IK ソルバは、IK ハンドルの背後にある数学的アルゴリズムです。IK ハンドルによって制御されるジョイント チェーンに属するすべてのジョイントの回転を計算します。ジョイント チェーンに対する IK ハンドルの作用は、IK ハンドルが使用する IK ソルバの種類によって異なります。既定で、Maya は起動時に次の IK ソルバをロードします。
詳細については、シングル チェーン ソルバとシングル チェーン IK ハンドルを作成するを参照してください。
詳細については、回転プレーン ソルバと回転プレーン IK ハンドルを作成するを参照してください。
スプライン IK ハンドルと連動する場合にのみ、スプライン IK ソルバを使用できます。詳細については、スプライン IK ソルバ、スプライン IK ハンドルの操作に関するヒント、IK スプライン ハンドル ツール(IK Spline Handle Tool)を参照してください。
HumanIK ソルバは、キャラクタ化したキャラクタにのみ使用されます。hikSolver を通常の IK ハンドルと一緒に使用することはできません。
既定のソルバに加えて、以下のソルバを作成できます。
2 ボーン IK ソルバを使用するには、まず手動で Maya にロードしてこれを有効にする必要があります。詳細については、2 ボーン ソルバと 2 ボーン ソルバを作成するを参照してください。
マルチチェーン IK ソルバを作成するには、createNode MEL コマンドを使用します。詳細については、マルチチェーン ソルバとマルチチェーン ソルバを作成するを参照してください。
スプリング IK ソルバを使用するには、まず Maya でこれを有効にする必要があります。詳細については、スプリング IK ソルバと IK スプリング ソルバ アトリビュート(IK Spring Solver Attributes)を参照してください。
ジョイント数が 2 ~ 4 個のジョイント チェーンのポーズを設定し、アニメートするには、シングル チェーンまたは回転プレーン IK を使用します。
長いジョイント チェーンのポーズを設定し、アニメートする場合は、スプライン IK を使用します。ゲームに使用する単純な 3 ジョイント IK チェーンのポーズを設定し、アニメートする場合は、2 ボーン IK を使用します。
既定では、作成したすべての IK ハンドルは、同じタイプの IK ソルバを使用するとともに、同じ IK ソルバ ノードを共有します。たとえば、シングル チェーン IK を使用するすべての IK ハンドルも、同じ ikSCsolver ノードに接続します。したがって、共有 IK ソルバ ノードのアトリビュートを編集すると、ノードに接続するすべての IK ハンドルがその影響を受けます。他の IK ハンドルに影響を及ぼさずに、特定の IK ハンドル用の IK ソルバだけを微調整する場合は、createNode MEL コマンドを使用して、IK ハンドル用の追加 IK ソルバを作成することができます。
IK ハンドルを移動する場合、ソルバは適切な計算を行って、それに応じて IK チェーン内の全ジョイントを移動し、回転させます。ソルバは、最初に IK ハンドルの位置(移動 X (Translate X)、移動 Y (Translate Y)、移動 Z (Translate Z) の各アトリビュート)と方向(回転 X (Rotate X)、回転 Y (Rotate Y)、回転 Z (Rotate Z) の各アトリビュート)を参照します。次に、ソルバは、エンド エフェクタの位置を可能な限り IK ハンドルの位置と方向の近くに移動する方法を計算します。そのために、ソルバはどのように IK ハンドルのジョイント チェーン内にあるジョイントを回転するのが最適かを計算します。最後に、ソルバは、エンド エフェクタが IK ハンドルの位置と方向に到達するように、ジョイント チェーン内の全ジョイントを回転させます。
シングル チェーン IK ハンドルは、シングル チェーン ソルバを使用して、IK チェーン内の全ジョイントの回転を計算します。また、ジョイント チェーンの全体の方向は、直接シングル チェーン ソルバによって計算されます。
