[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤ

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを使うと、オブジェクトの各頂点法線を明示的、手続き式、またインタラクティブに制御できます。このモディファイヤは主に、指定済み法線に対応しているゲーム エンジンや 3D レンダリング エンジンへ出力されるメッシュ オブジェクトに使用されます。結果は、ビューポートとレンダリングされたイメージに表示されます。

頂点法線の向きは、隣接するサーフェスでの光の反射方法に影響します。3ds Max の既定値では、実世界の物理法則に従って光が反射されるように法線が設定されます。つまり、反射角は入射角に等しくなります。 しかし、頂点法線の向きを変更することで、任意の反射角を設定できます。[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを使うと、頂点法線の向きの指定、個々の法線の結合と分離、タイプの変更、法線間での値のコピーと貼り付けを行うことができます。

警告: 法線バンプ投影で使用される低解像度オブジェクトには、[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを適用しないでください。法線バンプ投影は標準的な法線を含む低解像度オブジェクトに依存しており、この法線を変更すると、法線バンプ マップで予期せぬ結果となります。

法線のタイプ

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤでは、次の 3 種類の法線を使用できます。

注: 選択されている法線は常に赤で表示されます。選択されていないときの法線の色は、上記のようにそのタイプを示します。これらの法線タイプに対してカスタマイズ可能なカラーは、[要素](Elements) [ジオメトリ](Geometry)リストにあります。次の 3 つのエントリ名があります。
  • 法線 - 明示的
  • 法線 - 指定済み
  • 法線 - 未指定

使用例

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤについて、3D アーティストがゲーム エンジンへ出力するコンテンツを作成する場合の実際の使用例を 2 つ示します。

  • アーティストは、クロムの盾を持つ騎士を作成しようとしています。クロムの盾には DirectX 立方体マップ シェーダが適用されているため、アーティストはビューポートで反射を確認できます。アーティストは、戦闘でへこんだような反射を盾に与えようと考えます。そこで、[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを盾のオブジェクトに適用します。ピクセル シェーダを利用してリアルタイムで結果を確認しながら、法線のいくつかを多少調整します。その後、法線の情報を処理するように設計されたカスタムの書き出しツールを使って、このキャラクタを書き出します。
  • ゲーム アーティストは、ゲームの中で爆発するオブジェクトを作成しようとしています。そのためは、このオブジェクトを複数のオブジェクト(爆発したときの断片)に分割してゲーム エンジンに渡す必要があります。3ds Max では、[スライス](Slice)を使ってオブジェクトを粉々に砕くとき、各法線がそれぞれ異なる方向を指しているため、断片どうしの継ぎ目が見えやすくなります。 この問題を解決するために、分裂するオブジェクトの断片をすべて選択し、すべての断片に[法線を編集](Edit Normal)モディファイヤを同時に適用します。次に、継ぎ目にまたがって法線を選択し、これらの法線が同じ方向を指すように法線の統一を行います。その後、ゲーム エンジンへ書き出します。

