複屈折に関して

透明材料の屈折率とは、その材料を通過する光が減速する比率を表す無次元の特性値です。多くの材料において、屈折率は光路や偏光と無関係です。しかしながら、材料にかかる応力によって屈折率が変化することもあります。材料にかかる応力の強さがその方向によって異なる場合、その材料の屈折率は入射光の偏光によって異なります。この現象を複屈折と呼びます。


応力複屈折による位相シフト

応力によって透明材料に発生する複屈折。水平方向の偏光と垂直方向の偏光は材料の中をそれぞれ異なる速度で進み、位相シフトが発生する。

注: 結晶の中には自然の光軸を持つものがあり、そのような材料では応力がかかっていない状態でも複屈折を示します。多くのプラスチックは非晶性なので、熱可塑性プラスチックの解析では、結晶性複屈折は応力複屈折ほど重要ではありません。

応力複屈折

非晶性材料の場合、特定の軸に沿って偏光している光に対する屈折率は、その軸方向の線形応力とその軸に垂直方向の横方向応力の両方に比例して変化します。この比例係数を光弾性係数と呼びます。これは材料の種類に依存する特性値です。

複屈折の視覚的効果

複屈折は 2 種類の視覚効果を引き起こします。どちらの効果が現れるかは、入射光の方向と偏光および材料内部の主応力の方向で決まります。光学用途を意図した成形品ではどちらの効果も望ましくありません。

リタデーション

通常の光は偏光していません。つまり、光路と垂直なあらゆる方向に偏光した数多くの光ビームで構成されています。複屈折性材料に入射した光は、材料内部に存在する主応力の方向それぞれに沿って偏光したビーム成分に分解されます。これらのビーム成分に対する屈折率はそれぞれ異なるので、材料から出射するときにはビーム成分ごとに異なる速度を持っています。したがって、これらのビーム成分が再び合成されると位相が不揃いになります。この位相差をリタデーションと呼ぶことがあります。これにより、出射光の偏光方向(偏光方向の分布)は入射光とは異なったものになります。光が初めから偏光した場合、または材料を通過後に偏光させた場合、一部のビーム成分は著しく遮断され、結果的に明暗の縞状になった光が得られます。2 枚の直交偏光フィルターの間に材料を置くと、この効果を確認できます。


位相差

リタデーション。水平偏光した光波と垂直偏光した光波の間には、光路長の違い x によるオフセットが発生する。このオフセットは、光路長の絶対値、または波長 (1/4 波長または 90°) の割合で表現される。

二重像

光路方向が材料のいずれかの主応力の方向と平行ではない場合、光が材料表面に垂直に入射していても、一定方向の偏光ビーム成分("異常"ビーム)が材料内部で屈折します。この光が材料から出射すると、このビームには他の("正常")ビームに対するオフセットが発生し、二重像を引き起こします。