はじめに
この演習では、引き続きレバーのアームのモデルを使って作業します。接触と対称性を使用して、より現実的な物理モデルの表現を定義します。
境界条件の代わりに接触を使用する
相互作用を理想化する際はいつでも、一定の「ギブ」と「テイク」が必要であることに気づくことが重要です。ほとんどの場合、「テイク」には速度と単純さが関わります。「ギブ」は、相互作用時の応答で妥協することです。
「完全な」理想化を行えば、相互作用での応答が物理パーツとまったく同じになります。そこで重要となるのが、精度、速度、モデルの簡潔さと、真の物理応答からの許容できる相違とのバランスです。どこまでの相違を認めるか、そしてどの程度は避けられないのかを検討する必要があります。それらを研究切り分けにより定量化するのと良いでしょう。
個々の反応のモデル化に最適な方法を決めるうえで、次に示す「剛性差の法則」が役に立ちます。
- 知りたいパーツの剛性が支持側パーツの剛性より明らかに低い場合、拘束を使用する。
- 知りたいパーツの剛性が支持側パーツの剛性より明らかに高い場合、荷重を使用する。
- 知りたいパーツの剛性が支持側パーツの剛性と同程度の場合、接触を使用する。
この演習では、剛性値の近いレバーとピンを使用します。そのため、接触を使用して相互作用をシミュレーションすることにします。
対称性
対称性は、精度を犠牲にせずに構造物のごく一部を解析することのできる、重要なモデル化技法です。この演習で示すように、この技法は一部の事例において、解析品質を高める点で他の方法より優れています。
前の演習ではレバー アームを使用しましたが、レバーがピンの長手方向に横ずれ可能性がまだあります。しかし、線形静的解析では、剛体の運動が禁じられています。ここで検討すべき選択肢がいくつかあります。
- 接触の定義で摩擦を有効にして、横ずれ運動に対抗する。この方法は、接触力の影響を多分に受けるため、解析速度は遅くなります。
- レバーを地面に接続するか、柔らかなバネ(コネクタ)を使用してピンに接続する。この場合は、余分な手順が必要になりますが、解析時間には影響しません。
- 対称性平面でジオメトリ上に点を配置または作成して、これを自由運動の方向に拘束する。
- モデル内で対称性を使用して剛体の運動を拘束する。この方法なら、モデル サイズが小さくなるとともに、必要な拘束が自ずと追加されます。
対称性では、「平面と法線」の変換および「平面内」の回転を拘束します。
1. モデルを開く
Autodesk Inventor を起動し、トレーニング フォルダの Section 10 - Contact & Symmetry サブフォルダの中にある Lever-Pins.iam ファイルを開きます。このモデルは、押し出しカットで半分にカットされています。これは、対称性平面を境に両側の幾何学形状がまったく同一になるため、有効です。
[アセンブリ]ツリーの最上部にある[解析]のタイプが[線形静解析]に設定されていることを確認します。
必要に応じて、の順に右クリックして[解析]ダイアログ ボックスを開き、[タイプ]を[線形静解析]に設定して[OK]をクリックします。
[環境]リボン タブで、Autodesk Inventor Nastranをクリックします。モデル ツリーで、[理想化]を展開します。理想化が定義済み(下図の Solids 1 や Solid 2 など)の場合は、右クリックしての順に選択し、不用な材料が解析に混入しないようにします。
2. レバー アームに物理特性を割り当てる
- リボンの[準備]パネルにある[理想化]をクリックします。
- [理想化]ダイアログで、「Aluminum」という名前を入力します。
- [新規材料]アイコンをクリックします。
- [材料]ダイアログで、[材料を選択]をクリックします。
- [材料 DB]ダイアログで Autodesk Material Library を展開し、Aluminum 1100-O を選択します。[OK]をクリックし、破壊理論に関するメッセージをすべて無視します。
