nCloth 精度設定(Quality Settings)

精度設定(Quality Settings)

最大反復回数(Max Iterations)

現在選択されている nCloth オブジェクトのダイナミック プロパティ(伸長の抵抗(Stretch Resistance)ベンドの抵抗(Bend Resistance)など)について、シミュレーション ステップごとの反復の最大回数を指定します。最大反復回数(Max Iterations)を使用して反復回数をクランプし、高レベルのプロパティ値や多数のサブステップによって nCloth がロックされることを防止します。

反復とは、Maya Nucleus ソルバによる単一 nCloth プロパティの単一計算です。各ダイナミック プロパティ値のステップごとに、多数の反復が発生します。各ダイナミック プロパティの反復回数は、現在の値で自動的に設定されます。ダイナミック プロパティの値が大きいほど、より多くの反復が生成されます。

自己衝突最大反復回数(Max Self Collide Iterations)

現在選択されている nCloth オブジェクトの、シミュレーション ステップごとの自己衝突反復の最大回数を指定します。反復回数とは、1 シミュレーション ステップで発生する計算の回数です。反復回数が多くなるほどに精度は上がりますが、計算時間も長くなります。自己衝突最大反復回数(Max Self Collide Iterations)の既定の設定は 4.0 です。

最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)

衝突の反復を、シミュレートした各手順の最後の計算にするかどうかを設定します。最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)は、剛性(Rigidity)デフォームの抵抗(Deform Resistance)入力引き付け(Input Attract )に正の値を指定した場合に便利です。これは、nucleus オブジェクトとの nCloth 衝突が手順の最後に解決され、それ以降のフレームで不良衝突が発生する可能性が低くなるためです。オンに設定すると、最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)は、nCloth オブジェクトで剛性(Rigidity)デフォームの抵抗(Deform Resistance)、または入力引き付け(Input Attract)が設定されている場合にのみ適用されます。

既定では、最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)は 0.2 です。ほとんどの状況では、この値で問題ありません。シミュレーションに部分的な衝突エラーが見られる場合、特に入力引き付け(Input Attract)を設定している場合には、1.0 のような大きな値を使用します。たとえば、nCloth 頂点が衝突オブジェクトを通り抜け、nCloth 入力引き付けオブジェクトに追従してしまうことがあります。この問題は、最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)値を 1.0 以上に設定すると解決します。また、高速で移動する nCloth で剛性(Rigidity)を使用した場合に発生する同じような問題もこれで解決されます。

最後の衝突のしきい値(Collide Last Threshold)に 0.2 未満の値を設定しても、ほとんどの場合効果は得られません。

クロス リンクの追加(Add Cross Links)

現在選択されている nCloth オブジェクトにクロス リンクを追加します。4 個以上の頂点(三角形)を持つフェースの場合、各頂点を相互の頂点に接続するリンクが作成されます。四角は、三角化した場合と比べて、クロス リンクのバランスが優れています。

クロス リンクはリンク間の角度を維持して nCloth を安定させるので、シアのようなクロス動作を回避できます。nCloth にする前に三角化されたメッシュの場合、すでに追加のエッジによって nCloth に安定性が増しているため、メッシュにリンクを追加することはできません。

評価の順序(Evaluation Order)

現在選択されている nCloth オブジェクトのリンクを、累積的な方法、または順序に関係のない方法のいずれかで評価することを指定します。

順次(Sequential)

リンクの評価を nCloth の最初のリンクから最後のリンクまで、累積的に行います。リンクのシーケンス(最初から最後まで)は、nCloth の入力メッシュ エッジの順序によって定義されます。順次(Sequential)は、平行(Parallel)よりもすばやくリンクを評価する傾向にあり、より少ない計算で nCloth を伸縮性のない状態、つまりリジッドにできます。

平行(Parallel)

