マルチレンダー パス

概要

マルチレンダー パスは、レンダー レイヤの使用頻度を減らす効果があるため、シーンのトランスレーションやレンダリングにかかる計算が短縮されます。複数レイヤの複雑な構成で作業する場合、レンダリングが何倍にも高速化することもあります。

マルチレンダー パスを使用することで、無数のレンダー パスをレンダーし、レンダー パス セットとしてグループ化できます。

また上級ユーザであれば、シーン内のオブジェクトやライトのサブセットを選択して、それぞれのレンダー パスの成分にすることもできます。このサブセットはレンダー パス成分マップと呼ばれます。レンダー パス成分マップによって、レンダー時にシーンを分割することもできます。

注:

マルチレンダー パス機能は mental ray レンダラでサポートされています。レンダリング API により、その他サード パーティ製レンダラやカスタム レンダラのサポートも可能になります。

現時点でマルチ レンダー パスのワークフローをサポートしているシェーダは次のとおりです。

注:

標準のサーフェス マテリアルは、使用可能なレンダー パスに記載されるすべてのレンダー パスをサポートしますが、ボリューム シェーダ、ヘア、ファー シェーダなどの適用可能なパスのサブセットに対してのみ作用する非標準シェーダもあります。

シーンにマルチレンダー パスの使用を設定する

マルチレンダー パスを設定するには、次の操作を行います。

パス成分マップのレンダー

レンダー パス成分マップは、シーン内のライトとレンダリング可能なオブジェクトのサブセットを、1 つまたは複数のレンダー パスに接続します。

たとえば、レンダー レイヤが 5 個のオブジェクトと 2 個のライトで構成されている場合、この中の 3 個のオブジェクトと 1 個のライトにのみ、拡散パス、アンビエント パス、そしてスペキュラ パスを作成することができます。

各レンダー レイヤに複数のパス成分マップを作成することも、パス成分マップを 2 つ以上のレイヤ間で共有することもできます。

指定したレンダー レイヤをレンダリングする場合は、そのレイヤにリンクされたパス成分マップのみが適用されます。パス成分マップを介して接続されたオブジェクトがないレンダー パスは、自動的にすべてのオブジェクトに関連付けられます。

注:

パスの要素(パス成分マップ、パス、パス セット、レンダー レイヤ)は任意の順序で作成できます。

レンダー パス セット(Render Pass Sets)

各レンダー レイヤに関連付けられたパスが多数ある場合、そのレンダー パスをレンダー パス セットと呼ばれる論理グループにグループ化できます。たとえば、反射(Reflection)シャドウ(Shadow)スペキュラ(Specular)のパスをイルミネーション レンダー パス セットにグループ化できます。

レンダー パス セットを作成するには、レンダー設定(Render Settings):パス(Passes)タブにある新規レンダー パス セットを作成します(Create new render pass set) ボタンをクリックします。または、レンダー パスを作成すると同時に、レンダー パス セットを作成することもできます。新規レンダー パスを作成します(Create new render pass) ボタンをクリックしてレンダー パスの作成(Create Render Passes)ウィンドウを開き、パス セットの作成(Create Pass Set)オプションを有効にします。パス(Passes)タブの詳細については、レンダー パスの作成(Create Render Passes)ウィンドウを参照してください。

シーンでレンダー パス セットを使用するには、レンダー パス セットをレンダー レイヤに組み込むワークフローのサンプルが用意されています。

レンダー パス セットと <RenderPassFileGroup> を混同しないようにしてください。これはレンダー出力のファイル名を構築するためのトークンです。レンダー パスのアトリビュート エディタ(Attribute Editor)には、パス グループ名(Pass Group Name)というアトリビュートがあります。レンダー出力のファイル名を構築するときに、このフィールド内のテキストが <RenderPassFileGroup> トークンに反映されます。これによって、さまざまなパスを 1 つのファイルにグループ化する方法を管理できます。たとえば、ファイル名 プリフィックス(File name prefix)が <RenderLayer>_<Camera>_<RenderPassFileGroup>.exr である場合、同じレイヤ、カメラ、レンダー パス ファイル グループを含むすべてのイメージが同じ .exr ファイルにグループ化されます。詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。

使用可能なレンダー パス

次のレンダー パスから選択します。

注:

各レンダー パスのアルファ チャネルは有効範囲のマスクであり、透明度は表現しません。

レンダー パス 修正される問題
2D モーション ベクトル(2D Motion Vector) シーン内のオブジェクトの相対モーション(ラスタ座標で)、すなわち各ピクセルが 2 フレーム間で移動する距離。ベクトルは正規化されたピクセルで表現されます。
注:

