スタートアップ

Inventor HSM 2015 は、Autodesk Inventor および Autodesk Inventor LT と完全統合された初のコンピュータ支援加工(CAM)アプリケーションです。Inventor HSM の 3 つのバージョンのとその機能の一覧を下に示します。
  1. Inventor HSM Express: Inventor LT と Inventor によってサポートされる 2D ミル機能です。
  2. Inventor HSM: Inventor LT と Inventor によってサポートされる 2D および 3D ミル機能と旋盤機能です。
  3. Inventor HSM Professional: Inventor LT と Inventor によってサポートされる 2D、3D および 5 軸ミル機能と旋盤機能です。
Inventor HSMのインストール後の Autodesk Inventor または Inventor LT の起動時に、Inventor コマンド リボンに[CAM]タブが追加されることに気づくでしょう。[CAM]タブのコマンドが表示されてアクティブになり、Inventor パーツまたはアセンブリ ファイルを作成するかまたは開くと使用できる状態になります。
制約事項: Inventor LT ではアセンブリはサポートされていません
また、Autodesk Inventor/Inventor LT でサポートされている種類の既存ファイルを読み込むことができます。これらのファイルの種類には、CATIA、SolidWorks、NX、Pro Engineer、SAT、STEP、IGES、その他多くの業界標準のファイル フォーマットが含まれます。

Inventor HSM リボンに用意されているコマンドを次に示します。



一度パーツまたはアセンブリ ファイルを読み込み、[CAM]リボンから加工法を選択すると、CAM ブラウザが使い慣れた Inventor のモデル ブラウザに置き換わりアクティブになります。CAM ブラウザによって、現在のパーツまたはアセンブリ内の加工に関するすべてのデータを表示および修正することができます。

最初の加工操作を作成するには、[CAM]ツールバーからツールパス加工法のいずれかを選択します。必然的に必要となるツールパスの種類は、パーツの図形によって異なります。個々の加工方法の詳細については、Inventor HSMのヘルプ トピック「2D 加工法について」および「3D 加工法について」を参照してください。

次の例では、パーツの内部キャビティを除去するために使用される、2D ポケット加工法を示しています。

通常ポケットなどの加工操作は、セットアップを作成して開始します。セットアップでは、ワーク座標系(WCS)、ストック図形、固定具、加工サーフェスなどの、一連の加工に関する多くの一般的なプロパティを定義します。最初の操作を追加する前にセットアップを手動で作成しない場合は、既定のパラメータを使用したセットアップが自動的に作成されます。セットアップを作成する方法の詳細については、ヘルプ トピックの「セットアップ リファレンス」を参照してください。

コマンド リボンから適切なアイコンをクリックして、ワークピース上で実行する最初の操作を選択します。この例では、 [CAM]タブ [2D ミル]パネル [2D ポケット] をクリックします。

要確認: 別の方法としては、グラフィックス ウィンドウの空白部分で右クリックし、使い慣れた Inventor のマーキング メニューを表示して、適切なマーキング メニュー ノードをクリックします。

ここでグラフィックス ウィンドウの左側にある CAM ブラウザ[操作]ダイアログ ボックスに置き換わり、選択した加工法の名前がタイトル バーに目立つように表示されます。加工法の名前のすぐ右が操作番号です。これはこのパーツの最初の 2D ポケット操作であるため、名前は 2D Pocket1 と表示されます。次の 2D ポケット操作は 2D Pocket2 と表示され、その後も同様です。この命名規則は、Inventor HSMのすべてのセットアップおよび加工方法に適用されます。


2D ポケット加工法の[操作]ダイアログ ボックスです。[工具]タブは既定でアクティブになっています。

[操作]ダイアログ ボックスには、新しい加工操作を作成する際にツールパスのさまざまな側面をコントロールするパラメータを持つ多数のセクションが含まれます。Inventor HSM は、可能な限りすべてのパラメータの既定値を提供しています。ツールパスを取得する際に唯一必要なのは、工具と加工する図形を選択することです。
ヒント: [操作]ダイアログ ボックスと CAM ブラウザを、組み合わせではなく 2 つの別々のウィンドウで表示するには、[CAM オプション]ダイアログ ボックスの[ユーザ インタフェース]タブで[CAM ブラウザに操作ダイアログを結合]設定を無効にします。CAM オプションに関する詳細については、ヘルプ トピック: 「CAM オプション リファレンス」を参照してください。