- [材料]ダイアログで[OK]をクリックします。
- [理想化]ダイアログで、[関連付けられたジオメトリ]にチェックマークを入れ、パーツとしてキャスト レバーを選択します。
- [OK]をクリックします。
3. 物理特性を 2 つのピンに割り当てる
リボンの[理想化]をクリックし、前の手順の手続きを以下の点のみ変更してから、繰り返し実行します。
- 特性名を「Steel」にします。
- Autodesk Material Library のリストから[合金鋼]を選択します。
- それを両方のピンに割り当てます。
- [OK]をクリックして[理想化]ダイアログを閉じます。
4. ピンを拘束する
- リボンの[セットアップ]パネルから、[拘束]をクリックします。
- [拘束]ダイアログで[固定]ボタンをクリックします。
- 両ピンの端部のサーフェスを選択します。
- [OK]をクリックします。
5. 対称拘束を割り当てる
- リボンの[セットアップ]パネルから、[拘束]をクリックします。
- [対称性]の欄の[X]ボタンをクリックします。(対称面に対する法線が X 方向に向いているためです。対称性に X を選ぶことで Tx、Ry、および Rz が拘束されます。)
- 対称面上の 3 つの面を選択します。(レバー上のサーフェスを各ピン 1 つ必ず選択してください。)
- [OK]をクリックします。
6. 荷重を割り当てる
- リボンの[セットアップ]パネルから、[荷重]をクリックします。
- Fz の荷重として「-500」と入力します。(対称形の一方のみを使用しているため、荷重も元の半分しか必要ありません。)
- 最上部の穴の内側のサーフェスを選択します。
- [OK]をクリックします。
7. 接触を割り当てる
- リボンの[接触]パネルで、[自動]をクリックします。これにより、アセンブリ内にあるすべての表面接触ペアが自動的に識別されて割り当てられます。
- 既定の接触タイプは「接着」です。ただし、このアセンブリに関しては、多少の運動を認めることにします。接触タイプを変更するために、解析ツリーから[表面接触]を展開し、ツリー内の最初の接触を右クリックして、[編集]をクリックします。[表面接触]ダイアログで、接触タイプを[分離]に変更して、[OK]をクリックします。
- その他の接触にも同じ手順を実行します。
8. モデルのメッシュを生成する
- 解析ツリーの中で右クリックして、の順に選択します。
- [メッシュ設定]ダイアログで、[設定]をクリックします。
- [高度なメッシュ設定]ダイアログで、[最大要素成長率]を 1.1 に変更します。
- [中間節点の投影]のチェック ボックスにチェックを入れます。
- [中間節点の品質調整]を ON に設定します。
- [OK]をクリックして、[高度なメッシュ設定]ダイアログを閉じます。
- [メッシュを生成]をクリックします。
- [OK]をクリックして、[メッシュ設定]ダイアログを閉じます。
9. 解析を実行する
リボンから[実行]をクリックします。
10. 変位の結果を確認する
- ツリーの[結果]ブランチの下で、の順に右クリックします。
- 要素エッジを非表示にするには、の順に右クリックし、[プロット]ダイアログ ボックスで[表示オプション]タブをクリックして[要素エッジ]ボタンを左にスライドします。
- 変位のアニメーションを表示するには、再度[変位]を右クリックし、[アニメーション]にチェックを入れます。
11. 応力の結果を確認する
- ツリーの[結果]ブランチから、[フォン ミーゼス]を右クリックして、[表示]をクリックします。
12. 安全率の解析結果を確認する
- ツリーの[結果]ブランチから、[安全率]を右クリックして、[表示]をクリックします。
- 特定の場所の安全率の正確な値を知るために、リボンにある[プローブ]コマンドをクリックします。
- モデルにカーソルを重ねます。
まとめ
この演習では、自動接触割り当てを使用して接触をモデル化しました。また、対称性拘束を切断面に適用して、横方向(X)の剛体運動を削除しました。