カーブ フィッティング

超弾性およびフォーム材料モデルの材料特性入力ダイアログ ボックスには、[カーブ フィット]ルーチンが含まれます。 カーブ フィットは、材料に関するユーザ設定の応力-ひずみデータの最適フィット計算を実行することによって、数学的材料モデルの定数を特定する際に使用します。テスト データに正確にフィットする解はないことに留意してください!テストと材料におけるばらつきにより、テスト データにおける拡散がもたらされます。このため、曲線フィット ルーチンにおける高い精度は多くの状況で正当化されません。重要なことは、曲線フィット ルーチンの結果は、対象範囲のテスト データに従うという点です。

各材料モデルには、その必要性に特有のオプションがあります。以下に説明する項目のいくつかは、材料モデルによっては関連しません。[カーブ フィット]ダイアログ ボックスの一般的なレイアウト(図 1)とその説明を以下に示します。

図 1L: Ogden の[カーブ フィット]ダイアログ ボックス(ダイアログ ボックスの左半分)

図 1R: Ogden の[カーブ フィット]ダイアログ ボックス(ダイアログ ボックスの右半分)

表のデータ セクション:

このセクションは、材料に関する既知の応力-ひずみデータを入力するために使用されます。まず、テスト データの取得時には次の事項に留意することが重要です。

入力できるテスト データのタイプは次のとおりです。

[表のデータ]セクションの任意のボタンをクリックすると、応力およびひずみデータが入力された新しいダイアログ ボックスが表示されます。使用できるコントロールは次のとおりです。

[パラメータ]タブ

一部の材料モデルは、最小二乗フィット ルーチンを開始するのに概算値または推定値を必要とします。これらのパラメータは[パラメータ]タブに、カーブ フィットの試行前に入力する必要があります。 入力するパラメータは[コントロール]タブで選択されたカーブ フィット法のアルゴリズムに応じて異なります。

[部分的な線形最小二乗法]:この検索方法によって、最初の推定値に基づくすべての可能な係数の組み合わせが計算され、エラーが最小となる組み合わせが報告されます。 すべての組み合わせが計算されるため、この方法は、特に大きな増分値が使用される場合にはその他の方法よりも時間を要することがあります。また、範囲外の解がテストされるため、小さなエラーを伴う解が存在することに注意してください。プロットされた結果がデータにフィットしない場合は、異なる範囲を試してください。入力は次のとおりです。

[Levenberg-Marquardt アルゴリズム]、[ガウス-ニュートン アルゴリズム]、および[拘束された最適化]: これらの方法は最初の推定値から開始され、最適フィットの計算式に対して最初の最小値(エラー関数の勾配は 0)を割り当てます。複数の変数が使用されると数多くの最小値が生じることがあるため、解の精度は最初の推定値に依存します。図 2 を参照してください。

エラー

[コントロール]タブ

[カーブフィットコントロール]セクション:

カーブフィット コントロールは、テスト データがカーブ フィッティング ルーチンでどのように使用されるか(カーブ フィット計算にどのテスト データを含めるか、モデルのオーダ、データのフィッティング方法など)を示すために使用されます。

[カーブフィット案の結果]セクション

このセクションには、カーブ フィッティングにより計算される材料モデル定数が示されます。定数がデータへのフィットに与える影響を確認するには、値を変更して、[表示されたデータのタイプ]を選択してグラフを更新します。

これらの値は、[OK]ボタンをクリックして[カーブ フィット材料データ]ウィンドウを閉じると、[カーブ フィット材料データ]ウィンドウから[要素の材料指定]ウィンドウにコピーされます。

さまざまな材料モデルで次の計算式が使用されます。

[カーブフィットの入力データを比較]セクション

このセクションには、表形式のテスト データと近似曲線が示されます。[表示されたデータのタイプ]ドロップダウンを使用すると、グラフに表示するデータを選択できます。データが入力されているタイプであれば、そのデータがカーブ フィットで使用されているかどうかにかかわらず表示できます。(カーブ フィット ルーチンで使用されていないデータには、データに十分にフィットしない定数が含まれていることが多くあります。このため、近似曲線は表形式のデータに沿わない可能性が高いです。)