シングル チェーン IK ハンドルと回転プレーン IK ハンドルの違いは、シングル チェーン IK ハンドルのエンド エフェクタが IK ハンドルの位置と方向に到達しようとするのに対して、回転プレーン IK ハンドルのエンド エフェクタは IK ハンドルの位置のみに到達しようとすることです。回転プレーン IK ハンドルのエンド エフェクタは、IK ハンドルの位置のみに到達しようとするため、その結果生じるジョイントの回転を容易に予想することができます。回転プレーン IK ハンドルの場合、ジョイント チェーン全体の方向はツイスト円形 マニピュレータによって制御されます。詳細については、ツイスト円形と回転プレーン ソルバを参照してください。
ジョイント チェーンに反転の問題がある場合は、シングル チェーン ソルバの代わりに、回転プレーン ソルバを使用します。回転プレーン ソルバは、シングル チェーン ソルバで発生することがある IK チェーンの反転を制御するために、極ベクトルとともに導入されました。
詳細については、一般的な IK ハンドルのコンポーネントを参照してください。
回転プレーン IK ハンドルは、回転プレーン ソルバを使用して、IK チェーン内の全ジョイントの回転を計算しますが、ジョイント チェーンの全体の方向は計算しません。代わりに、IK 回転プレーン ハンドルは、IK ソルバによって計算された方向を使用せずに、極ベクトルとツイスト円形を使用してジョイント チェーン全体の方向を直接制御します。シングル チェーン ソルバと回転プレーン ソルバの違いはこの点です。詳細については、シングル チェーン IK ハンドルと回転プレーン IK ハンドルの違いを参照してください。
回転プレーンは、同じプレーンで静止させたいジョイント チェーン(腕や脚など)のポーズ設定に適しています。たとえば、回転プレーン IK ハンドルが駆動する腕の肩、肘、手首の関節は、肘が回転する同じプレーン内にとどまります。プレーン自体は、極ベクトルによって肩の関節で回転します。
詳細については、極ベクトルとツイスト円形を参照してください。
ツイスト円形は、ジョイント チェーンをツイストまたは回転するために使用するマニピュレータです。ツイスト円形は、IK チェーンの終了ジョイントにあります。
極ベクトルの移動によって、IK チェーンが間違った方向を示したままになる場合があります。極ベクトルの移動後、反転しないようにするために、ツイスト円形を使用して、プレーンの方向を変更することができます。ツイスト円形のイメージを表示する場合は、回転プレーン ソルバを参照してください。
ジョイント チェーンの全ジョイントを含み、軸を使用してポーズを設定するプレーンがジョイント プレーンです。ジョイント チェーン プレーンは、ハンドル ベクトルの周りで回転します。極ベクトルを操作する場合は、ハンドル ベクトルの周りでジョイント チェーン プレーンを回転させます。ジョイント チェーン プレーンのイメージを表示する場合は、回転プレーン ソルバを参照してください。
ジョイント チェーン プレーンを使用してジョイント チェーンの回転とツイストを行う場合は、ツイストの度合いを測定できるように、プレーンを別の特定なプレーンを基準にして回転させる必要があります。ジョイント チェーン プレーンを回転するときの相対的な基準となるプレーンをリファレンス プレーンと呼びます。リファレンス プレーンのイメージを表示する場合は、回転プレーン ソルバを参照してください。
極ベクトルは、IK チェーンの方向を変更することができるマニピュレータです。また、極ベクトルを使用して、反転を制御することができます。
極ベクトルを移動するとリファレンス プレーンの方向が変更されるので、極ベクトルを移 動してジョイント チェーンの方向を直接変更することもできます。ツイスト円形を操作するだけで、ジョイント チェーンの方向を変更することができます。これは、ジョイント チェーンの向き具合、つまりツイストがリファレンス プレーンとジョイント チェーン プレーンの方位差として定義されているからです。極ベクトルのイメージを表示する場合は、回転プレーン ソルバを参照してください。
IK ハンドルの配置時に、ハンドル ベクトルと極ベクトルが交差するか、全く正反対の方向を示すと、ジョイント チェーンが突然反転することがあります。ハンドル ベクトルと交差しないように、または反対方向を向かないように極ベクトルを移動すると、この反転を防止することができます。
回転円形は、ツイスト円形によって IK チェーンが回転した度合いを示すインジケータです。回転円形は、IK チェーンの開始ジョイントにあります。回転円形のイメージを表示する場合は、回転プレーン ソルバを参照してください。
リファレンス プレーン インジケータは、極ベクトルの移動を反映して移動する回転円形上に緑色のドットとして表示されます。
