iray レンダラー

NVIDIA® iray® レンダラーは、ライトのパスをトレースすることによって、物理的に正確なレンダリングを作成します。他のレンダラーと比較して設定が少なくて済みます。

iray レンダラーは、時間ベースのアプローチを重要視して開発されています。レンダリング時間の長さや計算する反復回数を指定できます。または、時間を決めずに単純にレンダリングを起動し、結果の外観に満足したら停止することもできます。

iray レンダラーは要素の個別レンダリングをサポートします。「iray レンダリング要素」を参照してください。

モデルの断面のレンダリングを作成するために断面平面を使用することもできます。

iray レンダラーの初期の反復回数では、他のレンダラーよりも粗い、ざらついた結果が生成されます。レンダリング パスが多くなると、粒子の粗さは目立たなくなります。iray レンダラーは、光沢反射を含む反射のレンダリングに特に適しています。また、自己照明オブジェクトや他のレンダラーでは高い精度でレンダリングできないシェイプのレンダリングにも適しています。

iray レンダラーでレンダリングしたシーン。既定値の 1 分間を使用

レンダリング時間をさらに長くした後の同じシーン

レンダリング時間を延長した後の同じシーン

CUDA 対応の GPU (Graphics Processing Unit)グラフィック カードは、iray レンダラーのパフォーマンスを向上します(CUDA は Compute Unified Device Architecture の略です)。ただし、結果はハードウェア ビューポート シェーディングと同じではありません。iray レンダラーで実行される計算は物理的に正しく、ハードウェアを使用する iray レンダリングの結果は、CPU (Central Processing Unit)のみを使用してレンダリングしたときと同じ結果になります。

GPU 使用量のおおよその目安は、1 GB のメモリで 500 万 ~ 1 千万個のジオメトリの三角形を保存できる程度だと考えてください。テクスチャ(通常は面の三角形で共有される)も同時に GPU メモリに収まると、レンダリングのパフォーマンスも向上します。

iray レンダラーなどのレイトレース レンダラーのパフォーマンスは、シーンのジオメトリの複雑さには比較的影響を受けません。ライトのパスの複雑さのほうがより重要です。迷宮のキャンドルや窓の隙間から分散する光線で高品質のレンダリングを生成するには、広い範囲のスカイライトや飾り窓から入ってくる光によって照明されたシーンのレンダリングよりも長い時間がかかります。また、他のレンダラーと同様に、パフォーマンスは、レンダリングされるイメージの解像度に比例します。シーンのマテリアルの複雑さもパフォーマンスに影響を与えます。マテリアルのテクスチャ、ブレンド、ノイズが多くなると、結果を計算する時間も長くなります。

3ds Max によって提供される iray のバージョンは iray v2.1 です。このバージョンは[拡散反射光シェーディングにバンプを適用しない](Do Not Apply Bumps To The Diffuse Shading)の切り替え、ラウンド コーナー効果や、より多くの手続き型マップがサポートされるようになりました。また、Sky ポータル、光沢屈折、トランスルーセント、IOR(屈折指数)が改善され、より大きな出力解像度を処理できるようになりました。iray 2.1 レンダラーは Sky ポータルのオブジェクトを完全にサポートします。 これらのオブジェクトはレンダリング品質を向上させることができますが、場合によってはレンダリングが遅くなることがあります。 Sky ポータルを使用するかどうかを判断する際は、次のガイドラインが役立ちます。

iray レンダラーがサポートするマテリアルとマップ

iray レンダラーは特定のマテリアル、マップ、シェーダ タイプのみをサポートします。特に、mental ray レンダラーとは違い、プログラミング可能なシェーダをサポートしていません。シーンにサポートされていないマテリアルやマップがある場合は、iray はこれをグレーでレンダリングし、レンダリング メッセージ ウィンドウにエラーを報告します。

一般に、iray レンダラーは、物理ベースの光線のトレースに関連するマテリアルおよびマップまたはシェーダ機能のみをサポートしています。たとえば、アンビエント オクルージョン、ラウンドコーナー、ファイナル ギャザーに関連する Arch & Design マテリアルの設定は、iray レンダラーでは単純に無視されます。

