静水圧

注: このセクションの情報は、静水圧荷重をサポートするすべての線形解析および非線形解析に適用されます。

静水圧は、流体の深さが増加する方向に流体のレベルから線形的に変動します。静水圧の大きさは、(流体密度) x (流体サーフェス下の深さ)となります。

静水圧は、プレート要素、シェル要素、ブリック要素、3D 運動要素、非線形の膜要素、3D ガスケット要素、4 面体要素に適用できます。既定では、圧力は要素の面に対して垂直です。

静水圧の適用

サーフェスを選択している場合は、表示領域を右クリックして[追加]プルアウト メニューを選択し、[表面静水圧]コマンドを選択します。このコマンドは、リボンでも使用できます([セットアップ] [荷重] [静水圧])。

サポートされている要素タイプに静水圧を適用するには、次の手順を実行します。

  • 静水圧を発生させる流体の重量密度を[流体密度]フィールドで指定する必要があります
  • 静水圧はすべての方向に沿って増加できます。[流体表面上のポイント]領域の[X][Y][Z]フィールドで流体上部のポイントを指定します。このポイントの下にある要素だけが圧力を受けます。
  • [流体サーフェス法線]領域で流体サーフェスに対して垂直なベクトルおよび流体に向かうポイント(流体の深さと重力が増加する方向)を指定します。 サーフェス法線が、全体座標軸に対して整列されている場合、[流体表面上のポイント]の値の 1 つのみが重要になります。
  • プレート要素(線形解析)および一般シェル要素(非線形解析)の場合、[表面静水圧オブジェクトを作成]ダイアログ ボックス内に[面]セレクタが表示されます。プルダウン リストから[上面]または[底面]を選択します。底面は、[要素定義]ダイアログ ボックスで定義した要素の法線点に面する面です。一般シェル要素の場合、[面]セレクタで[両方][どちらもない]を選択することもできます。荷重を上面に適用するか底面に適用するかにかかわらず、方向は要素に向かった方向になります。
  • 過渡応答解析(直接積分)または非線形解析を実行する場合、圧力が従う荷重曲線を[荷重曲線]フィールドで選択します。
注: 2013 より前のソフトウェア バージョンには、 非線形 解析でのみ静水圧荷重の[乗数]フィールドが別にありました。このオプションは廃止されました。基本的に、新しい荷重はすべて不変の乗数 1 を基準にします。旧バージョンのモデルをバージョン 2013 以降で開く場合、結果として得られる荷重が等価になるよう従来の乗数に基づいて、指定の流体密度が増減されます。たとえば、バージョン 2012 以前で作成した非線形モデルがあるとします。このモデルには、流体密度が 0.025 の静水圧荷重があり、乗数 3 が適用されています。このモデルをバージョン 2013 以降で開くと、指定の流体密度は 0.075 (3 x 0.025)になります。

下の図 1 を参照してください。ポイント S は、流体の上面のすべてのポイントを表します。ベクトル V は、流体の深さが増加する方向です。濃い赤の線は、タンクを形成する要素のサーフェスです。壁に作用する圧力(Pv)は、深さの関数であり、流体サーフェスから下方向に移動するのに応じて線形的に増加します。既定の荷重方向は要素のサーフェスに対して垂直であるため、タンクの底面の圧力は垂直方向に作用します。

図 1: 静水圧

[静水圧オブジェクトを作成]ダイアログ ボックスには[圧力タイプ]オプションがあります。次の中から選択することができます。

  • [サーフェス法線方向]: 静水圧の値 = (流体密度) x (流体サーフェス下の深さ)、方向は各プレート要素に対して垂直です。下の図 2 (a)を参照してください。
  • [水平方向の全圧]: 静水圧の値は、通常どおり計算されますが、水平面に適用されます。 流体サーフェス法線ベクトルで定義したベクトルに平行な力の成分はありません。つまり、要素サーフェスの勾配に関係なく、方向は流体サーフェス法線に対して垂直となります。このオプションを使用する例として、傾斜状または曲線状の擁壁に対して作用する側面土圧をシミュレーションする場合が挙げられます。下の図 2 (b)を参照してください。
  • [水平の要素のみ]: 静水圧の水平成分のみが適用されることを示します(垂直成分 = 0)。 圧力の大きさは、(流体密度) x (流体サーフェス下の深さ) x sin(要素サーフェス法線方向と流体サーフェス法線ベクトル間の角度)となります。荷重方向は、要素サーフェスの勾配に関係なく、流体サーフェス法線ベクトルに対して垂直となります。下の図 2 (c)を参照してください。
注: 平底のタンクの底面など、要素サーフェスが水平である場合、要素サーフェスの法線方向と流体法線方向は平行になるため、静水圧の水平成分はゼロになります。この場合、[水平方向の全圧]または[水平の要素のみ][圧力タイプ]では、適用される静水圧が 0 になります。