ツイスト インジケータは、回転円形上のリファレンス プレーン インジケータとジョイント チェーン プレーン インジケータ間に緑色の円弧として表されます。ツイスト インジケータは、ジョイント チェーンの方向をリファレンス プレーンを基準にした相対位置で表示します。
ジョイント チェーン プレーン インジケータは、ジョイント チェーン プレーンの方向をリファレンス プレーンに対する相対位置で表示します。ジョイント チェーン プレーン インジケータは、回転円形上に表示されます。
スプライン IK ハンドルでは、NURBS カーブを使用して、ジョイント チェーンのポーズを設定することができます。カーブを操作すると、ハンドルのスプライン IK ソルバは、それに応じてチェーン内のジョイントを回転させます。スプライン IK を使用して、尾、触手、蛇のような長い、しなやかなジョイント チェーンのポーズを設定し、アニメートすることができます。
スプライン IK ハンドルの操作に関するヒントも参照してください。
詳細については、ツイスト円形を参照してください。
ロール円形は、スプライン IK ジョイント チェーン全体をローリングまたは回転するために使用するマニピュレータです。ロール円形は、常にスプライン IK ハンドルの開始ジョイントにあります。ロール円形は、回転円形と極ベクトルに似ています。詳細については、一般的な IK ハンドルのコンポーネントを参照してください。
高度なツイスト コントロール(Advanced Twist Controls)アトリビュートを使用して、チェーン内のジョイントのローカル回転を、固定ワールド空間のベクトルにコンストレイントすることができます。このベクトルは、スプライン IK の NURBS カーブの方向です。たとえば、高度なツイスト コントロール(Advanced Twist Controls)を使用して、蛇のキャラクタ、二足歩行のキャラクタの脊椎、またはコイルのスプリングの動きを安定させることができます。また、チェーンに沿ったツイストを微調整して、ツイスト アトリビュートによって、ジョイントにさらにツイストを追加することができます。
追加ツイストを適用する前に、ジョイントのアップ軸を固定ワールド軸に位置合わせすることにより、以前よりも容易に予想でき、また安定した結果を得ることができます。
詳細については、高度なスプライン IK ツイスト制御を使用すると高度なツイスト コントロール(Advanced Twist Control)アトリビュートを参照してください。
高度なツイスト コントロール(Advanced Twist Control)アトリビュートは、IK ハンドルが ikSplineSolver を使用する場合にのみ適用されます。
スプライン IK を持つ IK ハンドルでは、NURBS カーブを使用して、ジョイント チェーンのポーズを設定することができます。スプライン IK カーブを操作して、ターゲット IK チェーン内の全ジョイントを移動し、回転させます。スプライン NURBS カーブを簡単に操作する方法は、各カーブの CV に対してクラスタ デフォーマを作成することです。カーブの編集 > 選択範囲 > クラスタ カーブ(Edit Curves > Selection > Cluster Curve) (『NURBS モデリング』マニュアル)を参照してください。
スプライン IK ハンドルは、尾、触手、首、脊椎、および類似のオブジェクトの長いジョイント チェーンをポーズ設定し、アニメートするのに適しています。
スプライン IK ジョイント チェーンの開始ジョイントは、スプライン IK カーブやその CV を移動または回転したとき、またはカーブに沿ってジョイント チェーンをスライドさせたときに、逆転(反転)する場合があります。反転は、スプライン IK ソルバによる計算の正常な結果です。
ジョイントの反転は、ジョイントの方向を回転値 0 から 90 度以上回転させたときに発生します。ジョイントの回転値が 0 となるのは、ジョイントの回転 X (Rotate X)、回転 Y (Rotate Y)、回転 Z (Rotate Z)値が(親ジョイントの回転値を基準にして)ゼロになるような位置です。反転は、ジョイントがほぼ 180 度回転したときに最も顕著になります。
開始ジョイントをほぼ静止位置に配置してから個々のジョイントを移動すると、開始ジョイントが逆転(反転)することを防止できます。詳細については、スプライン IK チェーンでの反転を防止するを参照してください。
たとえば、モーション パスに沿ってヘビを動かすときなどカーブに沿ってジョイント チェーンをアニメートするときにも、不要な反転が発生する可能性があります。