使用上の注意

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを使用するときは、以下の注意事項に従ってください。

  • [法線を編集](Edit Normals)モディファイヤは、ポリゴン オブジェクト(ポリゴン ベース)とメッシュ オブジェクト(三角形ベース)の両方をサポートしています。[法線を編集](Edit Normals)をポリゴン オブジェクトに適用すると、結果はポリゴン オブジェクトになります。[法線を編集](Edit normals)をその他のオブジェクト タイプに適用すると、結果はメッシュ オブジェクトになります。
  • [法線を編集](Edit Normals)モディファイヤは、スタックの集約時、およびポリゴン オブジェクトからメッシュ オブジェクトへの変換時に、編集された法線データの埋め込みをサポートします。ただし、メッシュ オブジェクトからその他のオブジェクト タイプへの変換時には、そのような処理をしません。[法線を編集](Edit Normals)をプリミティブ オブジェクトに適用し、法線を調整してから、スタックを集約(または編集可能メッシュに変換)すると、3ds Max は選択状態も含めて法線に対する変更をメッシュ オブジェクトに埋め込みます。 プリミティブ オブジェクトはメッシュ ベースなので、同じオブジェクトを編集可能ポリゴンに変換した場合、編集された法線は失われます。一方、プリミティブ オブジェクトを編集可能ポリゴンに変換し、[法線を編集](Edit Normals)を適用し、法線を調整してから、スタックを集約した場合は、ポリゴン オブジェクトが生成され法線は保持されます。その後で、別の[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを適用することにより、スタックを集約されているオブジェクトの、埋め込まれ編集された法線に再アクセスできます。
  • トポロジを変更するようなモディファイヤを適用すると、[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤで法線に適用された変更が削除されます。このようなモディファイヤとしては、[メッシュ スムーズ](MeshSmooth)、[面分割](Tessellate)、[スライス](Slice)、[ミラー](Mirror)、[対称](Symmetry)、[面を押し出し](Face Extrude)、[頂点連結](Vertex Weld)があります。おかしなことに、面の向きを反転する[法線](Normal)モディファイヤは、編集された法線をサポートできません。[ポリゴンに変換](Turn To Poly)モディファイヤは面のトポロジを変更するために使用できるので、このモディファイヤでは編集された法線も除去されます。
  • すべての合成オブジェクトでは、そのオペランドから編集された法線が除去されます。
  • すべての変形モディファイヤとマップ モディファイヤでは、法線が維持されます。たとえば、[ベンド](Bend)を適用すると、ジオメトリとともに法線が曲げられます。[UVW アンラップ](Unwrap UVW)などのマップ モディファイヤは、法線にまったく影響を与えません。
  • ただし、いくつかのジオメトリック モディファイヤは、新しい法線を完全にはサポートしていません。これらのモディファイヤでは、法線が除去されることはありませんが、明示的法線は正しく変形されません。このようなモディファイヤとしては、[プッシュ](Push)、[リラックス](Relax)があります。
  • [スムーズ](Smooth)モディファイヤは、未指定法線であれば正しく編集できますが、指定済み法線と明示的法線には影響を与えません。
  • [メッシュ選択](Mesh Select)や[ポリゴンを選択](Poly Select)と同様に、[法線を編集](Edit Normals)もスタックの下位からアトリビュートを「継承」します。たとえば、ボックスを作成し、[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを適用していくつかの法線を変更してから、もう 1 つ[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤを適用すると、上位の[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤは、ユーザが指定した法線をパイプラインから「継承」します。これは、[メッシュ選択](Mesh Select)を適用するとき、現在の選択が引き継がれるのと同様です。ただし、最初の[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤに後で加えられた変更は、上位の[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤでは無視されます。[メッシュ選択](Mesh Select)を適用した後でスタックの下位で選択に変更を加えても、[メッシュ選択](Mesh Select)では無視されるのと同様です。

インタフェース

[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤは主に法線サブオブジェクト レベルで利用されるため、既定値では、このモディファイヤをオブジェクトに適用した直後に、このレベルがアクティブになります。この時点で、メッシュ頂点から放射するラインとして法線が表示されるので、選択して変換したり、コピーして貼り付けたり、[修正](Modify)パネルで設定を変更したりできます。

法線に対する変換としては、移動と回転だけが可能で、スケーリングはできません。ただし、法線を移動すると実質的に回転も伴うため、多くの場合は[回転](Rotate)ツールを使用するとより正確に制御できます。

次のコマンド リファレンスには、キーボード ショートカットも示しています。これらは、ツールバーの[キーボード ショートカットの切り換え](Keyboard Shortcut Override Toggle)がオンになっているときに使用できます。また、+[0] (ゼロ)を使って、モディファイヤのオブジェクト レベルにアクセスできます。

[選択方法](Select By)領域

ビューポートでの法線の選択方法を指定できます。

  • [法線](Normal) (+[1]): 法線をクリックして選択します。
  • [頂点](Vertex) (+[2]): メッシュ頂点をクリックすることで、その法線をすべて選択します。
  • [エッジ](Edge) (+[3]): メッシュ エッジをクリックすることで、隣接するポリゴンに関連付けられた法線を選択します。
  • [面](Face) (+[4]): メッシュ面(ポリゴン)をクリックすることで、それに関連付けられた法線を選択します。

これらの方法のいずれでも、領域選択を使って一度に複数の法線を選択することもできます。

背面を無視

チェックマークが付いている場合、前面を向いているサブオブジェクトだけが選択の対象となります。チェックマークが付いていない場合(既定値)、可視性や向きにかかわらず、マウス カーソルの下にある任意のサブオブジェクトを選択できます。カーソルの下に複数のサブオブジェクトがある場合は、クリックを繰り返すと選択対象が順に切り替わります。同様に、[背面を無視](Ignore Backfacing)にチェックマークが付いていないときに領域選択を行うと、向きにかかわらずサブオブジェクトがすべて選択されます。

