オプション

すべてのモデル対して正しい解法を提供する接触パラメータの値の組み合わせは 1 つではないため、ユーザは、それぞれのパラメータの機能を十分に理解して、所定の問題に対する適切な値のセットを判別する必要があります。

接触パラメータは、ペアごとに個別にカスタマイズできます。ツリービューで接触ペアを選択し、右クックから[設定]を選択してください。 または、メインの[MES: サーフェス間接触]ダイアログ(スプレッドシート)から、目的のペアの[パラメータ]列をクリックしてください。 いずれの方法でも、[接触ペアのコントロールとパラメータ]ダイアログに移動します(パラメータが変更されているペアは、[パラメータ]列の[カスタム]に表示されます。それ以外は、[パラメータ]に既定が表示されます)。

ヒント: 接触ペアのパラメータが変更された場合、それらの新しいパラメータを別の接触ペアにコピーすることができます。メインの[MES: サーフェス間接触]ダイアログ(スプレッドシート)から、[接触]セクションを使用してください。 ドロップダウンで[ペアから]および[ペアに]を設定し、[コピー]ボタンをクリックしてください。 スプレッドシートの[コピー元のペア]に定義されたサーフェス接触に関連付けられたパラメータが[コピー先のペア]にコピーされます。パラメータを他のすべての接触ペアにコピーする場合は、[コピー先のペア]の値を[すべて(All)]に設定してください。

[接触ペアのコントロールとパラメータ]ダイアログ ボックス

[接触問題タイプ]ドロップダウン ボックスで、解析中に常に生じる可能性のある接触の一般的なタイプを選択してください。 この選択により、接触剛性の自動計算の動作がコントロールされます。選択対象が明らかな場合もありますが、状況が低速であるか高速であるかが明確でないこともあります。 その違いは、解法の効率の問題です。 いずれの選択でも、正しい結果が得られます。使用可能なオプションは次のとおりです。

[接触法]ドロップダウン ボックスで、選択した接触ペアに使用する接触方式を選択してください。オプションは次のとおりです。

サーフェス間接触では、クーロン摩擦(Coulomb friction)と呼ばれる古典的な摩擦アルゴリズムが使用されます。基本的なクーロン摩擦モデルにおいては、2 つの接触サーフェスが所定の大きさまでのせん断応力に抵抗することができます。この大きさは、摩擦係数と、相対すべり運動を受ける前の垂線方向の接触圧から決定されます。クローン摩擦モデルは、τ = μP と定義されます。ここで、μ は摩擦係数、P は垂線方向の接触圧です。 サーフェス間接触では、静摩擦係数 μ s と動摩擦係数 μ d を定義することができます。 理想状態では、静摩擦係数から得られた μ s P をせん断応力が超えた後、2 つのサーフェスがすべりを開始し、せん断応力は動摩擦係数を使用した μ d P になります。

ヒント: 解析実行時間が長引く原因となる発振を防ぐには、静摩擦係数とすべりの摩擦係数が接近しないようにする必要があります。

理想状態(せん断応力が静的な値を超えるまで運動なし)を数値的に達成するのは、図 1 に示すように困難です。そのため、摩擦の使用時に[接線の剛性比率]が定義されます。接線方向の剛性比とは、垂線方向の接触剛性(K) に対する、接線方向の接触剛性(K t )の比のことです(接触剛性(K)は[高度]ボタンで設定します。「サーフェス間接触の高度なコントロール」のページを参照してください)。 接線方向の剛性が大きいほど、結果の精度が向上しますが、その代償として、より多くの反復が必要になります。 接線方向の剛性が小さいほど、収束性に優れます(実行時間が短縮されます)が、精度が低下する可能性をともないます。推奨される値は、0.01~1 の範囲です。 静摩擦係数が大きくなるほど、接線方向の剛性比を小さくすることが推奨されます。

 

(a) トップ ブロックのモデルと自由物体図(Free body diagram)。加えられた力 F は、静摩擦力を超えるまで、時間とともに徐々に増加します。

 

(b) 摩擦力 Ff の時間変化(青色の曲線)と変位の時間変化(赤色の曲線)。 摩擦力 Ff が静摩擦の限界(Fs = μ s xN)を超えるまで、パーツの運動はありません。静摩擦を超えると、摩擦力 Ff は Fs から Fd (= μ d xN) にまで低下し、パーツは加速を開始します。

(c) (b)のグラフは摩擦力と変位の関係を示すように組み合わされています。理想状態では、摩擦力が Fs に達するまで変位はゼロであり、その後にすべりが開始します。数値上でこれを実現するのは困難です。変位がゼロでない場合はすべて摩擦力が Fd であること意味するためです。

(d) (c)における数値的な不安定さを回避するために、摩擦力が静的限界(Fs)未満のときに、パーツが少し(Δs)だけ変位できるようになっています。運動の大きさは、接線方向の剛性(Kt = Fs/Δs)によってコントロールされます。Kt の値が小さいほど、パーツはすべりを開始する前に大きく変位することがで、収束が容易になります。一方、Kt の値が大きい(勾配が急である)ほど、すべりを開始する前の変位は小さくなり、収束が困難になります。 接線方向の剛性は、(接線方向の剛性比) x (垂線方向の剛性)によって計算されます。