カメラ移動を含むシーン、および mental ray for Mayaのレンダリングのためにレイ トレーシングをレンダリング モードに設定してモーション ベクター レンダー パスを使用する場合、次の文字列のオプションを有効にして正しいモーション ベクトルを取得する必要があります。

trace camera motion vectors

オン(On)

ブーリアン(boolean)

3D モーション ベクトル(3D Motion Vector) ワールド空間の 3D モーション ベクトル。mental ray for Maya では、3D モーション ベクトルは内部空間で表現されます。
アンビエント(Ambient) サーフェスのアンビエント成分。Maya では、マテリアル カラーとアンビエント ライトのカラーの乗算です。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
アンビエント放射(Ambient Irradiance) サーフェスが受け取るアンビエント カラーの量。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
アンビエント オクルージョン(Ambient Occlusion) セルフ アンビエント オクルージョンと、周囲のオブジェクトから取得する一次アンビエント オクルージョンの両方からのアンビエント オクルージョン成分です。このレンダー パスを使用するには、レンダー設定(Render Settings)機能(Features)タブでアンビエント オクルージョン(Ambient Occlusion)を有効にする必要があります。
アンビエント マテリアル カラー(Ambient Material Color) マテリアルのアンビエント ライトに対する反射率。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
ビューティ(Beauty) mental ray for Maya が計算する最終カラー。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
反射と屈折のないビューティ(Beauty Without Reflections or Refractions) 反射と屈折のないビューティ パスです。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。このパスと、反射パスや屈折パスを別々に作成して、結果を合成する場合があります。これによって、反射/屈折の色合いと強度を、他のパスとは別に調整できます。
カメラ深度(Camera Depth) / リマップしたカメラ深度(Camera Depth Remapped) カメラと交差点の距離を抽出します。正規化した距離と実際のシーン距離のどちらかを選択します。このパスのアトリビュートの詳細については、カメラ深度(Camera Depth)レンダー パス アトリビュートを参照してください。
有効範囲(Coverage) mental ray の有効範囲フレーム バッファ。このフレーム バッファは、シルエットのみの有効範囲です。セルフ有効範囲は現在サポートしていません。
カスタム カラー(Custom Color) / カスタム深度(Custom Depth) / カスタム ラベル(Custom Label) / カスタム ベクトル(Custom Vector) writeToColorBufferwriteToDepthBufferwriteToVectorBufferwriteToLabelBuffer シェーダと併用して、データをフレーム バッファに書き込みます。または、カスタム シェーダを使用している場合は、独自のカスタム パスを作成します。詳細については、mental ray レンダー パスのユーティリティ シェーダを参照してください。
拡散(Diffuse) マテリアルの拡散シェーディングこのパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シャドウのない拡散(Diffuse Without Shadows) シャドウ情報なしでパスを拡散(Diffuse)します。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
拡散マテリアル カラー(Diffuse Material Color) ライト成分を除いた、一定の拡散カラーまたはテクスチャ拡散カラーを提供します。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
直接放射(Direct Irradiance) 各サンプル位置に到達する直接光線。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シャドウのない直接放射(Direct Irradiance Without Shadows) シャドウ情報のない直接放射。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
グロー ソース(Glow Source) サーフェス シェーダの outGlow 出力で、パス成分マップの作用を受けます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
白熱光(Incandescence) 加算カラー。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
入射(ライト/法線) (Incidence (Light/Normal)) 光線とサーフェス法線が向いている方向の相違を測定します。サーフェス法線が光源を向いている場合、この値は 1 です。法線とライトが反対方向を向いている場合、値は 0 です。パス成分マップを作成して、選択した光線を分離します。シーン内にパス成分マップがない場合は、シーン内のすべてのライトの合計を基にして計算されます。
間接(Indirect) ファイナル ギャザー、グローバル イルミネーション、コースティクスからの間接ライティング。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
ライト ボリューム(Light Volume) ライト中心のボリューム エフェクト、たとえば、ライト円錐のボリューム エフェクトなどを抽出します。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
マテリアルの入射(カメラ/法線) (Material Incidence (Camera/Normal)) カメラ レイとサーフェス法線が向いている方向の相違を測定します。サーフェス法線がカメラの方向を向いている場合、この値は 0 です。法線とカメラが反対方向を向いている場合、値は 1 です。90°より大きい角度も 1 になります。シェーディング ネットワークにバンプ マッピングを適用すると、このパスに表示されます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
マテリアルの法線(カメラ空間) (Material Normal (Camera Space))、マテリアルの法線(オブジェクト空間) (Material Normal (Object Space))、マテリアルの法線(ワールド空間) (Material Normal (World Space)) 補間されたサーフェス法線で、カメラ空間(Camera space)、オブジェクト空間(Object space)ワールド空間(World space)のいずれかを選択します。シェーディング ネットワークにバンプ マッピングを適用すると、このパスに表示されます。
