遠心ポンプと軸流ファンはモーターの機械的エネルギーを動く流体のエネルギーに変換します。遠心ポンプでは流れが軸方向に入り、回転翼で回転され、ボリュートを通って斜流として流出します。ほとんどの遠心ポンプの目的は、液体の圧力を高めるまたは1つまたは複数の配管を流すことです。
軸流ファンでは、空気が回転する複数のブレードで構成される回転翼を通って加速します。ほとんどの軸流ファンの目的は空気の流速を高めることであり、排気の目的でよく使われます。
目的
大部分のポンプおよびファン アプリケーションでは、特定の条件における動作点の決定に集中します。
- 揚程0における最大流量の特定
- 特定揚程に対する流量の特定
- 特定流量に対する揚程の特定
- 揚程特性(性能特性)の特定
もう1つの目的が流体における非効率源の特定です。これらは、翼流路の吸引側の再循環領域や回転翼の流出口付近における噴流-後流パターンにより発生する可能性があります。
適用例
- ウォーターポンプ
- 冷却ファン(軸流)
- 冷却ファン(斜流)
モデリング戦略
- 効率的な解析には、無関係なフィーチャーやエラーを含まないCADジオメトリが必須です。微小なエッジやサーフェスは除去してください。特に回転翼やボーリュート ケーシングにおいては、それらの除去が重要です。ウェアリングやパッキン周辺のギャップは閉じてください。
- 吸引側(流入口)と排出側(流出口)を回転翼から少なくとも3-4の水力直径分延長してください。これは境界条件が結果に対して直接作用することを防ぐために必要です。
- 回転領域は、回転翼を単に囲むだけで、静止部品に接触しないようにする必要があります。また、回転翼の外径とカットウォータ間の中間まで延長する必要があります。回転領域のガイドラインについての詳細
- ポンプハウジングのボリュート舌部と翼の前縁周辺の局所的なメッシュ細分割を容易にするには、それらの構築に翼やボリュートを覆う大規模なサーフェスを利用するのではなく、別々のサーフェスを利用します。これにより、それらの重要領域に対する局所的メッシュ細分割の適用が非常に容易になります。
- 軸流ファンの一般的なモデルは、円筒形の回転領域で覆われた回転翼により構成されます。流入口と流出口は回転領域から3-4水力直径分拡張されます。
解析設定
材料
- 回転翼の周辺ボリュームに対しては回転領域材料を作成し、割り当てます。材料エディタで、シナリオの種類に既知の回転速度を設定してください。テーブルにより回転速度を指定することで、0から最高速度までを50時間ステップで変化させます。
- 例:
- 5枚の翼を持つタービンが3000RPMで回転する場合を想定します。このタービンの場合、1枚の翼の通過に要する時間ステップは、72°(360 / 5 = 72)の回転に必要な時間となります
- 3000 RPM では、この時間刻み幅は 0.004 秒に相当します(D / N x 6 = 72 / (3000)x(6) = 0.004)。
- したがって、50 時間ステップで最高回転速度に達するために必要な時間は 0.2 秒です(50 x 0.004 = 0.2 秒)。回転速度テーブルの値は次のようになります:
回転速度(RPM) |
時刻、秒 |
0 |
0 |
3000 |
0.2 |
3000 |
100 |
境界条件
-
吸引側流入口に圧力=0を指定します。
- 流出口の条件は、解析の目的により決定されます:
- 最大流量を算出するには: 排出側で圧力を 0 に設定します。
- 特定揚程に対する流量を算出するには: 排出側で過渡的圧力条件を指定します。圧力の指定には区分直線近似分布を用い、0からターゲット値までを100時間ステップにわたり変化させます。
- 特定流量に対する揚程を算出するには: 排出側で過渡的体積流量を指定します。流量の指定には区分直線近似分布を用い、0からターゲット値までを100時間ステップにわたり変化させます。流れの向きをモデルから出る方向にするには、テーブルに負の流れ値を指定します。
メッシュ
- 熱伝達が関係しない限り、回転翼、ボリュートケーシング、ウェアリング等の固体部品は抑制します。
- メッシュ分布は自動サイズ設定または手動サイズ設定により定義します。
- 自動サイズ設定では、ジオメトリの曲率を基に分布を作成します。これにより、モデル全体にわたるメッシュ勾配の配合を強力に試みます。回転領域に対しては均一なメッシュを使用設定を用います。これはメッシュサイズの変化による流れの人為的な勾配を避けるためのものです。
- もう1つの方法が、手動メッシュサイズ設定の使用です。ここでは部品に対して、それらのサイズに基づいた要素サイズを割り当て、サーフェスおよびエッジのサイズ変更によりメッシュ分布の細分割を行うことが、一般的な戦略となります。
- 双方のメッシュ戦略では次の点を考慮する必要があります:
- 解析を成功させるには、十分なメッシュ密度が重要です。回転するデバイスではその流れが急激に変化するため、それらの解決には十分に微細化されたメッシュが必須となります。
- 翼の前縁とボリュート舌部で局所的なメッシュ細分割を行うことにより、曲率を十分に再現する必要があります。これらは一般的に重要な領域であり、大きな圧力と流れ勾配が発生します。
- 各翼列間の吸引側におけるメッシュ分布を確認します。この領域では逆圧勾配が発生する可能性が高いため、この流れ勾配を適切に解決するために十分なメッシュが存在してなくてはいけません。