(a) [サーフェス法線方向]

(b) 水平方向の全圧

(c) 水平成分のみ

図 2: 静水圧のタイプ

一般シェル要素に関する注意事項:

非線形一般シェル要素では、圧力荷重について要素の厚さが考慮されます。

(プレート、膜、共回転シェル、薄肉シェルなど、静水圧荷重をサポートするその他の平面要素では、圧力が中立面に適用されるものとされています。シェル要素のタイプは、[要素定義]ダイアログ ボックスの[高度]タブの[要素定式化]セレクタで設定します)

上記で説明したように、一般シェル要素には、静水圧を上面底面上面と底面に適用するか、あるいはどちらにも適用しないオプションがあります。

要素の上面と底面の領域は、無応力条件で等しくなりますが、大きな変位効果によりこれら 2 つのサーフェスは異なって伸張する場合があります。このため、上面に均一な圧力 -1000 が、底面に圧力 1000 がある場合、これらは視覚的には同一のもののように見えますが、結果は異なることがあります。 同じような状況が静水圧荷重で生じます。また、傾斜面または曲面の場合、厚さを考慮すると、流体が要素と接触する有効な流体の深さが変化するため、荷重を要素の上面に適用するか底面に適用するかに応じて静水圧は異なります。以下の図を参照してください。

(a)一般シェル要素。1 つは要素の上面に負の圧力が適用されたもの(図の左側)、もう 1 つは要素の底面に正の圧力が適用されたもの(図の右側)です。無応力条件では、上面および底面の領域は同じです。(要素の垂直ポイントは X によって示されます。)

(b)要素が伸張すると、上部および底部の領域も伸張します。このため、上部と底部で同じ圧力となる力の合計量は異なることがあります。この例では上部が底部よりも伸張しています。このため、上部に圧力を伴うモデルの力は、底部に圧力を伴うモデルの力よりも大きくなります。

(c)上の図は、厚さが一般シェル要素およびプレート要素の静水圧にどのように影響するかを示しています。X は、要素の法線点を表します。底面の流体の深さの範囲(Db1Db2)は、サーフェスの流体の深さの範囲(Dt1Dt2)と異なります。このため、静水圧荷重は、平面要素の上面に適用するか底面に適用するかに応じて異なります。この効果は、傾斜面、曲面、または水平面に沿った一般シェル要素の場合に生じます。

ヒント: 一定圧力と静水圧を組み合わせる方法

定圧力(P)および静水圧の組み合わせでも同じことが生じます。たとえば、部分的に水で満たされ、水の上の空気で加圧されたタンクなどが挙げられます。 2013 以降のソフトウェア バージョンでは、線形静的応力解析で複数のサーフェス荷重を 1 つのサーフェスまたはサーフェスのグループに適用できます。サーフェス圧力荷重として P を適用し、1 つまたは複数の同じサーフェスに静水圧荷重を追加します。

ただし、非線形解析を設定している場合、または別々の設計シナリオを使用するなどして、線形解析と非線形解析の両方の可能性を予期している場合は、別の方法が必要となります。非線形解析は複数のサーフェス荷重をサポートしていません。一定圧力と静水圧荷重の組み合わせを適用する方法は 2 つあります。

  1. 第 1 の方法は、実際の流体サーフェスよりも高さが高い自由サーフェス ポイントを指定する方法です。流体の上部およびそれより上の位置では、圧力は P になり、次の方程式を適用できます。

    P = (より高い自由サーフェスの座標 - 実際の流体サーフェスの座標)*(流体密度)

    より高い自由サーフェスの座標を除き、すべての値は既知のものです。このため、この値を計算および入力して静水圧を求めます。次のように前の方程式の項の配置を変更して、より高い自由サーフェスの解を求めます。

    より高い自由サーフェスの座標 = P/(流体密度) + (実際の流体サーフェスの座標)

    一定圧力 + 静水圧 = より深い位置の静水圧

    必然的に、図内の点線領域(水面上)ではなく、必要箇所(水面下)のみに静水圧が適用されるようにするために、モデルのサーフェス番号の調整が必要になる場合があります。定圧力は水位より上のサーフェスに適用されます。CAD ベースのモデルの場合、CAD アプリケーションでの表面分割は、これを行うのに適した方法です。ただし、Autodesk Simulation では、線のサーフェス属性も変更される可能性があります。

  2. この問題の第 2 の解法は、可変サーフェス荷重を適用する方法です。適切な座標方向の関数として方程式を定義し、線形的に増加する目的の圧力を求めます。前の例の場合、目的の領域への荷重を含めるために、CAD または FEA モデルのサーフェスを分割する必要が生じることがあります。可変サーフェス荷重の詳細については、「解析の設定と実行」の「一般情報(複数の解析タイプで共通)」の「荷重および拘束」の「 可変荷重 」を参照してください。