サポートされているマテリアル

iray レンダラーは、主に次の汎用の mental ray マテリアルをサポートしています。

マテリアルの種類 制限事項
Arch & Design マテリアル

iray レンダラーでは、[メイン マテリアル パラメータ](Main Material Parameters) [反射](Reflection)の設定の[光沢サンプル](Glossy Samples)、[高速 (補間)](Fast (Interpolate))、[ハイライト + FG のみ](Highlights+FG Only)は無視されます。また、[メイン マテリアル パラメータ](Main Material Parameters) [屈折](Refraction)の設定の[光沢サンプル](Glossy Samples)と[高速 (補間)](Fast (Interpolate))も無視されます。

[高速光沢補間](Fast Glossy Interpolation)ロールアウトの設定は無視されます。

[拡張レンダリング オプション](Advanced Rendering Options)ロールアウトの設定の大部分は無視されます。例外は、[屈折](Refraction) [最大距離](Max Distance)および[最大距離のカラー](At Max Distance)と、[拡張透明度オプション](Advanced Transparency Options) [ガラス/トランスルーセント オブジェクトを以下のものとして扱う](Glass/Translucency Treat Objects As)および[背面非表示](Back Face Culling)です。

[mental ray コネクション](mental ray Connection)ロールアウトで指定されたシェーダは無視されます。

Autodesk マテリアル

例外: Autodesk Metallic Paint (メタリック ペイント)はサポートされていません。

注: Autodesk Material の反射は、特につや消し仕上げのマテリアルでは、iray レンダラー以外のレンダラーでレンダリングした場合とは異なって見えることがあります。
次の Autodesk Material には、[Finish Bumps]の設定があります。iray レンダラーは、[Finish Bumps]を[レリーフ (バンプ)](Relief (bump))マップと同じように処理し、バンプを拡散反射光コンポーネントとその他のコンポーネントに適用します。
ブレンド マテリアル  
両面マテリアル  
マルチ サブオブジェクト マテリアル  

サポートされているマップとシェーダ

iray レンダラーは、次のマップとシェーダをサポートしています。

マップまたはシェーダのタイプ 制限事項
ビットマップ

ビットマップの[座標](Coordinates)ロールアウトで、座標のタイプを[テクスチャ](Texture)に設定する必要があります。iray レンダラーでは、[明示的マップ チャネル](Explicit Map Channel)、[オブジェクト XYZ からの平面](Planar From Object XYZ)、[ワールド XYZ からの平面](Planar From World XYZ)のマッピングがサポートされています。[マップ チャネル](Map Channel)の値は、1 ~ 4 の範囲で設定する必要があります。iray レンダラーでは、[ブラー/ブラー オフセット](Blur / Blur Offset)の設定は無視されます。

[ビットマップ パラメータ](Bitmap Parameters)ロールアウトの[フィルタリング](Filtering)、[モノクロ チャネル出力](Mono Channel Output)、[RGB チャネル出力](RGB Channel Output)、[アルファ ソース](Alpha Source)の設定は無視されます。

チェック マップ  
カラー補正マップ  
へこみマップ

レンダリングの動作は、スキャンラインまたは mental ray レンダラーの場合と多少異なります。

フォールオフ マップ  
グラデーション マップ  
グラデーション ランプ マップ  
大理石マップ

レンダリングの動作は、スキャンラインまたは mental ray レンダラーの場合と多少異なります。

ミックス マップ  
ノイズ マップ

iray レンダラーでは、すべての種類のマップで[ノイズ](Noise)ロールアウトの設定は無視されます。

法線バンプ マップ  
出力マップ

出力マップそのものはサポートされていません。

さまざまな種類のマップの[出力](Output)ロールアウトでは、[出力量](Output Amount)、[RGB オフセット](RGB Offset)、[RGB レベル](RGB Level)、[バンプ量](Bump Amount)の設定のみがサポートされています。

パーリン大理石マップ

彩度の値はサポートされず、カラー グラデーションはレンダリングされません。

RGB 乗算マップ  
しみマップ  
Substance マップ  
タイル マップ  
木目マップ

レンダリングの動作は、スキャンラインまたは mental ray レンダラーの場合と多少異なります。

環境バックグラウンド切り替え  
ケルビン色温度シェーダ:  
mr Physical Sky  
海洋シェーダ(Ocean shader)

