Autodesk 反り解析および応力解析の大変形解析で使用できる、荷重制御と変位制御という 2 種類の荷重増分方法が用意されています。
荷重制御では、各ステップが荷重の特定の増分に相当しています。この荷重増分は、自動的に調整できるほか、反り解析または応力解析向けに入力ファイルを作成するときに指定することもできます。各ステップの中で平衡反復を実行している間、荷重は一定に保持されます。解析が極限点(局部的な最大荷重または最小荷重のポイント)に近付くと、このアルゴリズムは不安定になり、収束の問題が発生します。この場合は、荷重にわずかな不平衡があっても、変位に大きな変化を引き起こします。
極限点を問題なく通過し、座屈後の挙動を調べるには、一定荷重(荷重制御)法での反復ではなく、一定変位(変位制御)法での反復を実行する必要があります。
変位制御法では、変位に基づく拘束式を導入して、荷重パラメータ を 反復で使用する追加の変数として使用できるようにします。
変位制御の各ステップは、モデルの特定のノードに適用する変位の特定の増分に相当しています。この特定のノードを制御ノードと呼びます。荷重制御の場合と同様、増分(この場合は変位増分)は自動的に調整できるほか、反り解析または応力解析向けに入力ファイルを作成するときに指定することもできます。変位制御法には、手動制御と自動制御の 2 種類があります。
手動変位制御では、解析全体で使用する制御ノードとその変位方向を選択します。このオプションは多くの状況で良好に動作しますが、汎用性に欠けるうえ、選択した制御対象の変位成分に対する平衡経路が垂直または垂直に近いと動作が完全に停止します。これは、平衡経路が水平に近いと動作が停止する荷重制御法の性質に似ています。
自動変位制御では、最初のステップが始まるときに、初期設定された小さい増分の荷重を加え、移動量が最大のノードはどれか、その移動方向はどちらであるかが検出されます。このノードが制御ノードとして選択され、変位増分法による解析が始まります。制御ノードと制御方向は、解析中の最新の条件に応じて動的に変わります。このため、収束率から見た効率性と、すべての荷重経路を追跡できるロバスト性が向上します。
参考資料 1 には、このプログラムで使用している自動変位制御法の詳しい説明があります。この方法の特長は、きわめて汎用性が高く、構造の応答に関する事前知識をほとんど必要としないことです。26 ページの「自動制御法」の説明にある自動手法制御システムとこの方法を組み合わせることで、原則としてほとんどすべての荷重 - 変形解析の経路を自動的に追跡できます。このような追跡可能な経路として、分岐点を持つもの、極限点を持つもの、スナップスルーが生じるもの、スナップバックが生じるものなどがあります。
適切な制御方法は、実行する解析のタイプと問題の非線形度合によってによって異なります。どちらの方法にも利点と欠点がありますが、ここではその重要なものについて説明します。
非線形性が少ない問題では、荷重制御のほうが効率的です。それは、変位制御に比べ、荷重制御では演算上の負荷が低く済むからです。座屈解析を実行すると、解析対象の荷重範囲内で、大きな非線形性が現れる可能性があるかどうかを知ることができます。
荷重制御法では、解析の最終ステップで、荷重レベルを変位制御法よりも良好に制御できます。たとえば、変位制御解析で最大荷重係数を 1 に設定しておくと、最後の変位ステップは荷重係数 1 をわずかに超えたものになります。その結果、最後の荷重は変位のステップ サイズによって、1.01 のように 1 をわずかに超えただけのものになることもあれば、1.2 のように 1 を大きく超えたものになることもあります。正確な 100% 荷重での変形形状を知る必要がある場合、変位制御解析では荷重に対する制御性能が不足するので不利となります。一方、一時ファイルを保持するオプションを選択した場合、次を指定することによってリスタート解析を実行できます。
変位制御解析で初期増分と最大増分の値を適切に選択することは、荷重制御の場合よりもはるかに困難で直感性にも欠けることが普通です。荷重制御では、増分が小さすぎると解析ステップ数が膨大になり、増分が大きすぎると非線形性の挙動を正確に予測できなくなります。これに対する例外は、手動変位制御を使用して指定の変位で実行する応力解析です。この場合は荷重増分よりも変位増分のほうに意味があるので、変位制御が有利です。
大きな非線形性を持つ問題では、荷重制御法よりも変形制御法のほうが優れています。これは、変形制御法ではどのような荷重 - 変形経路であっても自動的に追跡できるからです。一方、荷重制御法は、経路に極限点が存在すると必ず失敗します。
指定変位による解析では、問題との関連性が高いのは荷重増分ではなく変位増分なので、変位制御法が優れています。