ギャップ要素とは、3D 空間で定式化される 2 つの節点から成る要素のことを指し、線形材料モデルの静解析のみで利用できる要素タイプです。
ギャップ要素は 3D 空間で指定される 2 つの終了節点によって定義されます。各要素の軸力のみが計算され、設定によっては圧縮力のみ、または引張力のみが生成されます。ギャップ要素では、要素ベースの荷重は定義されません。
圧縮ギャップは閉じるまで有効化されず、伸張ギャップは開くまで有効化されません。したがって、ギャップ要素と関連する有限要素モデルの構造的な動作は、不確定条件によって必ず非線形となります。ギャップの開閉を事前に判断することはできません。ギャップ要素の状態(開いているか閉じているか)は、反復解法によって決まります。
解析が線形となり、小たわみ理論が用いられるため、元のギャップ要素の方向における動作のみが考慮されます。横方向の動きは、ギャップ要素の状態には影響を与えません。
ギャップ要素の用途は主に 3 つあり、要素入力に関してそれぞれに独自の特徴があります。概要は次のとおりです。
用途のタイプ
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要素方向
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入力要素剛性
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構造境界で支点反力を計算する剛性の高い支点 |
要素は全体座標軸 X、Y、Z と同調させる必要があります |
構造内の他の垂直剛性よりも 3~4 桁大きい |
空間内の構造の 2 つの面の間にある界面要素 |
要素はどの方向にも定義できます |
構造内の他の垂直剛性と同じ桁数 |
構造基部と土台の間にある弾性ばね |
要素はどの方向にも定義できます |
基礎土壌から計算される実ばね定数 |
過度に剛性が高く(過度にばね剛性が高い)、全体座標系と同調しないギャップ要素は使用できません。そうした要素は非対角の値を構造剛性マトリックスに取り込み、解析が困難になります。求められる解も不正確な可能性があります。構造内の他の垂直剛性よりも桁数が 3~4 多いばね剛性が、用途のタイプ 1 の剛性の高いギャップ要素に適しています。
注: この内容は自作のギャップ要素(モデル内の 2 つの節点間、またはモデルと地盤の間に描画されたライン)に当てはまります。自動生成されたギャップ要素と接触要素(CAD モデル、2D 自動メッシュ、自作モデル)はわずかに異なります。詳細は、「メッシュ作成の概要」>「接触ペアを作成する」>「
接触のタイプ」を参照してください。
ギャップ要素を使用するケース
- すべての荷重下に剛性が存在するわけではない場合に、ばねまたはケーブルの効果のモデルを作成する。
- 1 つの荷重下の 2 つのパーツ間の接触力を検索する。
ギャップ要素パラメータ
ギャップ要素を使用する場合は、最初に[要素定義]ダイアログ ボックスの[タイプ]で、パーツに使用するギャップ要素のタイプを選択します。次のオプションを利用できます。
タイプ
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ギャップ要素の動作
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ギャップを含んだ圧縮 |
節点同士がお互いに向かい、ギャップ要素の元の長さと同じ距離を移動する場合のみ、要素が圧縮荷重を伝達します。計算されるパーツ間のギャップは、パーツ間に作成されたギャップと等しくなります。 |
ギャップ伸張 |
節点同士がお互いから離れる方向へ、ギャップ要素の元の長さと同じ距離を移動する場合のみ、要素が伸張荷重を伝達します。たとえばたるみのあるワイヤーやチェーンの場合、ワイヤーやチェーンが元の長さの 2 倍まで伸張すると、伸張荷重が伝達されます。 |
ギャップを含まない圧縮 |
節点同士がお互いの方向に向かうすべての動作に伴い、要素が圧縮荷重を伝達します。ギャップ要素を定義するラインは 0 単位の長さにはならないため、モデルのパーツ間には必ず物理的なギャップが存在します。このタイプの接触要素はモデルのギャップを補います。 |
ギャップなし伸張 |
節点同士がお互いから離れる方向に向かうすべての動作に伴い、要素が伸張荷重を伝達します。 |
次に、[剛性]フィールドでギャップ要素の剛性を定義します。剛性の概要は前の項の「ギャップ要素」を参照してください。
