プロジェクトには異なるソースからのさまざまなメディアが含まれることがよくあり、どのカラー管理を適用する必要があるかを把握することが難しくなることがあります。オートデスクのカラー管理コレクション内の変換は、最大限の柔軟性を提供するためのビルディング ブロックとして設計されています。このガイドで説明された概念を理解することで、これらのビルディング ブロックを組み合わせてカラー ワークフローの課題を解決することができます。これを念頭に置いて、高度なワークフローの例を紹介します。
大半が 35mm フィルムで撮影されているものの、さまざまな理由から一部の特定のショットでは異なるデジタル シネマ カメラが使用されているプロジェクトがあるとします。さらに、いくつかのレンダーされた 3D CG 要素とタイトル カードもあります。これらのイメージすべてを組み合わせて、映画館での映写用の DCDM と家庭のブルーレイ用の HD ビデオという複数の成果物を生成する必要があります。
作業カラー スペースを選択する
最初の手順は、その決定が既に行われていない限り、作業カラー スペースを決定することです。
- 3D 要素を合成する場合には特に、シーンリニア作業スペースを使用することが得策です。
- 成果物が(映写に P3 原色を使用する)デジタル シネマと(Rec.709 原色を使用する) HD であることを考慮すると、P3 原色を選択することが理にかなっています。これらの色域は Rec.709 よりも大きいため、DCDM は SMPTE リファレンス プロジェクタで使用できるすべてのカラーを使用できます。さらに、作業スペースをこの色域に制限することで、色域外のカラーが使用される可能性を減らすことができます。
- 多くの人が DCI キャリブレーション白色点は緑色が強いと感じ、D60 などの異なるクリエイティブ白色点での作業を好みます。
そのため、P3 原色と D60 白色点を使用するシーンリニア エンコーディングが作業スペースに適切な選択です。
入力を変換する
次に、この作業スペースへのすべての入力を変換する必要があります。
- 多くの場合、フィルム スキャンは ADX やその他の Cineon に似たエンコーディングを使用する DPX ファイルです。film/ フォルダのいずれかの変換を使用して、これらを読み込むときにシーンリニア ACES に変換することができます(追加の考慮事項については「スキャンしたフィルムのイメージのカラーを管理する」を参照してください)。primaries/ フォルダで使用できる変換を見ると、ACES から P3 原色に直接変換する方法はありません。ただし、2 つの手順を使用してこれを行うことができます。ACES_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_P3-D60 の順に適用することです。多くのショットを読み込むときに便利なように、変換のチェーン全体を単一の .ctf ファイルとして書き出すことができます。
- デジタル シネマ カメラはすべて異なる独自のエンコーディングを使用します。カメラの型、モデル、ライティング設定に応じて、camera/ フォルダの適切な変換を使用してイメージを ACES に変換します(「デジタル シネマ カメラ フッテージのカラーを管理する」を参照)。フィルム フッテージと同様に、その後 primaries/ フォルダの ACES_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_P3-D60 の順に適用してイメージを P3 原色に変換できます。
- レンダーされた 3D CG 要素は多くの場合既にシーンリニアですが、通常は sRGB 原色を使用しています(これは Rec.709 原色と同じです)。primaries/ フォルダの Rec-709-sRGB_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_P3-D60 の順に適用することで、これらのイメージを使用している作業スペースに変換できます(「レンダー 3D CG イメージのカラーを管理する」を参照)。
- タイトル カードが sRGB イメージであるとします。これをシーンリニアに変換するには、逆トーン マップを適用する必要があります。これを実行する方法の 1 つは、tone-map/ フォルダの inversePhotoMap_gamma_2.4 を適用し(「ビデオの映像をカラー管理する」を参照)、その後、primaries/ フォルダの Rec-709-sRGB_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_P3-D60 の順に使用して 3D 要素と同じ方法で原色を変換することです。ただし、ACES RRT トーン マップを出力に使用するため(詳細については後で説明します)、sRGB_to_ACES 変換、ACES_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_P3-D60 の順に使用します。この操作で、入力用の逆トーン マップと表示および出力用のトーン マップの一致する組み合わせにより、オリジナルの sRGB 値が変更されなくなります。
ビュー変換を設定する
次に、ビュー変換を設定してこれらのイメージを作業中に表示する必要があります。作業スペースはシーン参照のため、トーン マップを使用してイメージを出力参照値に変換する必要があります(当然、最終的な成果物と同じトーン マップを使用します)。この例の目的のために、ACES RRT を使用することを決定したとします。
RRT+ODT/ フォルダのいずれかの変換を使用して、まず ACES に変換する必要があります。primaries/ フォルダの P3-D60_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_ACES の順に使用することでこれを行うことができます。最後に、RRT+ODT/ フォルダの ACES_to_current-monitor を適用できます。色順応がこれらの変換に組み込まれていて、作業スペースの D60 白色点がモニタの白色点にマップされます。この変換のチェーンを単一の .ctf ファイルとして書き出し、ビュー変換として設定します。
また、DCI 白色点にキャリブレーションされたプロジェクタでプレビューする場合もあります。まず、上記のように primaries/ フォルダの P3-D60_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_ACES の順に使用して ACES に変換し、その後 RRT+ODT/ フォルダの ACES_to_P3-DCI を使用します。キャリブレーション ホワイトは DCI ですが、クリエイティブ ホワイトは D60 のため、色順応は必要なく、組み込まれていません(「白色点の変換」を参照)。
詳細については、「ディスプレイ用にイメージのカラーを管理する」を参照してください。
出力のカラーを管理する
最後に、成果物に対して適切な変換を適用する必要があります。表示用については、シーン参照から出力参照に変換するトーン マップを使用する必要があります。
前と同じように、primaries/ フォルダの P3-D60_to_CIE-XYZ、CIE-XYZ_to_ACES の順に使用して作業スペースから ACES に変換できます。その後で次の操作を実行します。
- DCDM の場合は、RRT+ODT/ フォルダの ACES_to_DCI-60 を適用します。
- HD ビデオの場合は、同じフォルダの ACES_to_HD-video を適用します。
詳細については、「出力用のイメージのカラーを管理する」を参照してください。