マット(Matte) 透明度/不透明度を除外した、オブジェクトのマット。このパスはレンダー レイヤの合成マスクとして使用されます。オブジェクトが交差する領域を真っ白にする必要があります。透明度/半透明性には依存しません。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
正規化した 2D モーション ベクトル(Normalized 2D Motion Vector) シーン内のオブジェクトの相対モーション(ラスタ座標で)、すなわち各ピクセルが 2 フレーム間を移動する距離。ピクセル ディスプレイスメントは(0-1)に正規化されます。スタティック オブジェクトは、0.5,0.5 の値で表されます。このパスのアトリビュートの詳細については、正規化した 2D モーション ベクトル(Normalized 2D Motion Vector)レンダー パス アトリビュートを参照してください。
オブジェクトの入射(カメラ/法線) (Object Incidence (Camera/Normal)) マテリアルの入射(カメラ/法線) (Material Incidence (Camera/Normal))に似ていますが、バンプ マッピングはサポートしていません。
オブジェクトの法線(カメラ空間) (Object Normal (Camera Space))、オブジェクトの法線(オブジェクト空間) (Object Normal (Object Space))、オブジェクトの法線(ワールド空間) (Object Normal (World Space)) マテリアルの法線(Material Normal) (カメラ空間 / オブジェクト空間 / ワールド空間) (Camera Space / Object Space / World Space)に似ていますが、バンプ マッピングはサポートしていません。
オブジェクト ボリューム(Object Volume) ガラスのオブジェクトに入っている煙など、オブジェクト中心のすべてのボリューム エフェクトを抽出します。これにはボリューム パーティクル、ボリューム ファー、流体も含まれます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
不透明度(Opacity) オブジェクトの不透明度で、透明度/屈折から導き出されます。合成では、オブジェクトの不透明度はレンダー レイヤ マットとは別に、独自にコントロールできます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
未処理シャドウ(Raw Shadow) シャドウ(Shadow)パスと似ていますが、シーン内の放射に対してのみ計算されます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
反射(Reflection) 反射の結果です。セルフ反射、一次反射、二次反射、環境反射があります。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
反射マテリアル カラー(Reflected Material Color) マテリアルの反射カラー パラメータ。純粋な一定の反射カラーまたはテクスチャ反射です。反射マットとして使用して、反射が現れる場所を定義します(カラー付きとカラーなし)。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
屈折(Refraction) 屈折の結果です。セルフ屈折、一次屈折、環境屈折があります。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
屈折マテリアル カラー(Refraction Material Color) マテリアルの透明度カラー パラメータ。純粋な一定の屈折カラーまたはテクスチャ屈折です。屈折/透明度マットとして使用して、屈折が現れる場所を定義します(カラー付きとカラーなし)。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
分散(Scatter) マテリアルの分散アトリビュート(たとえば分散半径(Scatter Radius)分散カラー(Scatter Color))の結果として得られる分散エフェクトです。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シーン ボリューム(Scene Volume) フォグ、層状のフォグ、かすみなど、シーン中心のすべてのボリューム エフェクトを抽出します。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シャドウ(Shadow) セルフ シャドウと直接シャドウへの純粋なシャドウ成分です。シャドウ パスは輝度またはカラー付きシャドウです。マテリアル成分が考慮されます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
スペキュラ(Specular) スペキュラ シェーディング。スペキュラ コンポーネントの調整方法は、オブジェクトに関連付けられているマテリアルのタイプによって異なります。たとえば、Phong、PhongE、Blinn、異方性マテリアルでは、異なるスペキュラ効果が生成されます。Phong マテリアルでは、スペキュラ パスは余弦の累乗とスペキュラ カラーを使用して調整することができます。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シャドウのないスペキュラ(Specular Without Shadows) スペキュラ(Specular)に似ていますが、シャドウ オクルージョンはありません。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
半透明(Translucence) 正面サーフェスに現れる背面のシェーディング成分です。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
シャドウのない半透明(Translucence Without Shadows) 半透明(Translucence)に似ていますが、シャドウはありません。このパスのアトリビュートの詳細については、レンダー パスのアトリビュート エディタを参照してください。
UVPass
UV パスによって UV 値が R/G 値に変換され、ラスタライザ バージョンの UV 空間が作成されます。UV パスを使用することで、新たに配置されたテクスチャのトラッキングを行うことなく、3D レンダリング内のテクスチャをポスト プロセスとして置換することができます。
注: このパスをレンダリングする場合は、openEXR ファイル フォーマットで保存する必要があります。
ワールド位置(World Position)
ワールド位置パスによって、位置の値(x,y,z)がR,G,B値に変換されます。このパスを使用して、合成でのワークフローの再ライティングを行います。
注: このパスをレンダリングする場合は、openEXR ファイル フォーマットで保存する必要があります。