます。チェーン軸受面圧は、各仮想チェーン ドライブの基準スパンに固有です。
ここで
t h3% | 3% の伸び率を使用限界とした場合のチェーン ドライブの予測稼働寿命[hr] | |
t h1 ... t hn | 3% の伸びを寿命とした場合の仮想チェーン ドライブの予測稼働寿命[hr] |
使用限界伸び率を 3% 以外とする場合、予測稼働寿命は次のように求められます。
ここで
t h3% | 3% の伸び率を使用限界とした場合のチェーン ドライブの予測稼働寿命[hr] | |
t h | 任意の伸び率を使用限界とした場合のチェーン ドライブの予測稼働寿命[hr] | |
ΔL max | チェーンの最大伸び[-] |
磨耗係数 f C
摩耗係数は、潤滑の質と、それがチェーン摩耗の進行に与える影響を考慮に入れます。摩耗係数の値は、潤滑係数 f 4 と軸受面圧 p B で決まります。この関係を次のグラフに示します。
チェーン サイズ係数 f m
チェーン サイズ係数は、チェーンのサイズと、それが摩耗の進行に与える影響を考慮に入れます。係数の値は次の表に基づいて決まります。
ピッチ[mm] | 4 | 5 | 6 | 6.35 | 8 | 9.525 | 12.7 | 15.875 | 19.05 | 25.4 | 31.75 | 38.1 | 44.45 | 50.8 | 63.5 | 76.2 |
f m [-] | 1.64 | 1.57 | 1.54 | 1.53 | 1.49 | 1.48 | 1.44 | 1.39 | 1.34 | 1.27 | 1.23 | 1.19 | 1.15 | 1.11 | 1.03 | 0.96 |
チェーン速度係数 f k
チェーン速度係数は、最小スプロケットの歯数 z s [-]のチェーン速度 v [m/s]を考慮します。小スプロケットの歯数が 19 以上であれば、この係数の値は 1 です。小スプロケットの歯数が 19 未満の場合、次に示すグラフから、係数の値を求めます。
リンク プレート疲労による予測稼働寿命
リンク プレート疲労による破断が発生するまで稼働すると仮定した場合、予測稼働寿命は、経験から導かれた次の数式から求められます。
ここで
t hL | リンク プレート疲労による予測稼働寿命[hr] | |
X | チェーン リンク数[-] | |
n S | 小スプロケットの速度[rpm] | |
f Z | 歯数係数[-] | |
f Y | 固有のチェーン サイズ係数[-] | |
f 1 | 稼働係数[-] | |
F U | チェーンの最大引張強さ[N] | |
F P | 有効張力[N] |
歯数係数 f Z
歯数係数は、チェーン ドライブの小スプロケットのサイズの違いによる稼働寿命の変化を考慮に入れます。係数の値は次に示すグラフより求めます。
チェーン サイズ係数 f Y
この係数はピーク過負荷に対するチェーン サイズを考慮に入れます。係数の値は次に示すグラフより求めます。
ローラとブシュの衝撃疲労による予測稼働寿命
ローラとブシュの衝撃疲労による破断が発生するまで稼働すると仮定した場合、予測稼働寿命は、経験から導かれた次の数式から求められます。
ここで
t hR | ローラとブシュの衝撃疲労による予測稼働寿命[hr] | |
X | チェーン リンク数[-] | |
z S | 小スプロケットの歯数[-] | |
n S | 小スプロケットの速度[rpm] | |
f 1 | 稼働係数[-] | |
f 3 | 多列係数[-] | |
P | 動力[W] | |
d 1 | チェーン ローラ直径[m] | |
d 2 | チェーン ピン直径[m] | |
p | チェーン ピッチ[m] |