材料モデル定数を手動で変更すると、グラフは自動更新されません。 グラフを更新するには、[表示されたデータのタイプ]で再選択します。

カーブ フィットの例

Ogden 材料モデルでの単純引張、等二軸、および純せん断のテスト データを使用した例について検討してみましょう。

  1. ブリックまたは 2D 要素を伴うモデルを非線形の解析タイプに設定します(非線形材料による静解析または非非線形材料による MES 解析)。テスト データは MPa で与えられるため、モデル単位はニュートンおよびミリメートルとする必要があります。(1 MPa = 1 N/mm^2)
  2. 要素定義を編集します。パーツの[要素定義]を右クリックして、[要素定義を編集]を選択します。 [材料モデル][超弾性: Ogden]に設定します。 [OK]をクリックします。
  3. 材料特性を編集します。パーツの[材料]を右クリックして、[材料を編集]を選択します。 [カスタム]を選択して、[プロパティを編集]ボタンをクリックします。Ogden 材料モデルの定数が不明な場合は、直接入力することができます。材料テスト データ(以下)が得られたため、[カーブフィット]ボタンをクリックします。
  4. 単純引張り応力-ひずみテスト データを入力するには、[単純引っ張り]ボタンをクリックします。 スプレッドシートに行を追加して以下のデータを入力するか、以下のテキストを(拡張子が .CSV の)テキスト ファイルにコピー&ペーストして、[インポート]を使用してデータに読み込みます。完了したら[OK]をクリックします。
  5. 同様の方法で、等二軸応力-ひずみテスト データを入力します。[等二軸]ボタンをクリックします。スプレッドシートに行を追加して以下のデータを入力するか、以下のテキストを(拡張子が .CSV の)テキスト ファイルにコピー&ペーストして、[インポート]を使用してデータに読み込みます。完了したら[OK]をクリックします。
  6. 同様の方法で、純せん断応力-ひずみテスト データを入力します。[純剪断]ボタンをクリックします。スプレッドシートに行を追加して以下のデータを入力するか、以下のテキストを(拡張子が .CSV の)テキスト ファイルにコピー&ペーストして、[インポート]を使用してデータに読み込みます。完了したら[OK]をクリックします。
  7. [コントロール]タブで、テスト データそれぞれについてチェック ボックスをアクティブにします。
  8. Ogden 材料モデルの場合、パラメータのうち 1 つのみに関する見積もり値(α値)が要求される[部分的な線形最小二乗法][カーブフィット法]が手始めとして適切でしょう。 プルダウンからこの方法を選択します。その他の設定は既定のままにします。[体積弾性率オーダ]は、体積データが入力されていないため灰色表示となっていることに注意してください。
  9. [パラメータ]タブで、[Alphaの推定値][範囲値]、および[増分]を次のとおり設定します。このようにすることで、使用する解に対して適度に広範な値が与えられます。増分 20 はおおよその値となりますが、すべての順列を計算するのにそれほど時間を取らないため、初回実行時には適切な近似値となります。推定値は Ogden 材料モデルの既定値であることに注意してください。
    オーダ Alpha の推定値 範囲値 増分
    1 1.2 10 20
    2 -2 10 20
    3 6 10 20
  10. [コントロール]タブで、[カーブフィットを実行]ボタンをクリックしてから[フィット]ボタンをクリックします。二乗平均平方根エラーは 0.184 で、最大応力に比べて相対的に大きくなります。[完了]ボタンをクリックします。
  11. [表示されたデータのタイプ]プルダウンを使用して、各カーブ フィット データ(単純引張、等二軸、および純せん断)のグラフを確認します。各曲線はテスト データに十分適切に沿っています(等二軸が最も逸れます)。このため、見つかる定数は正しい大きさ順になります。
  12. 適切な見積もり値を把握したところで、[カーブフィット法][Levenberg-Marquardtアルゴリズム]に切り替えます。その推定値を、以前に見つけられた解を使用して、[パラメータ]タブに入力します。見積もり値は正確でなくてもよいため、次のような概数値で十分です。
    オーダ Mu の推定値 Alpha の推定値
    1 -0.16 6.2
    2 4.4 0.5
    3 0.026 9
  13. [コントロール]タブで、[カーブフィットを実行]ボタンをクリックしてから[フィット]ボタンをクリックします。二乗平均平方根エラーは 0.183 で、前回のフィットより良好になることはほとんどありません。しかし、この解法が部分的な線形最小二乗法よりいかに速いかに着目してください。
  14. 異なる初期値で追加の試行を行い、別の最小値を見つけることもできますが、より高いオーダ モデルを試行することの方が生産的であると考えられます。[コントロール]タブで、[モデルの順序]を 5 番目に、カーブ フィッティング法を[部分的な線形最小二乗法]に設定します。 [パラメータ]タブで、推定値を次のとおり入力します。 2 つの注意点があります。第一に、モデルのオーダが変更されたため、前回の解で見つけられた定数は、Levenberg-Marquardt のようなより効率的な解法アルゴリズムにおいて一般的には関連性のない推定値となります。この場合、部分的な線形最小二乗法でやり直すことをお勧めします。第二に、増分値が以前よりも下げられたことに注意してください。計算では、最初のオーダαのすべての組み合わせが、2 番目のオーダαのすべての組み合わせで行われ、このように進んでいくため、5 番目のオーダの解で多くの計算を早く作成することができます!より小さい増分値は、カーブ フィッティング ルーチンに掛かる時間を最小限に抑えるために使用されます。
    オーダ Alpha の推定値 範囲値 増分
    1 1.2 10 10
    2 -2 10 10
    3 6 10 10
    4 19 10 10
    5 1 10 10
  15. [コントロール]タブで、[カーブフィットを実行]ボタンをクリックしてから[フィット]ボタンをクリックします。二乗平均平方根エラーは 0.142 です。予想されたとおり、[表示されたデータのタイプ]下のそれぞれの曲線は、テスト データによりフィットします。結果を図 1 に示します。追加の試行を行うことができますが、テスト データの精度を考慮すると、このカーブ フィットを許容可能とするべきです。

単純引張のテスト データ

0,0

0.02,0.08

0.06,0.12

0.28,0.30

0.47,0.4

0.67,0.57

0.77,0.7

0.82,0.78

0.85, 0.9

0.89, 1.0

等二軸のテスト データ

0,0

0.02,0.14

0.06,0.25

0.12,0.4

0.28,0.6

0.43,0.8

0.57,0.95

0.65,1.16

0.72,1.4

0.80,1.72

0.89,2.4

純せん断のテスト データ

0,0

0.02,0.08

0.07,0.2

0.20,0.37

0.59,0.71

0.73,0.92

0.83,1.1

0.89,1.28