[工具]ボタンをクリックして、[工具ライブラリ]を開きます。ツリーを展開して工具ライブラリから既存の工具を選択し、[OK]ボタンをクリックして工具を選択します。または、[新規ミル工具]ボタンをクリックし、パラメータを編集して[選択]ボタンをクリックすることで、新しい工具を作成することができます。



工具ライブラリ からØ6 mm ボールミルが選択されました

工具を選択したら、[図形]タブをクリックし、加工する図形を選択します。2D ポケット加工法では、1 つまたは複数の閉じた輪郭を選択する必要があります。エッジ、面、サーフェスなどをクリックしてモデルから直接選択することもできますが、任意の 2D スケッチを直接使用することもできます。

2D 図形を選択した場合、輪郭は工具方向に平行な平面に投影されます。投影が正しく表示されない場合は、[図形]タブの[工具方向]セクションをクリックして別の平面を選択することで、工具方向を変更することができます。

ツールパスの生成に成功したら、CAM ブラウザで対応する操作を選択すると、モデルのトップに生成されたツールパスのプレビューを確認することができます。



シミュレーション

ツールパスをシミュレートするには、バックプロット シミュレーションまたはソリッド シミュレーションのいずれかを使用するオプションがあります。バックプロット シミュレーションを実行するには、CAM ブラウザから 1 つまたは複数の操作を選択し([Ctrl]キーを押したままマウスでクリックすると複数の操作を選択することができます)、[CAM]リボンの [CAM]タブ [ツールパス]パネル [シミュレート] をクリックします。



ストック シミュレーション

ソリッド シミュレーションを実行するには、[シミュレーション]ダイアログの[ストック]チェック ボックスをオンにします。



ポスト処理

Inventor HSM には、多数のカスタマイズ可能なポスト プロセッサが組み込まれています。呼び出すには、CAM ブラウザから 1 つまたは複数の操作を選択し、[CAM]リボンの [CAM]タブ [ツールパス]パネル [ポスト処理] をクリックします。



一般情報

複数選択

CAM ブラウザ内の項目の複数選択は、[Shift]キーと[Ctrl]キーを使うことで使用できます。

ログ メッセージ

CAM ブラウザの操作にオレンジ色のチェックマークがオーバーレイされている場合は、操作が正常に生成できなかったことを示します。問題またはエラーの説明を見るには、操作を右クリックし、ポップアップ コンテキスト メニューから[ログ表示]を選択します。ログには問題に関する説明が記載されています。

関連付けおよび再生成

Inventor HSMで操作を定義する場合、モデルに対するすべての関係は自動調整されます。モデルを変更する場合に、パラメータと選択を再定義する必要はありません。これらはモデルの変更や再構築をしても存続されます。ただし、操作が影響を受けるモデルのパーツを変更する場合は、操作を再生成する必要があります。

モデルの変更がツールパスの無効化を発生する場合は、CAM ブラウザの対応する操作とツールパス ノードに再生成記号(赤い十字)がオーバーレイされます。無効なツールパスを使用しようとすると、再生成が必要であることが通知されます。

すべての操作は、一度に、または個別に再生成することができます。一度に行うには CAM ブラウザで右クリックしてポップアップ コンテキスト メニューから[ツールパスを生成(すべて)]を選択します。個別に行うには 1 つの操作/ツールパス ノードを右クリックしてポップ アップコンテキスト メニューから[ツールパスを生成]を選択します。
ヒント: [CAM]リボンから、 [CAM]タブ [ツールパス]パネル [生成] をクリックして、再生成を必要とするすべての操作を再生成します。

