ギャップ要素による解析を実行する

モデル作成にあたっての確認事項

線形材料による静解析でギャップ要素およびサーフェス接触要素(このページでは併せて「ギャップ要素」と呼びます)を使用する際、次のいくつかの制約があります。特に指定のない限り、この情報は自作のギャップ要素、サーフェス接触で設定された 3D CAD モデル、サーフェス接触で設定された 2D メッシュに関するものです。

  • ギャップ要素は線形動的解析には使用できません
  • 解析結果は荷重履歴の影響を受けないため、最終的な静的結果のみ計算されます。このため、荷重および徐荷が摩擦によるエネルギーの拡散に結びつくことはありません(自作のギャップ要素では、2 つのサーフェス間の摩擦効果を考慮に入れることはできません)。

静解析のギャップ要素とサーフェス接触要素により、解法は反復解になります。たわみがわからないと、ギャップ要素の開閉も不明です。ギャップ要素の開閉がわからないと、たわみを計算できません。したがって、解法は次のようになります。

  • 最初の反復で一部のギャップ要素が開閉していると仮定します
  • たわみを計算します
  • 開閉しているギャップ要素と開閉していないギャップ要素を決定します
  • 仮定に一致しないギャップ要素を変更します(複数可)
  • すべてのギャップ要素のステータスが一定になるまで解析を繰り返します

通常、解の収束に必要な反復回数は不明なため、ギャップ要素のあるモデルの実行時間はギャップのない同一モデルよりも大幅に長くなる傾向があります。

モデルを安定化

対処が必要な問題として、ギャップ要素によってのみ拘束されるサブアセンブリの剛体モーションがあります(ここでサブアセンブリとは、多数のパーツが接着された接着体を指します)。解法が反復解であるため、一部の反復では解のギャップ要素が不十分で、すべてのサブアセンブリに静的安定度を確保できない可能性があるので常に注意が必要です。したがって、モデルの全パーツギャップ要素に依存せずに静的安定度を得る必要があります

パーツが他のパーツと接触するまで自由に移動できる場合は、これらのフリーのパーツは弱いばね(弱い境界要素)で拘束する必要があります。その目的は、すべてのパーツの安定性を確保しながらも、プロセス中にはそれらが大きな距離を移動できるようにすることです。ギャップ要素が一部の反復の解に含まれていない場合、弱いばねがパーツを拘束して解析を計算できるようにします。ただしその後、一部のギャップ要素が接触したことを検出すると、次の反復を続行してギャップ要素を含めます。弱い境界要素は実際に存在しないため、剛性は結果への影響が最小限になるように設定する必要があります。

境界要素の詳しい追加方法は次のとおりです。

  1. ギャップ要素によって部分的または単独で拘束されるサブアセンブリについては、3 つの頂点を選択します([選択] [選択] [頂点])。全方向に安定性を与えるには、任意の節点が一直線に並ばないようにする必要があります。サブアセンブリが境界条件によって一部の方向に拘束されている場合や、要素のタイプが自由度に欠けている場合は、頂点を 2 つ以下にすることができます。境界要素の目標は、移動 3 方向と回転 3 方向の全 6 方向でパーツを静的に安定させることです。
  2. 右クリックし、[追加] [節点剛体境界]を選択します。
  3. 境界要素を X、Y、Z の方向に拘束します(必要に応じて)。
  4. [剛性]フィールドに値を入力します。なお、境界要素は節点からグランドに接続するばねです。したがって、グランドにかかる荷重を伝達します。モデルから移動する荷重の量を最小にするには、次のようにして適切な剛性を計算してください。節点で発生するたわみを推定し、加えられた荷重の一部(たとえば 0.1%)がばねを介して伝達されると仮定します。剛性は、「荷重/たわみ」として計算できます。 たとえば、加える荷重が 1000 lbs で、剛性境界要素を 1 lb にする場合、剛性境界の位置におけるモデルのたわみの推定値が 0.05 inch だとすると、使用できる剛性は、F/d = (1 lb)/(0.05 inch) = 20 lb/in となります。
  5. [OK]をクリックし、選択した頂点に境界要素を適用します。
  6. 必要に応じて、モデル内の他のサブアセンブリについても繰り返してください。

モデルと反復プロセスの安定性を役立てるには、解析パラメータの[接触]タブで設定を表示します。これより後のセッションの「線形材料による静解析」ページの「接触オプション」を参照してください。

ヒント: 求解が失敗し、マトリクスが正の値ではないというメッセージがログ ファイルの末尾に表示された場合、モデルが静的に安定していないことが示されています。前述のように拘束を追加し、モデルを静的に安定させる必要があります。他の方法としては、不安定なモデルに有効なスパース ソルバーを試します。

解析後

解析後、ログ ファイルを([レポート]環境から)表示して反復プロセスの動作を確認します。出力例を次に示します。

**** Begin solving nonlinear equations
ITER CLOSE OPEN frON fOFF LOADFACT TOTALf CLOSED/TOTAL CRC-CHECK
1 9 0 0 0 1.0000E+00 0 9/11 123408E4
2 0 1 0 0 1.0000E+00 0 8/11 6BB6B604
3 0 1 0 0 1.0000E+00 0 7/11 665639D4
4 0 1 0 0 1.0000E+00 0 6/11 40CE5738
5 0 1 0 0 1.0000E+00 0 5/11 FB5D11B9
 **** Solution has converged.

ただし、

  • ITER は反復回数です。この例では、5 回反復されています。
  • CLOSED は、前回の反復から閉じるに変更されたギャップ要素の数です。この例では、最初の反復で 9 つの要素が開いた状態から閉じた状態に変更されました。残りの反復でさらに閉じられたギャップ要素はありません。
  • OPEN は、前回の反復から開くに変更されたギャップ要素の数です。この例では、5 回の反復のうち 2 回の反復それぞれで 1 つの要素が開くに変更されました。
  • frON と fOFF は、前回の反復から変更されて摩擦を追加されたか、除去されたそれぞれのギャップ要素の数です。
  • LOADFACT は、モデルに加えられた荷重です。
  • TOTALf は、摩擦のあるギャップ要素の合計数です。
  • CLOSED/TOTAL は、モデルのギャップ要素の合計数のうち、閉じられたギャップ要素の数です。
  • CRC-CHECK は、プロセッサによる解の振動の検出方法です。2 回の反復がすべてのギャップ要素に対して同じステータスです。処理を続行すると、プロセッサは同じ反復周期を無限に繰り返します。このような振動が検出されると求解は停止し、ログ ファイルには解が準周期的であることを示すメッセージが記載されます。
  • 解が収束し、正常な解が得られたことが示されます。別のメッセージでは、n 回の反復後も解に収束せず、準周期的な解が収束したことが示されます。周期解は、2 回の異なる反復で同じギャップ要素一式が開閉したことをプロセッサが検知したことを示すものです。システムによっては、静的解を求めるのにプロセッサの安定性に欠ける場合があります。この場合、境界要素を試しに追加してみます。別の選択肢としては、[解析パラメータ]ダイアログで接触パラメータを調整します。

境界要素をモデルのパーツの安定化に使用した場合は、[結果]環境で境界要素の軸力を確認できます。軸力の大きさは、モデルに加えられた荷重と比べて十分に小さくなければなりません。