壁面滑り解析

壁面滑りとは、流体がニュートン流体力学の古典的な非滑り境界条件に反すると仮定して、せん断応力が臨界値を超えた場合に実際に固体表面上を滑る現象を指す言葉です。一般的には、溶融樹脂が壁面滑りを呈すると考えられています。

滑りのメカニズムは、体積内の樹脂鎖が壁面に吸着している単分子層の部分から急激に分解する結果であると見られています。壁面滑りが射出成形プロセスで発生すると、最終製品のスループットと品質に影響を与える可能性があります。壁面滑り解析は、 3D メッシュを使用するモデルでのみ利用できます。また、すべての成形プロセス、および[充填]を含むすべての解析順序で利用することができます。壁面滑りは、保圧過程、キャビティが充填された後、ショート ショットが検出された場合にオフにされます。

既定では、壁面滑りはオフになっています。材料に適した壁面滑り解析を実行するには、特定の材料定数に対して材料を特徴付ける必要があります。

材料で定数が使用できる場合は、滑り速度モデルで、滑り速度に対する温度と圧力の作用をシミュレートすることができます。材料定数が使用できない場合は、線形の滑り速度モデルが使用されます。

壁面滑りがオンの場合、新しい結果は生成されません。ただし、金型壁面での滑り速度の大きさに応じて、流体解析のすべての結果がさまざまな程度の影響を受けます。壁面の滑り速度を簡単に確認するには、壁面滑りをオンおよびオフの状態にして[速度]の結果をプロットし、適宜プロットを拡大します。

([結果]タブ > [プロパティ]パネル > [プロット プロパティ] )をクリックしてスケールを変更すると、プロットが表示されて違いを視覚的に確認できます。

成形品に沿った正確な値を確認するには、 ([結果]タブ > [確認]パネル > [確認])を使用します。

壁面滑りあり/なしの速度結果の比較

1. 壁面滑りなし、2 壁面滑りあり

肉厚方向の速度プロファイルがプラグ流動に近付くと、壁面滑り速度が中心流と同じ値に近付きます。このケースでは、壁面滑りありとなしの結果を比較したときに、圧力、充填パターンなどで大きな差異があることでしょう。速度プロファイルの曲線の湾曲が増すと壁面滑りが少ないことを意味し、壁面滑りありとなしの結果の比較ではあまり差異が認められないでしょう。

制限

  • 滑り条件は、ビーム要素には適用されません。壁面滑りをシミュレートするには、3D メッシュを使用してランナー システムとゲート システムのメッシュを生成する必要があります。
  • 滑り速度モデルの定数は、特徴付けるか、参考文献などからデータを収集する必要があります。Autodesk Moldflow Plastics Labs は、現時点ではこれらのパラメータの有無を検査しません。
  • 壁面滑りをオンにした場合、より厳密な内部ソルバー設定が必要になるため、解析の実行がかなり遅くなることがあります。ただし、メモリの使用量はほぼ同じです。
  • 樹脂/壁の接面での壁面滑りのみ考慮されます。今回の実装では、2 つの樹脂フロー フロント間の滑りは考慮されません。
  • 検証データは、この段階で制限されます。