ツールパスを再生成するときに、Inventor HSM [タスク マネージャ]ダイアログが表示されます。これにはツールパスの計算の進行状況が表示されますが、[非表示]ボタンをクリックして非表示すると、再作成を完了しながら作業を続行することができます。通常 2D ツールパスは生成をごく短時間で行いますが、図形と許容差によっては、3D 加工法の一部を計算するにはかなりの時間がかかる場合があります。[タスク マネージャ]ダイアログが非表示の場合は、 [CAM]タブ [管理]パネル [タスク マネージャ] をクリックして表示設定を復元することができます。

アセンブリの使用

制約事項: Inventor LT ではアセンブリはサポートされていません

パーツまたはアセンブリ内に作成した加工操作は、生成されたツールパスを含めて、Inventor ファイルに保存されます。この Inventor HSM データは、Inventor HSM アドインがインストールされていないシステムで編集された場合でも、ファイル内で残されます。パーツまたはアセンブリ ファイルから Inventor HSM固有のデータを削除するには、CAM ブラウザからのすべての操作を削除し、ファイルを保存します。

加工操作のツールパス データによって、ファイルのサイズが大幅に増加する場合があることがわかります。電子メールなどでファイルを送信する場合は、送信前に不要なツールパス データをファイルから削除することができます。ドキュメントを保存する前に、操作を右クリックして[ツールパスをクリア]を選択します。受信者は、パラメータのみを含むファイルからツールパスを再生成することができます。

Inventor HSM 固有のデータを設計モデルに追加したくない場合は、Inventor HSM データとは別にアセンブリを作成して、アセンブリ コンポーネントとして加工するパーツを挿入します。このコンポーネント パーツ ファイルは、Inventor HSM アドインから影響を受けません。加工データとツールパスは、操作のために定義する任意の追加の参照図形(座標系など)とともに、アセンブリ ファイル内だけに存在します。

メートル法またはヤード ポンド法

Inventor HSMは、パラメータに対してインチまたはミリメートルの入力をサポートしています。Inventor ドキュメント システムの単位でメートル単位が選択されている場合、パラメータ単位はミリメートルに設定されます。これは、インチ単位にも適用されます。工具のパラメータは工具図形の単位で指定します。

3 + 2 加工

既定では、新しい操作は、現在のセットアップの WCS (ワーク座標系)を使用して作成されます。既定の WCS が間違っている場合は、[セットアップ]ダイアログ ボックスで変更できます。1 つの操作の工具方向だけを変更するには、操作の[図形]タブを開き、[工具方向]セクションで、設定を変更します。

工具方向は、次のいずれかとして指定することができます。

最も一般的なケースでは、[点と平面を使用する]を使用すると、工具の原点として任意の点または頂点を選択でき、また方向として任意の、面、エッジ、または面を選択できるので、これが工具方向を定義する最も簡単な方法です。

操作を選択すると、工具方向を示す小さな座標系がモデルの上に描画されます。座標系は、工具方向の原点に配置されます。赤、緑、青の矢印は、それぞれ X、Y、Z 軸に対応します。加工は常に正の Z から負の Z に向かって(たとえば、青い矢印の反対)行われます。



[境界]

境界を指定することによって、1 つまたは複数の領域に対するすべての加工操作を制限することができます。使用する既定の境界は、加工しているパーツ図形の境界領域です。パーツ図形または選択のシルエット曲線、たとえばエッジのチェーンを選択して、加工の領域を制限することができます。境界はネストすることができますが、その境界自体または他の境界と交差することはできません。

取残し粗取り

前の操作でクリアされなかった領域内において大きい工具の後に小さい工具を使用して作業することにより最も効率的な粗取りをすることができます。

これを実現するには、Inventor HSM は、残りの材料のストック モデルを使用してエアー切削を回避します。ストック モデルは、前の操作から生成するか指定することができます。非常に大きなワークピースでは、場合によっては複数の取残し粗取り段階が必要になり、各段階で前の操作よりも小さい工具を使用します。取残し粗取り段階の数に制限はありません。

取残し材料加工

より小さい工具を使用して取残し材料を除去するために、Inventor HSM 加工法を使用することができます。どちらでも最適な方を使用します。加工する領域は、前の操作で使用した工具および加工方法によって定義されます。