Alias 13.0 では、曲率連続性を評価する方法が変更されました。この章では、変更内容と変更理由、およびモデリング プロセス時の結果の解釈方法について説明します。
Alias の以前のバージョンを使用しているユーザにとって、この新しい手法は従来の曲率連続性の評価方法とは大幅に異なるでしょう。
この章の目的は、今回の変更がモデルの精度の評価に対し、重大な影響を及ぼすものではないことを示し、サーフェス境界の曲率連続性チェックの結果への理解を深めてもらうことにあります。
Alias 13.0 からは、旧バージョンで使用していた絶対相違チェックではなく、相対チェックを使用して曲率連続性を評価します
この場合の曲率は
すなわち
(1)
(2)
曲率連続性の計算方法が変更され、サーフェス トランジションの制御性と精度が向上しました。特に、バージョン 13.0 では次の理由から相対チェックが導入されました。
曲率連続性チェックは、相対曲率連続性チェックを使用することで大幅に精密化されました。
たとえばバージョン 12.0 では、3 番目の曲率 CV を自由に移動しても、曲率評価が許容値内で維持される場合がありました。R1 と R2 が 10 センチメートルよりも大きく、1/R1 – 1/R2 が許容値 0.1 未満であるかぎり、3 番目の曲率 CV は曲率連続性のブレイクなしに変更することができました。
これに対して、V13.0 以降の曲率連続性チェックは精密になり、フラグエラーが厳正になりました。
バージョン 12.0 では、モデルがスケーリングされると曲率偏差が変更したため、モデルをスケーリングするだけで曲率連続性を許容値内で実現することができました。これはサーフェスの半径の値が大きくなるにつれ、2 つのサーフェス間の曲率不連続性が肉眼で確認できなくなるため、許容範囲内とみなすことができたのです。
バージョン 13 以降では、サーフェスがスケーリングされて半径が平坦であるとみなされるほど大きくなるまで、モデルの拡大/縮小スケーリングによって曲率偏差は変更されません。平坦なサーフェスは、新しい曲率連続性計算では重要な検討事項です(「平坦なサーフェス」を参照)。
曲率連続性評価はサーフェス間のトランジションと、サーフェス境界の強調表示フローの精度を示します。許容できるトランジションと美しい強調表示を得るために、両方のサーフェス境界上の半径の値を同じにする必要はありません。値がわずかに異なると、曲率偏差値が 0.1(曲率許容値)より大きくなり、Surface continuity ツールの使用時に黄色または赤色のロケータが表示されますが、それでも強調表示の精度に問題はない場合があります。曲率ロケータは曲率連続性を判断する要素の 1 つにすぎず、曲率偏差値、強調表示、断面の曲率コームなどで判断する必要があります。さらに、曲率ロケータが失敗を示している場合であっても、これらの要素によって目的の結果が得られる場合があります。
Surface continuity ツールまたは Information Window で Show Edge Labels をオンにし、マウスの右ボタンでロケータのサンプル ポイントをクリックすると、曲率の半径の値と曲率偏差が表示されます。サンプル ポイントの数は、マウスの中ボタンを上または右にドラッグすると増加し、下または左にドラッグすると減少します。
境界に沿った曲率の半径の値は、曲率を測定する方向によって異なります。Alias で使用される方向は、サーフェス間の共通の境界に直交します(90 度)。
Surface continuity ツールまたは Information Window で Show Comb をオンにすると、曲率コームが表示されます。次の図のように、曲率コームが途切れて表示される場合が あります。これは連続性不良の種類に変化があったことを示しており、個々の CV を操作するときに便利です。
曲率連続性偏差の相対計算を使用する場合、1 つの半径が増加するにつれ、曲率偏差の値は 1.0 に近づきます。
曲率に視覚的な問題があるとは限らず、いずれかのサーフェスの曲率半径が無限端に高い値に近づいていることを通知する必要があるのです。完全に平坦なサーフェスとは、無限の曲率半径を持つものです。したがって、この条件には FLAT というフラグが立てられます。100,000 センチメートルよりも大きい半径は無限とみなされます。曲率評価では、共通の境界の 1 つのサーフェス上の半径が無限であり、もう 1 つのサーフェスの半径が無限でない場合にかぎり、FLAT というラベルが付いた黄色のロケータが表示されます。両方の半径が無限である場合は、曲率偏差はゼロに近づき、曲率評価チェックはクリアされます。
このような(連続性チェック ロケータのカラーで示される)不良条件が確認されても、明瞭な曲率ブレイクが発生しているとは限りません。これは潜在的な問題の可能性を示しており、強調表示ライン(縞模様)、断面の曲率コームなどの他のダイアグノスティックツールを使用して、結果を許容できるかどうかを判断する必要があります。
連続性チェックにおいて平坦なサーフェスを示す方法は Alias 特有ではなく、他の多くのエンジニアリングまたは CAD ソフトウェア パッケージでも一般的に使用されています。
これに対して、曲率偏差の絶対手法(従来の方法)では、2 つのサーフェスの曲率が結合部で大きく異なる場合でも、多くの場合は曲率連続性が得られます。これを確認するには、公式(1)で R1=10 と R2=1000 に入れ替えてください。結果は 0.099となり、既定の許容値0.1よりも小さくなります。
バージョン 13.0 では曲率連続性の計算方法が異なるため、その許容値(Construction Options の Continuity Curvature)の意味も異なります。
Alias では、許容値は 0.0~1.0 の数字で表されます。
他のソフトウェア パッケージでは、許容値はパーセンテージで表されます。たとえば Alias で 0.1 の値は、他のパッケージでは 10% の値に相当します。このことを考慮して、該当システムに対応する Alias の値をマップする必要があります。
環境変数 ALIAS_G2_INFINITY_TOL に無限の半径とみなされる値を設定することができます(センチメートル単位)。
曲率連続性チェック時に平坦なサーフェスを判定するとき、この値よりも大きい半径は無限とみなされます。Alias の既定値は 100,000 センチメートルです。
この値を大きくすると、FLAT の表示頻度が低くなりますが、代わりに 0.999 といった曲率偏差値(1.0 に近い値)が表示されます。
この値を小さくすると、両方のサーフェスの半径がこの値よりも大きく、曲率連続性チェックを通過したことを示すため、結果として緑色の曲率連続性ロケータの表示が多くなります。
後に、モデリング時に曲率連続性評価を使用する場合の留意点を挙げます。