法線バンプ マップのトラブルシューティング

さまざまなジオメトリがあり、さまざまな状況が発生する可能性があるため、法線バンプ マップでは予期せぬ結果となることがあります。通常は、それらの問題には回避策があります。また、回避策が複数あることもあります。このトピックでは、発生する可能性がある状況、およびそれを修正する方法について説明します。

平行投影による詳細の喪失

投影ケージを設定しているため、投影された光線が高解像度ジオメトリの一部に平行に進む場合は、ジオメトリのその部分が法線バンプ マップで失われることがあります。

たとえば次のシーンの場合、法線バンプ マップは、上部と下部がへこんでいる高解像度円柱に基づいています。

高解像度円柱周囲の既定値ケージ

しかし、法線バンプ マップには、上下のへこみが表示されません。

円柱の法線バンプ マップの上下にへこみがない状態

既定値の投影ケージを使用した場合は、へこんでいる側面と光線が平行になり、詳細が失われるためです。

へこんでいる側面と投影光線(赤で表示)が平行な状態

この問題を解決するには、ケージの端を上に移動して内側に少しスケールし、へこんでいる側面と光線が平行にならないようにします。

投影ケージの上端を上げてスケールした状態

この方法でケージを調整すると、へこみが法線バンプ マップに表示されます。

ケージを修正すると、上のへこみが法線バンプ マップに正しく表示されます。

ヒント: このような問題には、詳細がマップから欠落している低解像度オブジェクトの領域の頂点で[ブレーク](Break)を使用するという解決策もあります。これを実行すると、ケージの頂点数が増加し、ジオメトリが欠落する可能性が低くなります。この手法を使用する場合は、投影ケージをさらに調整する必要が出てくる可能性もあります。

低解像度頂点のブレークにより、法線バンプ マップでへこみがレンダリングされます。しかし投影によってジオメトリの一部の領域が欠落するので、ケージをさらに調整する必要があります。

接線スペースにおける反転されたシーム

法線バンプマップで接線スペースを使用する場合、通常、接線の値は、ハードウェア シェーダ、レンダラー、サードパーティ アプリケーション間で共通です。しかし、ジオメトリの一部が相互に反転され、レンダリング時やハードウェア シェーダの使用時に不連続が生じることがあります。接線スペースは法線バンプ マップの既定値オプションであり、アニメートするキャラクタなど、移動と変形の両方を行うオブジェクトには、この手法を使用する必要があります。ワールド、画面、ローカルなどのその他の座標スペースを使用する場合、この問題は発生しません。

たとえば次のシーンでは、パンツに不連続性が表示されます。矢印で示されているように、相互に反転しています。

パンツのレンダリングで反転したシーム

左: 不連続な赤いストライプ。

右: 不連続な青いストライプ。

矢印は、マップの位置のずれを示しています。

法線バンプ マップをレンダリングすると、右側では赤い色の「フレア」、左側では青い色の「フレア」が表示されるように、反転した領域が一般的に表示されます。

修正していない法線バンプ マップでは、青と赤の「フレア」が表示されます。

フレアが表示されるサブオブジェクト選択、つまり赤が過剰な領域で、[UVW アンラップ](UVW Unwrap)モディファイヤの[水平に反転](Flip Horizontal)コマンドを使用して解決してください。

[水平に反転](Flip Horizontal)を使用して修正した法線バンプ マップ。青が優勢な状態で、赤と青がより均等に分散されます。

マップを修正すると、3ds Max かハードウェア レンダラーかにかかわらず、完全なレンダリングがより良く表示されます。

修正した法線マップでは、不連続性なしでよりスムーズにレンダリング。

矢印は、マップの位置が正しく合い、パンツの脚の周囲にラップしていることを示しています。

mental ray レンダラーを使用した法線バンプ マップのレンダリング時のノイズ

mental ray レンダラーを使用して法線バンプ マップをレンダリングし、モデルの面が重なっている場合(低解像度オブジェクトと高解像度オブジェクトが空間内で重なっている場合など)、法線バンプ マップでは、面が重なっている場所でノイズが表示されることがあります。

赤い領域は面の重なりから生じるノイズ

高解像度オブジェクトか低解像度オブジェクトのどちらかを調整し、面が一致しないようにしてください。この調整を行う方法として、[プッシュ](Push)モディファイヤを使用することが挙げられます。法線マップを生成した後で、[プッシュ](Push)モディファイヤをオフに切り替えることができます。

ヒント: シーン内の別のオブジェクトが原因でマップ レンダリングの問題が解決しない場合は、そのオブジェクトの[オブジェクト プロパティ](Object Properties)ダイアログ ボックスを表示して[レンダリング制御](Rendering Control)領域で[反射/屈折に対して可視](Visible To Reflection/Refraction)のチェックマークを消し、法線投影でそのオブジェクトを非表示にします。

UV 座標の重複

UV 座標の重複は、[テクスチャをレンダリング](Render To Texture)でレンダリング エラーとなることがあります。この問題は、UV がミラー化されている、マッピングが左右対称のオブジェクトで特に明確になります。UV がミラー化されているキャラクタやその他のモデルに対して作業を行う場合、以下の手順に従うことをお勧めします。

  1. [アンラップ](Unwrap)モディファイヤを追加するか、シンメトリが存在する既存の[アンラップ](Unwrap)モディファイヤに移動します。
  2. W 軸上の重複しているテクスチャ座標の半分を移動して、残りの半分から少しオフセットするようにします。

    [テクスチャをレンダリング](Render To Texture)では、W の値が高い方のテクスチャ座標が使用されます。

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤによる法線バンプ マップの不正

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを低解像度オブジェクトに適用しないでください。法線バンプ投影は標準的な法線を含む低解像度オブジェクトに依存しており、この法線を変更すると、法線バンプ マップで予期せぬ結果となります。