設計安全率を選択する際に考慮する要因
例: 鋼の等級に 40,000 psi 降伏強度がある場合、この限界を超える応力は、何らかの永続的な変形をもたらします。設計が降伏限界を超えることにより恒常的な変形を受けることを想定していないとすると(多くの場合)、この場合の最大許容応力は 40,000 psi になります。実際の応力が 40,000 psi になる場合、安全率は 1.0 です。安全率を 2.0 にする場合は、材料の強度を 80,000 psi にするか、設計を変更して最大応力を 20,000 psi に低減する必要があります。
一般的に、設計の応力の大きさは、材料の降伏強度よりも大幅に低い値に制限されます。つまり、安全率は 1.0 よりも大幅に高くなります。安全率を 1.0 よりどのくらい大きい値にすべきかに関しては、いくつかの考慮事項によります。
- 安全率は、仮定や簡素化による不正確さ、またはモデリング、設定、解析のプロセスおよび材料特性における未知の項目を原因とする不正確さに対応するためのものです。仮定の数を大きくしなければならない場合、または想定される特性と条件がより不確実な場合、設計安全率はより慎重に設定すべきです。
- 安全率により、動的な荷重に対する許容範囲を設けることができます。荷重が突然適用される、あるいは周期的(動的)な場合、静的応力解析の予測よりも大きな応力が生成されます。動的な効果を考慮するために適用荷重を誇張するか、または必要となる安全率を増加させることで対処できます。
- 材料が反復的な荷重サイクルを受けやすい場合、降伏強度よりずっと低い応力が加わっても、疲労が原因で破壊を招くことがあります。 設計安全率を選択する際、疲労条件下(材料の疲労限度とも呼ばれる)では、許容応力の低減を考慮する必要があります。
- 仮定される材料特性の信頼性を考慮します。大きな鋳物には、材料の強度をローカルに削減する空隙率または汚染物質が含まれている場合があります。一方で、圧延、熱間鍛造または冷間作業材料は改善された粒子構造を持ち、その特性にはより信頼性があります。特定のグレードの材料の化学混合物は、バッチごとに異なる場合があります。材料特性の信頼性にやや自信が持てない場合は、設計安全率を増やす必要があります。
- パーツの表面仕上げを考慮します。粗い表面に沿った不完全な部分は応力集中領域となり、計算された何らかの値よりも大きな値として表面の応力を効果的に増加させます。研削および研磨あるいは細かい加工が施された表面は、火炎切断や粗い加工の表面よりも優れています。粗い仕上げの場合は設計安全率を増やすようにします。
- 腐食が原因となり、予測される材料の損失と粗さが増す表面の許容値を設定します。標準的な環境要因でも、化学物質による腐食であっても、劣化は時間の経過とともに発生するため、構造物およびパーツを安全に維持する必要があります。
- 設計の重量は重要度に則しているでしょうか。たとえば、航空機の設計や航空機に搭載する器材の重量などです。このような場合、過度に最適化できないため、より小さい設計安全率が一般的です。ただし、材料特性のモデルの設定と信頼性の最高の精度を同時に確保する必要があります。このタイプの設計作業は、簡素化と仮定によりエラーを最小限に抑える必要があります。
- 最後に、破壊の影響を考慮する必要について説明します。パーツの破壊によってもたらされる損害が軽く、修復が容易な場合、影響は比較的少なくなります。反対に、パーツの破壊によって重大で壊滅的な破損をもたらし、深刻な怪我あるいは死に至るような可能性がある場合は、より大きな安全率を保障しなければなりません。たとえば、カメラを取り付けるブラケットよりもエレベータの設計には高い安全率を使用する必要があります。