- 回転領域内の節点アスペクト比は100を下回らなくてはいけません。アスペクト比をチェックするには、結果量ダイアログで流れ関数を有効にし、収束計算数0で実行します。節点アスペクト比を視覚化するには、等値面を作成してください。
モニタ ポイント
圧力および流量(速度と出力口領域の掛け算)を監視するには、流出口の中心にモニターポイントを作成します。
これには、以下を行います:
- モデルの外側を右クリックし、メニューから[モニタ ポイント]を選択します。
- 点を配置し、追加をクリックします。
実行
時間刻み幅と実行する時間ステップの数
完全に発達した流れを達成するには、回転速度と境界条件の立ち上がりを考慮するため、流れを適切に開始するのに十分な時間ステップを実行し、その後十分な回転数分実行することが重要です。この解析は3段階で実行することが適切です:
第 1 段階: 回転速度と境界条件を上げます。
第 2 段階: 単一の翼の通過間隔に等しい時間ステップを使用して、完全に発達した流れを達成するために 20 回の完全な回転を実行します。
第 3 段階: 3 度の移動に相当する時間ステップを使用して、1 回の回転を実行します。最後の回転により、流れ、圧力、および流体トルクが確実に安定状態に達します。
適切な時間ステップサイズとそれぞれの段階で実行すべきステップ数を特定するには、若干の見積もりと簡単な計算が必要です。この作業の簡単な例を次に示します:
例
5枚の翼を持つ回転翼が3000 RPMで回転します。翼間の時間刻み幅は 0.004 秒です。t = D / N x 6(D = 360/翼の数、N = RPM); t = 72 / (3000)x(6) = 0.004s
第1段階:
- 立ち上がりに必要な回転速度は50時間ステップです。これは 0.004 x 50 = 0.2 秒 に相当します。
- 流出口境界条件にはさらに50ステップ必要です。これは 0.004 x 50 = 0.2 秒 に相当します。
合計で0.4秒(100時間ステップ)が経過します。
第 2 段階:
- 最高速度で20回転するためには、さらに100ステップが必要です。(1枚の翼の通過には1時間ステップ、1回転あたりは5時間ステップ要するため、20回転するためには100時間ステップが必要となります。)これは0.4 秒に相当します。
すなわち、ここでは0.4秒(100時間ステップ)が経過します。
第 3 段階:
時間ステップあたり翼を3度回転させるために必要な時間ステップサイズは0.000167秒(t = 3 / N x 6 = 3 / (3000) x (6) = 0.000167秒)です。
- 時間ステップあたり3度進む場合、1回転には120時間ステップが必要となります。
第3段階では、0.02秒(120時間ステップ)が経過します。
まとめ:
|
時間ステップサイズ |
タイムステップ数 |
第1段階 |
0.004 秒 |
100 |
第 2 段階 |
0.004 秒 |
100 |
第 3 段階 |
0.000167 秒 |
120 |
結果抽出
- 流体トルクの時間履歴を表示するには、解析結果 (タブ) > レビュー(展開パネル) > 回転領域結果をクリックします。このデータはシナリオを含むフォルダに外部 "csv" ファイルとして保存されます。これによりExcelを用いたグラフ化を行うことも可能となります。
- 流出口に作成されたモニターポイントを用いることで、解析の進行状況を追跡できます。これにより、重要領域における解析進行状況にフォーカスした表示が提供されます。
- 結果のアニメーション表示を行うには:
- 時間ステップを1枚の翼の通過に要する時間の1/2に設定します。
- 実行ダイアログで保存間隔に1を設定します。
- 解析を継続し、完全に回転するまで、十分な時間ステップを実行します。
- 揚程特性曲線を算出するには:
- 設定を行い、動作点を1つ実行します。
- シナリオをクローン化し、流出口の流量または圧力の立ち上がりを変更します。実行します...
- 残りの動作点に対し、ステップ2を繰り返します。
- 流出口に断面を作成し、サマリー平面にします。
- ディシジョンセンターで、サマリー平面を右クリックし、重要値の更新をクリックします。
- 出力バーで、サマリー平面タブが表示されていることを確認します。保存ボタンをクリックします。
- このデータは "csv" ファイルとして保存されます。これをExcelで開き、すべてのシナリオの圧力と流量をプロットします。
避けるべき事項
- 十分なメッシュ定義を避けてはいけません。一般的に回転の解析は、静解析に比べ、メッシュ分布の影響を非常に受けやすいものとなります。翼の前縁、ボリュート舌部、および翼流路の吸引側等の急勾配領域では、十分なメッシュを確認してください。
- 衝動的スタートアップは避けてください。最高回転速度が解析の始まりから指定されている場合がこれにあたります。この指定は非現実的であるばかりか、翼流路における分離領域の発生原因となりうるため、避けるべきです。回転領域の回転速度は前述のテーブル定義を用いて段階的に上げてください。
- 排出側にゼロ以外の圧力や流量を直接指定することは避けてください。回転速度の立ち上がりと共に、流出口の条件を徐々に上げていきます。これを誤ると、ポンプを通した流れの方向にも誤りが生じます。