リンクの評価を、nCloth のコンストレイントされている、または衝突している部分から、その他すべての領域へ、順序に関係なく行います。このタイプの評価では伸長の抵抗(Stretch Resistance)の値を大きくする必要があるので、計算に時間がかかる可能性があります。平行(Parallel)は、シーンでバイアスが問題になっている場合のみ使用します。たとえば nCloth シャツの袖が別の nCloth オブジェクトと衝突している場合、袖のリンクが先に評価され、次に袖に最近接するリンク、そしてシャツの残りのリンクなど、と評価されます。

ベンド ソルバ(Bend Solver)

ベンドの抵抗(Bend Resistance)の計算に使用するソルバの手法を設定します。

簡易(Simple)

nCloth の頂点の相対位置に基づいてベンドの抵抗(Bend Resistance)の各ステップを解決します。ベンドの抵抗(Bend Resistance)の解決に、頂点の交差またはジオメトリの反転のヒストリを使用しません。

頂点が交差するかジオメトリが反転する可能性がある nCloth のシミュレーションには、高精度(High Quality)または反転トラッキング(Flip Tracking)を使用してください。そうしなければ、nCloth のサーフェスが間違った方向に折れ曲がって、ジッタや質の悪い自己衝突が生じます。

高精度(High Quality)

nCloth の頂点の相対位置に基づいてベンドの抵抗(Bend Resistance)の各ステップを解決します。高精度(High Quality)は、ベンドの抵抗(Bend Resistance)を解決する場合、頂点が交差したとき、ジオメトリが自身の周りに反転したときにインスタンスのヒストリを維持します。このヒストリはシミュレーション ステップの間維持されます。シミュレーション ステップの終わりには、すべての頂点の交差とジオメトリの反転が解決され、ヒストリはクリアされるものとみなします。自身の周りに折れ曲がっている nCloth サーフェスのインスタンスがない、つまり反転していない場合、衝突は適切に解決されます。

高精度(High Quality)では、頂点の交差やジオメトリの反転のインスタンスがあるために質が悪くなった衝突を、出力メッシュにねじれを作らずに解決します。既定では、ベンド ソルバ(Bend Solver)高精度(High Quality)に設定されます。

反転トラッキング(Flip Tracking)

nCloth の頂点の相対位置に基づいてベンドの抵抗(Bend Resistance)の各ステップを解決します。反転トラッキング(Flip Tracking)は、ベンドの抵抗(Bend Resistance)を解決する場合、頂点が交差したとき、ジオメトリが自身の周りに反転したときにインスタンスのヒストリを維持します。このヒストリはシミュレーションの間維持されます。反転トラッキング(Flip Tracking)を使用すると、スプリングのように自身の周りに複数回折り曲がる nCloth を解決し、シミュレーションの間中それがほどけないようにできます。

シミュレーション中にサーフェスを何度も巻き上げると、特に巻上げによって質の悪い衝突が生じた領域で、サーフェスにねじれが表れる場合があります。シミュレーション中に nCloth を過剰に巻き上げる場合、またはメッシュにねじれが生じる場合は、高精度(High Quality)オプションを使用してください。反転トラッキング(Flip Tracking)は Maya の旧バージョンで使用されるベンド ソルバ(Bend Solver)の既定の手法です。

注:

ベンド ソルバ(Bend Solver)反転トラッキング(Flip Tracking)に設定して nCache をアペンドするか nCache の最後まで再生する場合、シミュレーションをキャッシュするときにキャッシュ可能なアトリビュート(Cacheable Attributes)ダイナミック状態(Dynamic State)に設定します。「nCloth キャッシング アトリビュート」を参照してください。

伸長リンクのソート(Sort Stretch Links)

これをオンにすると、現在選択されている nCloth オブジェクトのリンクがソートされます。評価の順序(Evaluation Order)を順次(Sequential)にすると、伸長リンクのソート(Sort Stretch Links)はリンク順序を、nCloth で衝突している、またはコンストレイントされているポイントまでの距離を基にします。これは伸長の抵抗(Stretch Resistance)の値を大きくすることなく伸長を削減できますが、わずかな効果しか得られない可能性があります。

トラップ チェック(Trapped Check)

