冷媒流

冷媒流の挙動は、金型と冷媒間の熱伝達に影響を与えます。熱伝達効率は、冷媒流が層流ではなく乱流の場合に高くなります。乱流の冷媒流は、層流よりも良好な温度勾配を示します。

キャビティから冷却管への温度勾配には、次の 2 つの要素があります。

プラスチックから冷却管までの熱流動パス

冷媒流の速度は熱伝達に影響を与えます。

きわめて流速が遅い場合、流動は層流となっています。熱は、冷媒のさまざまな層を通じて冷却管の中央に伝わります。冷媒の熱伝導性は低いので、熱伝達はきわめて非効率的です。これは下のグラフ a に示され、冷媒と金属の境界面と冷却管中心との温度差が比較的大きくなっています。

冷媒流を増加させると、冷媒流が乱流になるまでは、熱伝達は少しずつ増加します。流動が乱流になると、冷却管の長さ方向と垂直に冷媒の流速成分が発生し、熱伝達の効率は急激に高まります。下のグラフ b に示される熱伝達の向上により、乱流の冷媒に対してキャビティ面の温度が低下します。

これらのグラフの金型要素は次のとおりです。


層流と乱流

熱伝達と冷媒流との関係は累乗の関係として表現できます。冷媒流は、層流乱流、または層流と乱流の中間の遷移状態のいずれかです。層流の状態では、流量の立方根で熱伝達が上昇します。

つまり、冷媒流を 2 倍にしても、熱伝達の上昇は 24% です。完全な乱流の状態では、熱伝達は流速の立方根の二乗に比例します。したがって、乱流の領域では冷媒の流量を 2 倍にすると、59% の熱伝達の上昇が得られます。

システムに冷媒を行き渡らせるために必要なポンプの能力は、流量の三乗に比例します。つまり、流量を 2 倍にするには、ポンプの能力を 8 倍にする必要があります。

乱流が十分に発達した状態で、流量をさらに増加すると、金型の除熱能力が向上します。しかし、除去可能な熱量は金型を通過する熱量で制限されます。したがって、除熱量はこの制限以上は改善しないことがあります。

効率的な熱伝達を実現するには、冷媒流を乱流にすることが効果的ですが、除熱能力は実際に除熱できる熱量を大幅に超えるわけではありません。下のグラフは、冷媒流量の関数として見た、金型からの除熱を示しています。A 領域は伝導による熱伝達、C 領域は対流による熱伝達、B は遷移領域を示します。実線 E は除熱能力を示し、点線 H は実際の除熱を示します。



レイノルズ数

レイノルズ数は、管内を流れる流体の流量を示す比率です。水で乱流が発生し始めるレイノルズ数は 2,300~4,000 です。冷却システムの流量が不明な場合は、レイノルズ数を使用します。レイノルズ数が 4,000 であれば十分な乱流が発生していると考えられますが、解析では、乱流が発生している条件としてレイノルズ数 10,000 を採用することをお勧めします。

レイノルズ数の詳細については、「冷却システムの方程式」を参照してください。