ジョイントを適切に配置しても反転が発生する場合は、開始ジョイントを別のジョイントまたはトランスフォーム ノードの子ジョイントにしてください。詳細については、ルート軸の自動作成(Auto Create Root Axis)とカーブの自動ペアレント化(Auto Parent Curve)を参照してください。
2 ボーン IK ソルバは、回転プレーン IK ソルバのサブセットです。したがって、2 ボーン ソルバを持つ IK ハンドルは、回転プレーン IK ハンドルと同じ方法でジョイント チェーンの回転を解決します。詳細については、回転プレーン ソルバと回転プレーン IK ハンドルのコンポーネントを参照してください。
2 ボーン IK ハンドルは、2 つのボーンと 3 つのジョイントからなる短いジョイント チェーンのポーズを設定し、アニメートするためのツールです。2 ボーン IK ハンドルを持つ長いジョイント チェーンのポーズを設定し、アニメートしようとする場合、2 ボーン ソルバは開始ジョイントと最後から 2 番目のジョイントの回転だけを解決し、ジョイント チェーン内の他の全チェーンを無視します。
2 ボーン ソルバは、同じプレーンで静止させたいジョイント チェーン(腕や脚など)のポーズ設定に適しています。たとえば、回転プレーン IK ハンドルが駆動する腕の肩、肘、手首の関節は、肘が回転する同じプレーン内にとどまります。プレーン自体は、極ベクトルによって肩の関節で回転します。詳細については、極ベクトルを参照してください。
2 ボーン ソルバは、Maya で最速の IK ソルバです。このため、2 ボーン IK ハンドルはゲーム開発環境でキャラクタを作成するのに適しています。Maya には 2 ボーン IK ソルバのプラグイン ソース コードが含まれているので、ゲーム開発者は、この機能の正確な動作をゲーム エンジン内で再現したり、コードを修正して開発者自身のカスタム IK ソルバを作成することができます。
2 ボーン IK ソルバのソース コードは、devkit の ik2Bsolver ディレクトリにあります。このソース コードは、ユーザが独自の IK ソルバ プラグインを作成するときの適切なサンプルになります。また、主要なアルゴリズムを抽出して利用すると、ゲーム エンジン内で 2 ボーン IK ソルバの動作を正確に再現することができます。詳細については、ik2Bsolver ディレクトリ内の README ファイルを参照してください。
マルチチェーン ソルバは、複数の IK ハンドルを同時に解決することができます。マルチチェーン IK ハンドルを使用して、タコのキャラクタの触手のような複雑なモーションをアニメートすることができます。
マルチチェーン ソルバを持つ IK ハンドルは、シングル チェーン IK ハンドルと同じ方法で、ジョイント チェーン内のジョイントを管理します。詳細については、シングル チェーン ソルバを参照してください。
IK ハンドルの優先順位(Priority)とウェイト(Weight)アトリビュートは、マルチチェーン IK ソルバにのみ適用されます。ヘルプ > ノード & アトリビュート リファレンス(英語) (Help > Node and Attribute Reference)の ikMCsolver を参照してください。
スプリング IK ソルバ(ikSpringSolver)は、すべてのジョイント間で均等な回転を実現します。これは、昆虫の足のような多数のジョイントをもつ手足にポーズ設定してアニメートする場合に便利です。
スプリング IK ソルバは、角度にバイアス値を適用することにより、そのジョイント チェーン内のジョイント間の角度を均等に維持します。これにより、すべてのジョイント間の角度が常に均等に分散されます。スプリング IK ソルバは、どちらも IK ハンドルが極ベクトルを持つという点で、回転プレーン IK ソルバに似ています。スプリング IK ハンドルは極ベクトルを持つため、スプリング IK ジョイント チェーンが極ベクトルに交わると反転が発生します。
スプリング IK ソルバを使用する IK ハンドルはレスト ポーズを必要とします。既定では、ターゲット ジョイント チェーンの位置と方向はスプリング IK ハンドルの作成時にはレスト ポーズとなります。レスト ポーズでのスプリング IK ジョイント チェーンの最初と最後のジョイント間の距離により、ジョイント チェーンを曲げるか伸ばすか決められ、個々のジョイントの動きに影響を与えます。