これをオンにすると、トラップ チェック(Trapped Check)は衝突オブジェクト間の重複を解決するために現在選択されているオブジェクトのサーフェス法線に沿って重複部分を押し出し、重複するポイントを押し戻そうと試みます。押し出すフォースは現在選択されているサーフェスの外側(正の法線側)に働きます。トラップ チェック(Trapped Check)は、衝突がオブジェクトの各サーフェスの同じ側に発生していることを前提としています(たとえば、サーフェスの外側対サーフェスの外側など)。

自己トラップのチェック(Self Trapped Check)

これをオンにすると、自己衝突の重複を探知し、重複するポイントを押し戻そうとします。この設定は、オブジェクトのサーフェスが開始時に良好な状態にあることを前提とし、その状態を保持しようと試みます。

nCloth に自己衝突が起こり、相互貫通が発生している場合に、自己トラップのチェック(Self Trapped Check)を使用すると便利です。自己トラップのチェック(Self Trapped Check)を使用すると、ジオメトリは間違ったサイドにトラップされず、クロスは正しいサイドに押し戻されます。

押し出し(Push Out)

インターセクトまたは相互貫通しているオブジェクトを、現在選択されている nCloth オブジェクトのサーフェス上のニアレスト ポイントまで押し出すフォースです。値に 1 を設定すると、オブジェクトは 1 ステップ押し出され、値を 1 より小さくすると押し出されるまでのステップ数は増えますが、よりスムーズな結果が得られます。正の押し出し(Push Out)値を設定すると、オブジェクトはサーフェス法線の方向に押し出されます。負の押し出し(Push Out)値を設定すると、オブジェクトはサーフェス法線とは逆の方向に押し出されます。

押し出し(Push Out)押し出し半径(Push Out Radius)を基に、作用が及ぶオブジェクトやポイントを定義します(押し出し半径を超えるオブジェクトやポイントは無視されます)。

開始フレームで衝突しているオブジェクトには、押し出し(Push Out)が便利です。さらにこのアトリビュートをアニメートすることで、特定フレームにおける不良な状態を解決できます。

押し出し半径(Push Out Radius)

押し出し(Push Out)アトリビュートの作用が及ぶ、現在選択されている nCloth オブジェクトのサーフェスからの最大距離を指定します。押し出し半径(Push Out Radius)で指定した距離よりも離れた位置にあるオブジェクトに作用は及びません。

重要:

押し出し半径(Push Out Radius)を使用して、Maya で押し出しをチェックするサーフェスからの距離を定義します。押し出しは常時サーフェスの厚みに適用されます。押し出し半径(Push Out Radius)は、サーフェスの厚みのタイプではありません

重複部分の押し込み(Crossover Push)

オブジェクトが、現在選択されている nCloth オブジェクトと重複するその輪郭に沿って適用されるフォースです。重複部分の押し込み(Crossover Push)は、重複する箇所のみで機能するため、サーフェスが目的の状態になるまでに複数のステップが必要になる場合があります。重複部分の押し込み(Crossover Push)を使用して、開始フレームにおける相互貫通の解消や、鋭角なエッジの補正を行います。

注:
  • 相互貫通を解消するために重複部分の押し込み(Crossover Push)を使用している場合は、衝突を無効にするか、またはトラップ チェック(Trapped Check)をオンにします。
  • 重複部分の押し込み(Crossover Push)によって、メッシュが移動または回転する場合があります。
自己交差の押し込み(Self Crossover Push)

現在選択されている nCloth オブジェクトが、それ自体と交差する輪郭に沿って適用されるフォースです。自己交差の押し込み(Self Crossover Push)は重複するポイント上のみで機能するので、サーフェスを良好な状態にするために数ステップを要する場合があります。自己交差の押し込み(Self Crossover Push)を使用して、開始フレームにおける相互貫通を解消します。

注:

自己交差の押し込み(Self Crossover Push)の使用時には、自己衝突を無効にするか、または自己トラップのチェック(Self Trapped Check)をオンにします。