ハンドルを表示

ハンドルの表示を有効にします。ハンドルとは、各法線の末端にある小さな正方形です。チェックマークを付けると、法線をより簡単に選択できるようになります。

法線表示の長さ

各法線の長さを指定します。この長さは表示専用であり、法線の機能には影響しません。

[統合](Unify) (U)

各頂点で選択したすべての法線を組み合わせて単一の指定済み法線にします。既定値では、[統合/ブレークを平均化](Unify/Break To Average)にチェックマークが付いていない場合、[統合](Unify)をクリックすると、統合された各法線の方向がそのポイントでの平均サーフェスに対して垂直に設定されます。[統合/ブレークを平均化](Unify/Break To Average)チェック ボックスにチェックマークが付いている場合、[統合](Unify)をクリックすると、方向は各位置での組み合わされた法線の平均に設定されます。

[ブレーク](Break) (B)

選択したすべての統一法線を、元のコンポーネントに分離します。[統合/ブレークを平均化](Unify/Break To Average)チェック ボックスにチェックマークが付いていない場合、[ブレーク](Break)により、分離された各法線はそれぞれの面に垂直の方向に合わされます。したがって、頂点に接続する面の角度が異なっていれば(たとえば球の場合)、各頂点から法線が放射状に出て行きます。[統合/ブレークを平均化](Unify/Break To Average)チェック ボックスにチェックマークが付いている場合、分離された各法線は元の法線の方向になります。

[ブレーク](Break)では、選択した法線を指定済み法線に変換します。

統合/ブレークを平均化

[統合](Unify)または[ブレーク](Break)の操作による法線の方向を決定します。詳細については、前述の説明を参照してください。既定値ではチェックマークが付いていません。

[平均値](Average)領域

これらのコントロールは、頂点法線を平均するさまざまな方法を提供します。つまり、頂点法線を組み合わせた角度の平均をとって、すべての法線に同じ絶対角度を設定します。

選択

選択した法線に同じ絶対角度を設定します。つまり、そのすべての平均角度です。[しきい値を使用](Use Threshold)チェック ボックスにチェックマークが付いている場合は、相互の距離が[平均スレッショルド](Average Threshold)編集ボックス(ボタンの右側)に指定された距離より短い法線だけが平均に含められます。

しきい値を使用

[平均スレッショルド](Average Threshold)の設定値を有効にして、[選択](Selected)ボタンをクリックしたときに、相互の距離がこの指定値より短い法線だけを平均に含めるようにします。

ターゲット

平均する法線ペアを指定するインタラクティブ モードに入ります。[ターゲット](Target)ボタンをクリックし、続いて法線を選択します。マウス カーソルを法線の上に置くと、「+」記号に変わります。最初の法線をクリックした後、ラバーバンドの点線により、その法線とマウス カーソルが結ばれます。2 番目の法線をクリックすると、2 つの法線の角度の平均が算出されます。

[ターゲット](Target)ボタンの横の[ピクセル](pixels)編集ボックスは、マウス カーソルとターゲット法線間の最大距離を画面ピクセルで設定します。

[値をコピー](Copy Value) (+[C])

選択した法線の向きをコピー バッファにコピーします。1 つの法線が選択されているときにだけ使用できます。

[値をコピー](Copy Value)と[値を貼り付け](Paste Value)を使用すると、ある法線の向きを、同じ[法線を編集](Edit Normals)モディファイヤ内にある他の 1 つ以上の法線に適用できます。異なるモディファイヤ間で法線をコピーすることはできません。

[値を貼り付け](Paste Value) (+[V])

貼り付けバッファの内容を、現在選択している法線に適用します。あらかじめ[値をコピー](Copy Value)を使ってコピーの法線の向きをバッファに入れており、適用対象となる法線を 1 つ以上選択しているときにのみ使用できます。

[定義](Specify) (S)

選択した法線を指定済み状態に変換します。

[リセット](Reset) (R)

選択したすべての法線を未指定の状態に戻し、計算された初期位置に戻します。また、統一法線を分離します。

[明示的にする](Make Explicit) (E)

選択した法線を[明示](explicit)状態に変換し、特定の値に設定します。

選択の表示

1 つの法線が選択されているときは、その ID 番号が表示されます。法線が選択されていない場合や、複数の法線が選択されている場合は、選択されている法線の数が表示されます。