図 1: 摩擦に対する接線方向の剛性

摩擦のない接触の場合、要素剛性マトリックスは対称です。 摩擦が含まられると、マトリックスは非対称になります。非対称のソルバーを使用すると、通常の対称ソルバーを使用する場合よりも計算コストが高くなります。効率を考慮して、MES では強制的に要素剛性を対称とし、摩擦のある接触に対称ソルバーを使用できるようになっています。

解析で摩擦のある接触を考慮する場合、解法プロセスは、すべりのプロセスからの影響を非常に受けやすくなります。 接触サーフェスがすべりを開始すると、すべり前の平衡状態は有効でなくなり、プロセッサでは、解法プロセス中に新しい平衡状態を探す必要があります。さらに、対称の近似により、収束性に乏しい可能性があります。

[接触タイプ]ドロップダウン ボックスで、選択した接触ペアに使用する接触のタイプを選択してください。

接触をサーフェス間であると説明するのは、誤解を招く恐れがあります。実際には、2 番目のパーツ/サーフェス上の節点が、1 番目のパーツ/サーフェス上の節点と連結されるため、節点がサーフェスを通過することはありません。 必要に応じて、逆は真になります。1 番目のパーツ/サーフェス上の節点を、2 番目のパーツ/サーフェスのサーフェスに連結することができます。どのような場合にも、1 つのパーツのサーフェスが 2 番目のパーツのサーフェスを通過するのを妨げられることはありません。

[接触タイプ]のオプションは次のとおりです。

ヒント: 点間接触では、ユーザが節点間を描画して接触させ、要素タイプを割り当てることによって作成可能な接触と同じ要素が作成されます。その違いは、点間接触のサーフェス間接触タイプは、初期の単位長さを 0 とすることができ、接触はそれらの長さ 0 のときに開始できるという点です。通常の接触要素は、0 の単位長に描画することや、長さ 0 で接触を開始することはできません。

点サーフェス間の接触方式は高速ですが、1 次パーツの点は、2 次パーツのサーフェスを通過する可能性があることを理解しておく必要があります。この接触は検出されません。 サーフェス間接触は、接触の検出性に優れていますが、その代償として、より多くの接触要素が生成されます。すなわち、ターゲット パーツ/サーフェス上の節点は、マスター パーツ/サーフェス上の節点によって定義されるサーフェスを通過できず(点とサーフェス間の接触とまったく同様)、マスター パーツ/サーフェス上の節点は、ターゲット パーツ/サーフェス上のサーフェスを通過できないことを示しています。図 2 を参照してください。

図 2: 接触タイプの比較

くさび上にブロックを落下させる 3 種類のモデル。それぞれのモデルでは、接触タイプが異なります。

サーフェス間接触

点とサーフェス間の接触

(くさび上の点)

点とサーフェス間の接触

(ブロック上の点)

 

Time = 0

 

等価なシステム。 両方のパーツのサーフェスは、接触を介して連結されています。

等価なシステム。 接触が連結されている限り、くさび上の節点のみが存在します。

等価なシステム。 接触が連結されている限り、ブロック上の節点のみが存在します。

 

Time = 0.024 秒

 

ブロック上のサーフェスが、くさびのサーフェス/節点に接触します。

ブロック上のサーフェスが、くさびの節点に接触します。

ブロックの節点がくさびのサーフェスに接触するまで、接触は起こりません。くさびは、ブロックを通過します。

 

Time = 0.12 秒

 

ブロック上のサーフェスが、くさびのサーフェスをすべり落ちます。

ブロックは、くさびの節点の間を通過します。

ブロックは、くさびに突き刺さります。

  Time = 0.15 秒  

 

接触ペアのサーフェスの 1 つがシェル要素のパーツ上にある場合、接触ペアに関連するシェルの側面を選択してください(上面は、[要素定義]ダイアログで定義された要素の垂直点の逆側です)。 2 つの物体が指定方向から接近する場合にのみ接触は起こります。たとえば、シェルのトップで接触が起こるように指定する場合、2 番目の物体がトップからボトムの方向に移動するときに接触が起こります。2 番目の物体がボトムからトップ方向に移動する場合には、接触は起こりません。これの可視化方法がもう 1 つあります。2 番目のオブジェクトは、シェルの外側から接近するときにのみ、選択された側面(トップまたはボトムのいずれか)と接触します。このオブジェクトは、選択された側面に到達するためにシェルを通過する場合、接触を検出しません。図 3 を参照してください。

注: 2 つの物体が接触している位置での分離を計算するとき、シェルの厚さは考慮されません。 シェルのメッシュ(シェルの中立面を表すメッシュ)の接触距離内に他の物体があるときにのみ接触が発生します。当然、接触距離はシェルの厚さの半分を含むように変更することができます。
   図 3: シェルのトップと接触するように定義された 2 のブロック

ライン要素(ビーム、トラス)との接触では、ライン要素上の節点が最初のパーツ/サーフェスと接触している場合にのみ、接触が検出されます。また、線要素上のすべての節点を接触に考慮するか([すべて線要素上])、または端部の節点のみを考慮するか([要素の終端のみ])を、[接触している節点]ドロップダウン ボックスで指定してください。 たとえば、歯ブラシの毛はビーム要素で構成されており、毛の先端の節点と歯の接触のみが必要とされます。要素の先端の節点のみが使用されます。しかし、トラス要素で構成される安全防止ネットは、ネット上のすべての節点と落下物との間の接触を検出する必要があります。ライン要素上のすべての節点が使用されます。