慣性、減衰、過渡荷重の効果が大きい場合、非線形過渡解析を使用する必要があります。さらに、座屈やその他の不安定な荷重条件を受ける「準安定」モデルは、モデルを安定に保つ慣性の効果のため、しばしば非線形過渡解析でよく収束します。
非線形過渡解析には、動的と非線形の両方のセットアップ手順が必要です。Autodesk Inventor Nastran では、両方の解析が基本的に同時に実行されるため、FEA で最も複雑かつ刺激的な解析タイプになります。
安定的な非線形過渡(NLT)解析があることの重要な要素は、モデルに減衰を提供することです。NLT 解析で適用できる減衰には、次の 2 種類があります。
材料に基づく減衰は柔軟性が高い(つまり、モデルの領域やその材料に応じて異なる減衰値が適用できる)ため、NLT 解析に採用するのが合理的と言えます。
NLT 解析で減衰を使用する場合は、注意点があります。それは、解析選択の主な要因が速度/慣性であるモデル(衝撃解析など)では、減衰がモデルの加速度/速度/変位に大きな影響を与える可能性があるということです。これは、剛体の運動/速度と柔軟な運動/速度とをソルバーが区別できず、構造内で速度を持つパーツのすべてに適用されるためです。衝撃解析の場合、減衰を一切使用しないか、使用しても小さな「安定」減衰値(i.e., 1.E-6)にすることが推奨されています。『ユーザ ガイド』の「衝撃解析の実行」というトピックに、衝撃解析に関する詳細が記載されています。
衝撃解析を実行する場合に従うべきガイドラインがいくつかあります。これらは、解析時間と結果の質を大きく左右します。
この段階は、非常に重要であるとともに、見落とされがちです。実際の非線形周波数とモード シェイプがどうなるかについて一定の予測ができるように、構造の線形応答特性について多少理解しておく必要があります。特性を完全に再現して表示することはできないものの、以下の主要入力パラメータに関しては大雑把に把握することができます。
モデルの中で地面(または他の衝撃源)と接触が起きると思われる領域を拘束(完全固定)し、20 モード以下で固有値解析を実行します。モード シェイプに注目し、衝撃を受けているとき、または受けた後に起きたその構造の「支配的な」応答と考えられるモードを特定します。*.OUT ファイルの中のモードの有効質量(質量寄与率)テーブルを参照すると、臨界モードの判定に役立つことがあります。モードの周波数は、主要入力パラメータの計算に使用します。
多くの場合、まず手計算で衝撃時の速度を求めてから、互いに近い 2 つのモデルを開始する方法が最善です。このアプローチのほうが解析時間が短くなり、物理的にある程度距離を取って(落下試験のように) 2 つの物体の解析を開始するよりも忠実度が向上します。分離距離が短いときの計算には、次の式を用いるとよいでしょう。
d = v * (2*dt)
ここで、
d = 分離距離
v = 速度
dt = 時間増分
この分離距離では、衝撃の前の時間ステップを 2 に設定します。
衝撃前と衝撃後の振る舞いを求めたい場合、サブケースを複数使用することが望ましいです。そうすることで、衝撃中の期間には時間ステップを細かくして解析を微調整でき、衝撃後には粗い時間ステップを使用することができます。
Autodesk Inventor Nastran の特徴の一つが、自動衝撃解析という解析タイプです。これは、上記の「衝撃解析」セクションで説明した手順を自動的に実行するものです。AIA という解析タイプは、IMPACTGENERATE というケース制御カードを介して有効になります。IMPACTGENERATE カードに関する詳細は、Inventor Nastran というインストール ディレクトリの中にある『Autodesk Nastran リファレンス マニュアル』を参照してください。AIA では、ソルバーが次の処理を自動的に実行して解析を行います。
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