実際のばね(伸張または圧縮)またはチェーンのような構造(伸張のみ)を複製する場合は、既知の剛性を入力します。ロッドや単純なワイヤーの剛性(k)の計算方法は k=A*E/L となります。A は断面積、E はヤング率、L はロッドの長さです。パーツ対パーツ接触を複製する場合は、高い剛性が必要です。材料係数と同じ桁数の剛性が適しています。2 つの値の単位が異なっていても同様です(「力/長さ」と「力/長さ平方」など)。k = F/Δ という式で剛性を計算することもできます。F は要素を貫通して伝達される力、Δ は要素内の圧縮または延長です。モデルに基づき、適切な Δ を選択してください。接触力を推測できる場合は、必要な剛性を計算できます。
ギャップ要素を使用する手順
- 単位系が定義されているようにしてください。
- モデルで線形材料による静解析を使用していることを確認します。
- ギャップ要素をラインとして作成します。詳細は以下の「ギャップ要素を作成する」を参照してください。
- ギャップ要素に設定するパーツの[要素タイプ]列を右クリックします。
- [ギャップ]コマンドを選択します。
- [要素定義]の見出しを右クリックします。
- [要素定義を編集]見出しを選択します。
- [タイプ]ドロップダウン ボックスで適用するギャップ要素のタイプを選択します。
- 新しい長さが 0 未満の場合のみ要素を有効化するには、[ギャップを含んだ圧縮]オプションを選択します。
- 新しい長さが元の長さの 2 倍を超える場合のみ要素を有効化するには、[ギャップ伸張]オプションを選択します。
- 新しい長さが元の長さ未満の場合のみ要素を有効化するには、[ギャップを含まない圧縮]オプションを選択します。
- 新しい長さが元の長さを超える場合のみ要素を有効化するには、[ギャップなし伸張]オプションを選択します。
- [剛性]フィールドにギャップ要素の剛性を入力します。この値は必須です。
- [OK]ボタンをクリックします。
- 必要に応じて、パーツを安定させるために剛性の低い境界要素を追加します。詳細は、「ギャップ要素による解析を実行する」を参照してください。
ギャップ要素を作成する
- 対応する節点を接続するラインを描画します。[作成]
[作成]
[ライン]コマンドを使用します。
- [作成]
[デザイン]
[接触要素]コマンドを使用します。このコマンドによって、頂点の 2 つのセット間のラインが自動的に描画されます。変形が小さいことが想定される線形応力に関しては、通常は面と面の間に垂直な最短のラインのみが必要です。この場合は[長さを拘束]オプションを使用します。詳細は、「ジオメトリを追加する」の「モデルに接触要素を追加する」を参照してください。
- ラインを 1 つの面から対応する面にコピーし、その間に複数のコピーを結合するオプションを使用します。次に、結合されたラインをギャップ要素として定義します。たとえば接触する 2 つのプレートの場合は、ギャップ要素のラインを 1 つ 1 つ描画する代わりに、次の手順に従ってください。
- 結合させる面のどちらかのラインを選択([選択]
[選択]
[ライン])します。
- [作成]
[パターン]
[移動またはコピー]コマンドでコピーを開始します。
- [コピー]チェック ボックスをオンにし、作成するコピーの数が 1 に設定されていることを確認します。
- [連接]チェック ボックスをオンにします。
- コピーの総距離と方向ベクトルを設定します。距離や方向が不明な場合は、[ベクトルセレクター]ボタンを使用して 2 つの頂点をクリックします。
- [OK]をクリックします。選択されたラインが結合する面にコピーされ、面と面の間のラインがギャップ要素になります。
- これにより結合させる面の元のラインのコピーが作成され、これらの余分なラインは必要がなくなるので、[削除]をクリックします。コマンドの完了後も、最後に作成されたコピーが選択されたままになっています。
- 最後に、ギャップ要素に定義できるパーツ番号とラインを結合します。通常は長方形選択([選択]
[形状]
[長方形)を使用して結合されたラインを選択し、右クリック後に[属性を編集]に適切なパーツ番号を入力します。長方形選択を使用する場合は、ライン全体を選択範囲に含める必要があります。パーツの面上のラインも選択されますが、それらのラインの属性は変更しないでください。解除モードを使用([Shift]キーと[Ctrl]キーを押したままにする)して、選択範囲内にある面上のラインの選択を解除します。
- 詳細はジオメトリの変更「ツール」セクションの「既存のラインのコピーを作成する方法」の項を参照してください。
ギャップおよびサーフェスの接触要素に関する詳細は、「解析の設定と実行」>「解析を実行する」>「線形解析を実行する」>「ギャップ要素による解析を実行する」を参照してください。