すべてのパラメータ設定が認識されるわけではありません。

注: 3ds Max 2015 では、iray レンダラーは[波](Waves)マップをサポートしません。

その他の機能と制限事項

iray レンダラーには、その他に次の機能と制限事項があります。

機能 機能と制限事項
ジオメトリ

iray レンダラーでは、mr プロキシ オブジェクトを含むすべてのレンダリング可能なジオメトリをレンダリングできます。ディスプレイスメント マッピングがサポートされています。カメラベース(マルチパス)の被写界深度もサポートされています。事実上、被写界深度効果でレンダリング時間が長くなることはありません。

ジオメトリには、必ず影が付いています。

ライト ライトはフォトメトリックでなくてはなりません。たとえば、mr Sky Portalmr Sunmr Sky はフォトメトリック ライトです。

iray レンダラーでは、ライトのシャドウの設定はすべて無視されます。iray レンダラーによって生成されるシャドウは、常に物理ベースです。ライトでは常にシャドウが投影され、シャドウはレイトレースされます。

また、mr ライトでは、[間接光](Indirect Illumination)の設定は無視されます。mr Sun では、[フォトン](Photon)の設定と[空気遠近法](Aerial Perspective)は無視されます。[スカイ モデル](Sky Model)は、[霞ドリブン](Haze-Driven)でなければなりません。

[露出コントロール](Exposure Control) [mr フォトグラフィック露出制御](mr Photographic Exposure Control)でなければなりません。
レンダリング効果 iray レンダラーは、G-バッファ データを生成しないので、環境効果を含むレンダリング効果を使用できません。
テクスチャ レンダリング サポートされていません。3ds Max は、この効果に対する警告を表示します。
マテリアル エディタ サンプル スロットのレンダリングに iray レンダラーを選択すると、サンプル スロットのバックグラウンドはレンダリングされません。
ヒント: サンプル スロットに iray レンダラーを使用すると、パフォーマンスが低下する可能性があります。通常は、サンプル スロットには mental ray レンダラーを選択することをお勧めします。
パノラマ書き出し サポートされていません。
ビデオ ポスト サポートされていません。
照明分析 サポートされていません。
[オブジェクト プロパティ](Object Properties)の設定 これらの設定は iray レンダラーでは無視されますが、[レンダリング可能](Renderable)および[可視性](Visibility)のプロパティは 3ds Max によってレンダラーに伝えられるため、これらの設定は正しく動作します。
バッチ レンダリング サポートされています。
コマンドライン レンダリング サポートされています。
Backburner サポートされています。

iray レンダラーと自己照明

iray レンダラーは、自己照明マテリアルの処理に適しています。実際に、ライトなしで自己照明マテリアルのみでシーンをレンダリングできます。

ヒント: 自己照明マテリアルだけを使用してシーンをレンダリングするには、シーンに 1 つのライト オブジェクトを追加し、その後ライトをオフにします。(シーンにライト オブジェクトが存在しない場合、3ds Max は既定値のライトをビューポートのシェーディングとレンダリングのために追加します)。

iray レンダリングの場合、自己照明マテリアルはシャドウ、ホットスポット、周囲光を投影できます。

ルミネア オブジェクト、自己照明、および iray レンダラー

多くの場合、屋内シーン(および多数のアーキテクチュラル屋外シーン)では、3ds Max のライト オブジェクトと照明器具そのものをモデル化するライトと固定具のジオメトリを組み合わせて使用します。ルミネア ヘルパー オブジェクトが良い例です。自己照明マテリアルを照明器具の電球または電灯に割り当てるか、または電球を覆う光透過性のサーフェスに割り当てます。

他のレンダラーでは、自己照明サーフェスは光っているように見えるだけで、実際に光を投射するのはライト オブジェクトです。しかし、iray レンダラーは自己照明を実際の照明として使用するため、自己照明マテリアルはライト オブジェクトと共に光を生成し、「2 重照明」の効果が得られます。自己照明の領域が広いほど、効果が顕著になります。

この効果は、iray レンダラーなどのライト トレーシング レンダラーがレイのタイプを区別しないために生じます。ライト レイ、反射レイ、およびシャドウ レイはすべて同じ方法で処理されます。