ベントのある、受動装置内の部品は自然対流、伝導、輻射により冷却されます。空気の温度の違いが密度の勾配をもたらし、空気を動かします。空気はベントを通って装置に流入し、流出します。空気の動き、伝導、輻射により発熱した部品から周囲環境へと熱が伝達されます。
受動的に冷却される、ベントのある装置内のフローは多くの場合層流であり、放熱には輻射が大きな役割を果たします。
適用事例
- 自動車分野:
- アンダーダッシュ エレクトロニクス
- 計器パネル エレクトロニクス
- アンダーフード部品
- ハイブリッドシステム エレクトロニクス
- 軍需アプリケーション
モデリング戦略
- ジオメトリの簡略により、無関係なフィーチャーを除去してください。シミュレーションに無関係なディテールを除去するには、板金部品の再構築または簡略化を行います。
- モデルでは、デバイス内に空気ボリュームを含む必要があります。多くの物理モデルにはこれが含まれていないため、注意しなくてはいけません。Autodesk Simulation CFD では、ジオメトリ モデルが密閉されている場合に、内部ボリュームを自動的に作成します。密閉されていない場合は、CAD モデルを修正してギャップをすべて閉じるか、内部流体ボリューム ツールを使用して Autodesk Simulation CFD モデルでボリュームを作成します。
- 境界条件と内部流れの間に十分な空間を確保するにはCADモデル内で開口部を拡張する必要があるかもしれません。(デバイスに開口部がある場合のみ)
- 多くのデバイス筐体は温度分布に対して多少の影響を与えます。CADモデルやメッシュからの抑制を検討してください。
材料
- 流れは浮力の影響を受けるため、空気材料の物性は変化を許容する必要があります。
- 非常に薄い筐体では、伝熱量が対流ではなく熱伝導によって大きく左右されます。用途によっては、流れを解析せずに伝熱を正確にシミュレートすることができます。これには空気と同じ物性値を持つカスタムの固体材料を作成します。固体空気材料についての詳細
- 輻射が含まれる場合は、流体および固体材料に対して放射(輻射)率を指定します。(流体材料に対し指定された輻射率は、流体が接触する固体および壁面にのみ適用されます。)
- バッフル、内部ファン、PCB、コンパクト熱モデル、および熱電子デバイス等のオブジェクトをシミュレートするには、材料デバイスを使用します。材料デバイスの使用に関する詳細
境界条件
- すべての開口部に[静ゲージ圧] = 0 を適用します。これは、開口部が周囲環境に露出していることをシミュレートするものです。
- 流入口温度が既知の場合、 温度 境界条件を指定します。そうでない場合、 温度 または 熱伝達率 を装置の側面に指定します。
- 周囲への伝熱をシミュレートするには、 熱伝達率 境界条件を外部サーフェスに適用します。値は物理デバイスを取り囲む空気に依存します:
- 空気が静止している場合、値は 5 W/m²K を指定します。
- 空気が動いている場合、値は 20 W/m²K を指定します。
- 参照温度 = 周囲温度 とします。
メッシュ
高品質な解析モデルのための基本的ガイドラインとして、メッシュ分布が流れと温度の勾配を効率的に計算するのに十分であることが挙げられます。流れに循環または大きな勾配がある領域(伴流、渦、分離領域など)では、より細かいメッシュが必要となります。
ほとんどのモデルでは、メッシュ分割に自動サイズを使用します。非常に細かい幾何フィーチャーについては、局所的なメッシュの細分割が必要となる場合があります。メッシュの自動サイズ設定とモデルの準備についての詳細
一部のケースでは、最小細分割長を調整し、細分割がメッシュ数に与える影響を低減する必要があるかもしれません。
急勾配の流れ領域でメッシュの局所的細分割を実施するには
- 幾何ボリュームおよびサーフェスにおけるメッシュ分布を調整します。
- 領域内に適当な幾何フィーチャーが存在しない場合には、メッシュ細分割領域を作成します:
- CADモデルに1つ以上のボリュームを追加します。
- メッシュ作成タスクで細分割領域を作成します。
実行
- 構成部品温度が比較的高い場合には、熱放射(輻射) = オンにします(輻射は多くの場合で安定化効果を持っています。一部のモデルでは、輻射の効果を軽視すると、実際の値よりも20%高い温度が生じる場合もあります。)。有効な戦略としては、輻射なしで200回の収束計算を行った後、輻射を有効にして、計算を継続する方法が挙げられます。これにより解析時間を短縮しながら、輻射の効果を検証することが可能となります。材料物性に適切な輻射率を指定することを忘れないでください。熱放射(輻射)のモデリングについての詳細
- 重力ベクトルを指定します。
- [乱流]: 通常、これらのアプリケーションにおける流れは層流となります。設定ダイアログの乱流ボタンをクリックし、層流を選択してください。最初の100回の収束計算内で解析が発散する場合には、k-εモデルを選択し、収束計算数0から解析をやり直してください。
結果抽出
流れの分布
部品温度
その他の一般情報については、結果の可視化向けの様々なツールを用いて、流れや温度に関する結果を抽出してください。
避けるべき事項
- 輻射の影響を(特に構成部品温度が高い場合には)無視してはいけません。輻射はこれらのアプリケーションにおいて重要な熱伝達の1つであり、これを考慮しない場合には、構成部品の温度予測が過剰になる場合があります。ただし、輻射にはより多くの計算リソースが必要となるため、モデルからは不必要なフィーチャーを除去することが重要となります。
- 構成部品の熱伝導経路を無視してはいけません。空間に浮いている構成部品から熱が伝導されることはありません。構成部品と他のオブジェクト間の物理的結合がモデル内に含まれていることを確認してください。