付録 A.6: 繊維破損後剛性(FPSTIF)および繊維劣化エネルギー(FDE)

FPSTIF

FPSTIF フィールドは、瞬間的な劣化を使用した場合に、繊維破損後の複合材料の応答を定義するために使用します。具体的には、繊維構成の破損が発生した後の、破損した繊維構成係数と破損していない繊維構成係数との比率です。一方向材料では、0.01 の値は、特定の積分点で繊維破損が発生した後、6 つの繊維構成係数(e11 supfe22 supfe33 supfg12 supfg13 supfg23 supf)が、その積分点においてすべて元の損傷していない繊維構成係数の 1% にまで低減することを指定します。織物材料では、0.01 の値は特定の積分点で繊維破損が発生した後、3 つの繊維構成係数(e11 supfg12 supfg13 supf)が、その積分点における元の損傷していない繊維構成係数の 1% にまで低減することを指定します。繊維破損後剛性値は 0 (ゼロ)より大きく、1 以下である必要があります。

注: Helius PFA の現在の実装では、繊維構成破損に応答して、一方向材料では繊維特性の等方性劣化、織物材料では繊維特性の直交異方性劣化が適用されます。

織物複合材料では、繊維破損後剛性を指定した場合、PFTYPE フィールドの値を 2 に設定する必要があります。PFTYPE フィールドの値を 1 に設定した場合、FPSTIF フィールドは無視されます。

FPSTIF フィールドの値は、多層の複合材料構造の予測される進行性破損の応答に顕著な影響を与える可能性があります。これは、この定数がローカルの繊維構成の破損発生後に、ローカル荷重が再配分される速度に大きく作用するためです。したがって、FPSTIF の値が 1.0 から 0.0 へ向かって減少すると、1 つのローカルの繊維破損によって大量のローカルの繊維破損が一気に発生する傾向が強くなります。発生する繊維破損の度合によっては、全体的な構造応答に顕著な軟化が見られることでその結果を識別できる場合がありますが、構造全体が破損するまで大量の破損の発生が識別されない場合もあります。

FDE

FDE フィールドは、エネルギー ベースの劣化を使用した場合に、繊維破損後の複合材料の応答を定義します。具体的には、この値は繊維破損前後に、複合材料で散逸されるエネルギーの合計となります。

エネルギー ベースの劣化を要求した場合、この値は繊維破損イベント前後の複合材料のエネルギー合計となります。繊維破損イベントの発生後、e11 supfg12 supf、および g13 supf は、付録 A.7 の繊維破損後に関する記載に従って線形に劣化します。初期繊維破損を超えて複合材料のひずみが大きくなると、複合材料の特性は繊維劣化エネルギー入力値、破損時の複合材料の応力とひずみ、要素の体積に基づいて低減します。繊維劣化エネルギーの詳細については、「理論マニュアル」を参照してください。

注: 繊維破損後、母材も破損したと見なされ(実際に破損したかどうかに関係なく)、構成の特性は破損を計算する必要がなくなります。したがって、繊維破損後は構成の特性は更新されません。

繊維破損前に母材構成が破損した場合、e22 supfe33 supf、および g23 supf は母材劣化エネルギーに応じて劣化します。それ以外の場合、e22 supfe33 supf、および g23 supf は、繊維劣化エネルギーに応じて劣化します。

注: 繊維劣化エネルギーに指定された値が低すぎる場合、繊維破損基準が 1.0 を超えると、複合材料の特性は(段階的ではなく)瞬間的にゼロ近くまで低減します。詳細については「付録 A.7」および『理論マニュアル』を参照してください。